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狸なおじさんと霊的な事情  作者: BANG☆
微笑みの海神と憐れなる生贄編
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第72話 狸、休暇のような仕事に黄昏る

再投稿です

既読の方はお飛ばしになられても構いません

 海の青さと照り付ける太陽、そして焼け付く砂が僕のHPを削っていく。夏の海に来たことなんていつ以来だろうか・・・小学校の臨海学校以来?だとしたら44~5年振りって事か。周りを取り囲むのは水着姿の妙齢な美女と美少女たち(年齢で言えば美女ばかりと言わなきゃならないんだけど最年長が・・・ね)。


 当然のごとく、周囲の男たちからの嫉妬の視線が刺さりまくって、これに殺傷能力があるのだったらきっと弁慶の臨終シーンもそうだろうと言わんばかりになっている。弁慶の死に姿に関してはなどと説明をする時点で敗北しているんだが(誰に)、そういう事は気にせずに説明しよう。


 えっ?仕事の事はどうでもいいから葛葉嬢たちを描写しろ?・・・ボキャブラリーが無いんでできません(断定)!


 夏の幽霊退治と言えば、船幽霊とか河童とか溺死者の霊の鎮撫とかを想像する向きが多いと思う。


 実は僕たちが訪れているのは、階段で有名なI県の少し離れた岩場には赤い鳥居が見える有名な某海水浴場で・・・えっ?怪談じゃないのか?ちんちくりんの弱点がお化け幽霊の類である事を忘れたのかな?四谷とか番町とか鍋島とかそう言うので有名な所にはあの子は絶対近寄らないくらいなんです。お陰でピュアを使える僕が現場に出る回数が多くて・・・いやこれは余談でした。一段上る毎に霊障に襲われる階段って奴が近くにある古い元病院にあるのでギョーカイ的に有名なこの場所で、僕たちは不本意ながら海坊主退治に駆り出された訳で。


 船幽霊とどう違うか?スケール、貫禄、難易度、報酬、全てにおいて『クトゥルフの猫』討伐が準備運動程度にしかならないくらい段違いな難事業にチームシリウスは立ち向かわされているんですよ。所謂いわゆるシリウス案件ってヤツでして。船幽霊が単体だったら教会に行った伊達が5人もいればどうにかなるレベルと言えば分かってくれるかな?比較対象にならないかぁ・・・それじゃあシノヅカカズマが百人いても船幽霊には叶わないって言えば・・・もっと通じないかぁ・・・うちで霊に対して最弱(言い換えると生身の人間相手だったら最強)のちんちくりんが船幽霊3体までだったら単独で処理できるって言えば雰囲気は伝わるかな?その船幽霊と海坊主を比較するなら戦力差でメダカとシャチ?当然ながら眷属総動員の一大決戦になる訳で。


 コレが16強辺りの指金だったら完全無視しますよ。でも()()()()が見える海岸ですよ?海の事なら恵比寿様でしょ?なんで農耕神のウーちゃんが出張ってくるの。ホントだったら下手すりゃ向こうには恵比寿様が応援してる可能性だってあるんです。そうなったらあーた代理戦争の当事者ですぜ僕たちは!それも除霊より面倒な妖怪退治の上、チームシリウスだけの単独アタックとか誰得なのさ!


《ターさん♡、何一人でブツブツぼやいているのさ》


 なんだよこの出戻り眷属(アンジェ)。この野郎、ウーちゃんの加護が切れたのに自力で眷属に戻ってきやがって、いつもの黒毛皮ビキニ姿で横にはべってやがる。胸を押し付けて来るな暑苦しい。そういう事をすれば対抗しようとするめんどくさいのが本気を出すだろうが!ほら。


「愛玩動物の分際で、正妻の私の目を盗んで旦那さまにナニをしようとしてるので御座いますか?この泥棒猫は!」


 黒の水着(モノキニ?とか言うらしい)で目のやり場に困る自己主張の激し過ぎる体を包み、上から白い上着(パーカー?とか言うらしい)を羽織っただけの葛葉嬢がパラソルの中からアンジェを牽制してくる。どうやら日焼けするのが嫌みたいだな。まぁ、白くない顔した葛葉嬢なんて想像が出来ないんだが。


 そして葛葉嬢がアンジェを牽制しようとこっちを睨みつけた途端、隙あらばウチの女性陣にアタックしようと待ち構えていた愛の狩人(身の程知らずの一般人)たちがバタバタと面白いくらい倒れて行った。


 一般人にとって葛葉嬢の威圧は隕石の直撃(メテオストライク)並みの威力があるんだってここに来るまでも散々説明してたのに・・・どうするんだいこの惨状・・・


 この死屍累々の海水浴場をロリッ子(カオルン少年)コンビ(ちんちくりん)がギャラリーを引き連れて戻ってきた。


 ビキニと言うには布地が多くてセパレートとか言ってた青い水着を着こんだ頑張っても高校生にも見えないカオルン少年と俗にすくーる水着なんて言い方をされてるらしい紺色の水着を着て一歩ごとにたゆんたゆん胸を弾ませて歩いてきたどう見ても中学生にしか見えないちんちくりんの二人だ。


 二人が持って来たと言うより、取り巻きのあんちゃんがお近づきになろうと労役を申し出てうんうん言いながら抱えてきたスイカ・・・カオルン少年、自分と見比べて落ち込むんじゃないぞ?ちんちくりんと葛葉嬢を見て見ろ慢性の肩こりに悩まされているだろう?君のだって走れば揺れる位にはあるんだし気にしちゃダメだぞ!顔だって性格だっていいんだから人並み以上だけど他より目立たないからって胸にコンプレックス持つんじゃないぞ。できれば僕から早く卒業して欲しいんだよ。もっと若くて活きのいい奴が周りにゴロゴロしてるじゃないか、修理工場のシュウジくんとかいつも慕ってAランチを食べにくるツトムくんとかあのにやけた白バイ隊員とか。


 済まないけどさ、あんちゃん、一生懸命今夜の予定を二人に聞いてるトコ、ホントに気の毒なんだけど、二人に話しとかなきゃいけない事があるんだよね。


()()()、暑いトコありがとうね。()()()の所に今夜の事を確認しに行ってもらえないかい?」


 父親と海水浴をしに来た三姉妹を装って(ペットの黒猫と鸚鵡付きで)海岸でくつろいで見せているのも今夜の海坊主討伐の為。危ないから部外者は来ないで欲しいんだよね。腹芸の出来ない葛葉嬢が正妻だとか何だとか言うのは置いといて設定に乗っかった話をしようじゃないか。


「ここまで持ってもらってありがとうございました。あたしたちだけじゃどうしようもなかったから助かっちゃったわ。でも大丈夫なんですか?向こうでマリンちゃんだったかな?真っ赤な顔して待ってますよ?

 ・・・転ばないようにねぇ!」


 一番年上だけど末の妹役のちんちくりんが気を利かしてあんちゃんを追っ払う。この辺が年の功だよね。


 周囲を取り囲んでいた愛の狩人(命知らずの一般人)たちも、遠くにいた仲間(根性無し)たちから救出されて全員が回収されて、現在このビーチはチームシリウスのプライベートビーチと化している。


 ここに護摩壇を設営してちんちくりんに祈祷をさせて先ずは海坊主を陸に上げる事から作戦が始まるんだけど遠巻きに見ているギャラリーが多すぎるな。この砂浜が無くなっても退治しろってウーちゃんが言ってるくらいだから砂浜から200メートルはマージンを取りたいよね。


「姫様、始めますよ?」


 真夏の昼下がりまだ日差しが殺人的に降り注ぐ中、僕たちの“坊主めくり作戦”が始動した。

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