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狸なおじさんと霊的な事情  作者: BANG☆
閑話 その6
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閑話 拳が語るもの、拳に語らせるもの 前編

これも再投稿です


見なくても大丈夫ですから

 右に左に体を入れ替え拳を突き出す、ある時は激しくまたある時は柔らかく。


 オレの周りでは怨調こと16強の一つ全日本怨霊調伏委員会の霊能者たちが頭を抱えて逃げ惑っている。ったく16強だ何だって偉そうな口叩いていた癖して自分たちで下手打って逃げ出してりゃ世話ねぇや。おっちゃんだったら逃げる暇がねぇぐらいに指示を出してくれてあっという間に収まっちまうのによう・・・


 仕方がねぇからオレが金剛符を貼った拳でちまちま叩いて連中が立て直す時間を稼いであげてんだけどさ、指揮する奴が一番に逃げちまったもんだからどうにもなりゃしない。


 仕方なく悪霊の巣から一時撤退する為に逃げ損ねている奴の尻を蹴とばしながらようやく外に出てみると、偉そうに指揮官殿が入り口の前で仁王立ちしてやんの。さっきギャアギャア言いながら部下をほっぽって出て行ったのはアンタだったよな。


「なんだシリウスの“拳王”てのは口先だけだったのかよ。途中で逃げ出してくるとはな」


「オレより先に入った筈のヤツが外で待っていて文句を言うのが16強って奴のジョーシキって奴なのかい・・・イッパツ入れてもいいよな(ボソッ)」


 指揮官こと怨調の“不動明王(笑)”がオレの剣幕に一歩後ずさる。自分のそれに気付いて無理矢理前に出てオレを見下ろす。寝転ばねぇ限りちびのオレを見上げるのは不可能だけどさ。それにしてもさ不動ってのは嘘だろ?チョロチョロ動き回って落ち着き無いじゃん、良く見りゃ足ブルってるしさ。


 逃げてるのは部下たちみんなが見てるし今更カッコつけても無駄と思うけど、まだ権威があると思いたいんだろうな。


「ぼ、暴力じゃ何も解決しないんだぞ!なんかしたらお前んトコの事務所に全部報告してやるからな!」


「やりゃあいいじゃねぇか・・・オレも報告するさ、怨調なんかと組むのは碌なこっちゃねぇってな(ボソッ)」


 別にオレたちは、16強の仕事のおこぼれを貰わなくったってちゃんとやっていけるんだ。困るのは怨調たち16強の方じゃねぇのか?実力が注文に追い付いてねぇんだもん。途中で逃げ出した不動明王(笑)程度が実働部隊を指揮しているようじゃ初級でもしくじらないかって心配してやんなきゃならないだろ?


「くっ、お前があの封印を「自分がやった事をオレになすり付けようってのは中々の度胸だよな・・・せっかく封印してあるのを外しやがって、このクソが(ボソッ)」・・・オレがやったって証拠がどこにあるっ!

 お前以外は全部オレの部下なんだぞ!お前の話なんか通る訳無いだろうがっ!」


 大方部下の弱みを握って逆らえないようにでもしてるんだろうぜ。


「あんたら、こいつの下にいたら命がいくらあっても足りないんじゃねぇのか?・・・死にたきゃ止めねぇけどな(ボソッ)」


 怨調の下っ端どもは下を向いて黙り込んじまった。オレは命の方が大事だからリタイアするからな、こんなクソの下でやれる訳ねぇだろう?うちのおっちゃんに指揮させたら今頃帰り支度をしてるんだろうけどさ生憎あいにく眷属たちの連携を鍛えるんだとか言って今日に限って別行動なんだよな。


 どうしてこんな羽目になったんだか・・・



 きっかけは態々喫茶シリウスまでやってきて食事をしていった16強のお偉いさんたちが持ち込んだ一枚のパンフレットだったんだよな。


 それにはさ、除霊屋がいかにもユーシューなエキスパートが揃ってて小さな仕事でもすぐしますみたいな事書かれてたんだけど絶対(ゼッテー)ウソじゃん。いるのって言ったら無能と霊能者の境みたいなビミョーなのばっかだしさ金額が張らねぇのは手ェ抜いて失敗ばっかじゃん。難しいのはオレたちに振って手柄だけ総取りするだけじゃん。シリウスじゃテッポーダマみたいなオレがヨソの現場に行きゃあ絶対エースみたいな位置に付かされちまうし何がエキスパートなのさ。


 んでおっちゃんには黙って16強の偉いヒトんトコに、あぁクー姉(葛葉姉さん)んトコのめんどくせぇ親父んトコじゃないさ。あそこに行ったらクー姉の親父に捕まっていつまでもグチられっから帰れねぇもん。アレじゃあクー姉帰ってこねぇって解ってないのかね?


 んで行った先が全国救世連合会、略して全救連、つまりボーズ系の元締めんトコだった訳さ。16強なんて言ってるけどボーズ系(仏教系)キリ教系(キリスト教系)神さん系(神道系)オンミョージ(陰陽師)系でバラバラにまとまってるからめんどくせぇんだけどな。ついでに言っとくけどクー姉のトコは神さん系とオンミョージ系の元締めの中でエライヒトだってさ・・・ポンコツだけど。


 話が逸れちゃったけどさ、そこで例のパンフを見せてウソつきって思わず言っちゃったんだよな・・・後でおっちゃんが溜息吐いてたけどさ、そん時は我慢できなかったんだよ。


 そっから因縁を吹っ掛けただとか名誉棄損がどうだとか揉めに揉めて、サイシューテキには詫び入れる代わりにタダ働きさせられてる訳なんだ。クー姉には理由言うと力がある分オレ以上に大騒ぎになっちまうから詳しい事は教えてないけどうさぴょん(宇佐木の姉ちゃん)はおっちゃんの様子から全部分かったらしくて恨めしそうに溜息吐いてた・・・霊がダメなのに巻き込んでゴメン。


 クー姉がいないトコでおっちゃんとうさぴょんから説教されたよ。アレはオレを狙って16強が嵌めたんだって。オレは曲がった事が嫌なだけなんだ・・・でもそこはオレのいい所だから忘れちゃダメだっておっちゃんが言ってくれたんだ。思わず泣いちゃったのはヒミツだぜ。


 でオレが回されたのが、昔一族皆殺しにされて籠りまくった怨霊が一度は封印されてたんだけど時間が経ってそろそろヤバいってトコの封印強化の応援だったって訳さ。“不動明王(笑)”がしくじって中の怨霊をばら撒きまくっちまって大騒ぎになってるけどさ、どう考えてもオレ悪くないじゃん。てか、このボンクラが幹部の怨調ってオワコンじゃね?14しかいない16強がまた一つ減るんじゃね?



 オレが黙って帰り支度を始めると下っ端の一人が心配そうに話しかけてきた・・・オレと喋ってたら一番前に行かされるぞ?


「俺たち残して帰っちゃうんすか?」


「命が惜しいからな。このノーナシと一緒にいたら無駄死にしかないだろうが・・・あんなのがジョーシじゃなくてよかったぜ(ボソッ)」


 下っ端が真っ青な顔してオレに縋り付いてくる。


「俺たち何でもしますから帰らないでください!見捨てないでください!嫁と3歳の娘が家で待ってるんです!どうか、どうか・・どうか」


 ヨメとコドモの話をされると帰りづらいじゃんか。仏教式の封印ってどうするんだっけ・・・うさぴょんだったら元々そっちのヒトだったから一発なんだけどさ・・・


「フン、敵前逃亡したって業界に言いふらしてやるから尻尾撒いて逃げ帰るがいいさ」


「言いふらしたかったら生き残る事だな・・・どう見ても全滅しかないだろ(ボソッ)」


 強がる不動明王(怒)のアオリとオレの返しを聞いて、オレを掴んで離さない下っ端Aの顔色は青から土気色に変わっていく・・・しまった、ホンネ言っちまった。


「ミサエ・・・カオル・・・父ちゃんもうお前たちと会えないけど赦してくれぇ」


 ヨメさんか娘さんがカオルなのか。このまま帰ったらオレ悪者じゃん・・・やるしかないのか?


「指揮権はオレに無いからさ・・・この現場をどうにも出来ねぇんだよ(ボソッ)」


 諦めてくれるように最後の言い訳をしてみると下っ端Aの目付きが決意で鋭くなる。気の毒だけどさ、自分たちで玉砕する気になった?


「拳王様が唯一の希望なんです!こうなったら実力で!」


 えっ?オレを抑え込む気?絶対(ゼッテー)無理だぜ?


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