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狸なおじさんと霊的な事情  作者: BANG☆
閑話 その6
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閑話 拳が語るもの、拳に語らせるもの 後編

「拳王様が唯一の希望なんです!こうなったら実力で!」


 下っ端Aはオレを掴んでた手を離し、振り向きざまに不動明王(無能)に殴りかかる。そしてそこにいたのは部下たちから一斉にタコ殴りにされる不動明王(悲)の姿が。


 なんだ、みんなやればできるじゃんか・・・悪ジョーシ退散?


 お荷物(不動明王(無能))を縛り上げオレの元に集まった怨調のみんなに改めて指示を出そうか。


「じゃ、も一回確認させてくれ。霊探知できるのは・・・無し。気配感知できるのは・・・一人か。

 じゃあ気配感知できる奴とオレで中に入るから他の連中は北からゴボウセイの配置で護摩壇を設営して加持祈祷ってぇの?あれをやって。それを俺たちが出て来るまで続けてくれる?」


「出てこなかったらどうしますか?」


「1時間をめどに出てこなかったら失敗したものと思ってテッシューして」


「探しに行かなくていいんですか?」


「二次遭難って奴になりかねないからそれはいらない。それよかオレの本部喫茶シリウスに連絡を取って“番頭”を呼んできて。その後は“番頭”の指示に従っていけば無駄な死人とかは出ない筈だからヨロシク・・・安全第一だから(ボソッ)」


 いつものおっちゃんの手順だとこれからチューイジコーの確認をして装備の点検をしてっと、よしこんなもんだな・・・おっちゃん、あ、あ、愛してるぜ!


 流石に護摩壇の組み上げは本職だからすぐできるね。前に中継で見てた『クトゥルフの猫』に出てた野良の連中とは手際が違うよな。・・・オレだっていいとこ見つけたら褒めるんだよ。


 護摩壇に火が入り念仏を唱える声が五か所から上がるとオレは首に掛けていた梵字って奴が書かれた魔除けを同行してくれる下っ端Aに掛けてあげる。接近戦しかできないオレにヘイトが集中して下っ端Aに危険が及びにくくするんだ。


「オレたちウンメイキョードータイだからさ、オレがダメになってもアンタだけは無事に帰してやっからがんばろうぜ・・・やられるつもりねぇけどな(ボソッ)」


「流石は番頭さんのパートナーのお一人だ。俺みたいなもんの事まで気に掛けてくれるなんて・・・姉貴、これから足手まといになるかも知れませんが側に付かせて頂きます!

 申し遅れました、自分は今は『常木』って名乗ってますけど去年までは“同盟”にいて『根津』って名乗ってました。

 お稲荷様からこの業界には戻って来るなって言われてたんですけど嫁と娘を食わせる為に名前を変えて怨調に入ってました」


 こんなトコでおっちゃんの知り合いと出会いなんてな・・・おっちゃん、あっちこっちふらふらしてるから妙な知り合いが多くてよ・・・ん?


「もしかしてうさぴょん知ってる?中学生みたいだけどオッパイドンドンのおばさん・・・やべ、バレたら殺されそ(ボソッ)」


「・・・“同盟の裏番”をご存知で?・・・直属の上司でしたが何か?」


「・・・今シリウスに来てるよ・・・世間ってせめぇなぁ(ボソッ)」


 根津っち(下っ端A)の顔がビクビクッと引き攣る。口じゃ絶対(ゼッテー)勝てないよな、おっちゃん以外は。


「さ、行こうか・・・余計な事言わない内に(ボソッ)」


 そそくさと準備をして屋敷へ潜入する。根津っちの見立てじゃ霊の気配は後10コだってさ。


 霊って奴は生きていた時の特徴が残っている事が多いんだ。弱い方にしか行かないヤツ、死角からしか仕掛けないヤツ、じっと籠って居なくなるのを待っているヤツ。ここじゃ魔除けの無いオレが唯一無二のターゲットって訳で一斉に集まって来るぜ。悪霊ホイホイってか?


 指抜きグローブにクー姉特製の札を貼り部外者の根津っちに聞こえないように口の中で呪文を唱え(クー姉のお札だけに効くモンガイフシュツの呪文だからな他とのサベツカだっておっちゃんが言ってたぜ)霊力マシマシの拳を自分で感じられる気配の方向に振りぬく。


「今、四つ目が成仏しました。流石だこりゃ除霊じゃなくて浄霊ですよ!右手の方に5つ固まってます、もしかしてホンボシかもしれません!」


 根津っち・・・声でかくね?声に反応するわけじゃねぇけどさ、霊って興奮すると見つけられっだろ?とにかく右の方にある奥座敷みたいなとこ目指して歩いて行こ。


「あぁ、この奥で間違いないです。ビンビン感じます負の波動が!」


 オレみたいに手の届く範囲でしか霊の存在を感知できないヤツだってこのふすまの向こうの気配はヤバいと思うよ。戊級のボスみたいだな、この怨調だったら全滅して終わりだな。


 オレはそろそろ効果が切れる金剛符を貼ったグローブを外し新しいグローブに替え未使用(サラ)の金剛符を貼って呪文を唱える。


「最後だぜ。ここで待ってるかい?・・・ここの方が安全だぞ(ボソッ)」


「足手まといは承知ですが最後までお付き合いさせてください。シリウスの本気を目に焼き付けたいんで」


 クトゥルフの猫ん時はおっちゃんは司会やってて戦ってなかったからな。じゃあその代わりと言っちゃなんだけどオレの雄姿(笑)を見せてやるか。


 オレはフッと微笑むと襖を開け放ちさっきまで嵌めていたグローブを気配のする方向へ続けざまに投げ込む。使用済みの金剛符には力の残りかすみたいなのが残ってて当たれば結構なダメージを付けられるって事をオレは経験上知っている。これで5体同時に相手にするとか罰ゲームみたいな事はしなくていい筈だ。おっちゃんの言う無理無駄無茶はみっともないってヤツさ。ロマンは無くても間違いが無いってね。


 更に部屋に踏み込むとすぐに左の足元に向かって拳を突き出す。下から来るのが身動き取れ失くしてくる事が経験上あったからな。うん、手ごたえはあった。次右上!


 見えない相手とわずかな気配と根津っちの指示だけを頼りに戦う事30分、取り巻きたちに勝って残りの大ボスと対面する。そろそろ1時間か。


 目の前には戦国武将みたいに鎧兜に身を固めた骸骨が身構えて()()。取り巻きと重なるように投げた使用済み金剛符付きのグローブがそこら辺に散らばりてられた衝撃で砕け散った骨たちが鎧の破片が元々の凄さを感じさせてくれるけど今はただのゴミの山だ。


 仕上げに根津っちに九字を切って貰い念仏を唱えて貰うと、成仏したらしくてそこには風化して小さな山になった土があるだけだったよ。


「封印に来て除霊する羽目になるなんてソーテーガイだったけどいい経験になったんじゃない?・・・怨調は辞めた方がいいよ(ボソッ)」


 苦笑いをしながら魔除けを外す根津っちにウィンクしてると何か外から騒々しい音が聞こえてきた。


「・・・入る時霊は10コって言ってたよね・・・9コしか記憶にないんだけど(ボソッ)」


「まさか、逃げられた?

 うわぁ!」


 部屋の入口に立っていた根津っちを突き飛ばして入ってきたのは不動明王(糞)だった。でもさっきと感じが違うな・・・おどろどろしいっていうかバケモノ染みてるって言うか・・・


《と、殿ぉぉぉ!殿は何処!何処におわしますかぁぁぁ!》


 経験上余計な事が起きたって解ったぜ。不動明王(屑)の野郎、悪霊に身体乗っ取られやがったな?


 ヤツの鳩尾みぞおちを打ち抜いて一気に意識を刈ると根津っちから受け取ってた魔除けを不動明王(恥)の体に巻き付けて悪霊が外に出ないようにすると根津っちを叩き起こしてゴミ(不動明王(全否定))を外に運び出す。


 後は全救連の事務所にゴミを担ぎ込んで一件落着。霊能者が霊に操られるなんて不祥事を表に出せない16強がオレに平謝りしてなかったはずの報酬まで出してお開きさ。


 後で聞いた話だと不動明王(恥)は平の戦闘員に格下げに常木こと根津っちは部隊長に昇格したらしいけど退職したってさ。目の前で履歴書開きながらオレに説明する本人が言ってるんだからホントの事だろ?


 いやいや嫁さんと娘がいるのにウチに住み込みとか無理だろ?ここじゃ毎晩悶々としてるのがゴロゴロしてるんだから刺激しちゃダメなんだからさ・・・ウーちゃんに家族3人でほこらを借りた?


 ここはおっちゃんにゲタを預けちまおう・・・任せたからどうにかして。

ここまでが再投稿です


明日からまた駄文にお付き合いいただけますと幸いです

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