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狸なおじさんと霊的な事情  作者: BANG☆
閑話 その5
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閑話 おっさんは我が子の名前に悩んでる

 『ハルちゃん』 『ハーピー』 『ハッピー』 『ピュイア』 ・・・ダメだどうもしっくりこない・・・


 今、僕は生みの苦しみを味わっている、名付けと言う奴だ・・・ひょんな事から懐かれてしまって眷属になってしまった風の精霊ハルピュイアの名前をうんうん唸りながら考えているんだ。


 アンジェの時は『闇風のアンジェリーヌ』などと言う中二病全開の名前を思いついちまって名前を呼ぶ度に後悔をしたもんだ。今でも正式な名前で呼ぶのが恥ずかしい、と言うより嫌だ。


 だから今回は真剣に考えているんだ。・・・いやいやお前の時、気を抜いていたとかそういう事は無いからね。


 アンジェが恨めしそうにこっちを睨んでるけど怖くなんかないぞ~。そろそろ豹サイズに戻りつつあるから眷属に戻ってくるのかも知れない・・・というか、きっと戻ってくるだろうね。


 アンジェの時はちゃんと自我がある大人になってからの眷属化と言うか押し掛け眷属だったから何となく流れで決める事が出来た。でも今回は孵化の瞬間に立ち会った事からの刷り込み(インプリンティング)で親だと認識してるみたいだから結婚もした事無いのにいきなり子育てをしなきゃならないと言う所謂いわゆる“目指せイクメンプロジェクト”発動なんだな。


 そのとっかかりが名付けな訳で本性を現しているハルピュイアは、今僕の頭の上でスヤスヤ微睡んでいる。遊びたい盛りだから起きてたら誰かにちょっかい出して結構騒がしいんだけどね。そろそろ起きるかな?


 美人さんだから『小町』とか格好が似てるから『ニケ』とか昔よく見たアニメから『ラム』とか色々思い付きはするけどチームシリウスのみんなからの受けが悪い。


 曰く、

「旦那さまの身を守る鳥なので御座いますから『ヤタガラス』が良いので御座ます!」


 いや、赤ん坊に守られるこっちが情けないしコイツ烏じゃないし・・・


「おっちゃんにこれだけ懐いてんだから『ポチ』でいいじゃん・・・可愛いし(ボソッ)」


 あのねぇ、君の名付けは全部『ポチ』じゃないの。他のと区別がつかなくなるから却下。


「あたしは『ハル』ちゃんがいいですね。最初にそう呼んじゃたら他のが思いつかないですよ」


 その意見にはほぼ賛成なんだけどチーム内の政治的バランスと言うか色々微妙なもんがあって今回は見送らせて頂きます。


【2番目の眷属なんやから『ろの2番』!これしかあらへんやろ!】


 はいはい、他所の人事に部外者は口出ししないでねぇ。抑々(そもそも)その方式だとアンタんとこの眷属(ボケなすびども)と丸かぶりだから面倒しか起きないでしょ?・・・いつまでここにいるんだいこの駄女神(ウーちゃん)は。


《ウチにも一言ぐらい言う権利はあるよね。だってこれから同僚になるんだもん》


 ・・・何の儀式もしないままコイツ(アンジェ)が眷属に戻ってきやがった。どこの許可を受けてきたんだか・・・ウーちゃんは二度とできない筈だから置いといてさっきからそこらへんでハルピュイアに突かれ遊ばれてる八幡様か?それとも控えめにお茶を啜ってるお諏訪様か?・・・馴染んじゃってるけどこの(神様)たち居座っちゃってるんだけど、どして?


《ターさん♡、一言ぐらいいいよね?》


 仕方ないなぁ、言うてみ?


《春に生まれた風の精霊のハルピュイアだから二つ名は『春風』がいいと思うの。ウチが『闇風』だから対になってるみたいでしょ?》


 頭に春風のが付く訳か・・・有りだな。


「採用」


 僕の言葉を聞いた途端、雄たけびを上げながら外に飛び出していくアンジェ。こりゃあ1週間は猫たちを引き連れて街中を暴走行為するな。血の気が余ってる奴だな、まったく。


 さてそうなると春風のハルピュイアじゃ春ハル続いてあんまり面白くないな。


「春風の~何にしようかね?」


「春風のヤタガラスで御座います!」

「春風のタマ?・・・タマばっかになっちゃうか(ボソッ)」

「春風の、ですか。ハルちゃんは鸚鵡に化けれるからパロット?」


 葛葉嬢、お前さんのイチ押しがヤタガラスなのはよくわかったけど女の子に付ける名前か?カオルン少年はポチが却下されたからタマってぇのはタマ呼びされているのが今のチームにもう二人いるって事を承知で言ってるのか?ちんちくりんは捻って鸚鵡を英語読みにしたんだな。それじゃ犬にドッグって名前を付けるんだなお前は。


 全部ボツ!よっぽどハルピュイアを分割して春風のピュイアにした方がマシじゃないか・・・ん?


「春風のピュイア、いや春風のピュアはどうかな?」


「折角の私たちの子供なので御座います。和風な名前にしてはいかがで御座いますか?」

「可愛くていんじゃね?・・・オレも可愛がってくれよな(ボソッ)」

「ピュアですか・・・あたしたちの名前から連想したら偵察が上手なフレンズみたいな感じですかね?でもいいと思いますよ」

【なんやけったいな名前やなぁ。そない下にしたいんならハーピーのピーでええやないか】

【兄貴が決める事に間違いなんかねぇさ!ぴゅあでいいんじゃね?】

【ピュアとはあれですね、ハルピュイアの下の方と生まれたばかりの純粋さを掛けて思いつかれたんですね。流石はわが師、目の付け所が違いますね。僕は賛成です】


 身内は賛成2反対1棄権1、部外者は賛成2反対1。よってハルピュイアの名前は『春風のピュア』に決定しました。と言いたい処なんだけど反対してるのがあの頑固者だからなぁ・・・はぁ・・・


「私は()()な名前がよろしいので御座いますが。()()()()()()の名前で御座いますのに」


 そんなに強調されてもねぇ・・・刷り込みされたのは僕だけだし。そりゃその直後に君は来たけどあの娘(ハルピュイア)の眼には僕しか見えていなかったんだから・・・あぁ、あの眼は人の話を聞くつもりが無い時の眼だ。


 よしここは本人に決めさせちまおう。最初からそうすりゃよかったんだ。


「ほらほら、いつまでもそんなの(神様)で遊んでないでここにおいで。これから君の名前を決めちゃうよ」


 ハルピュイアがおもちゃ(八幡様)を放り出して僕の所にやってくる。やっぱ可愛いなぁ。


「まだ全然決まっておりませんじゃ御座いませんか」


「だから一人一つずつ名前を出して本人が気に入った物を名前にするんだ」


「ポチの名前をポチに選ばせるんだ・・・一番わかりやすいよな(ボソッ)」


「黒猫様がいらっしゃいませんが?」


「勝手に飛び出していない方が悪い。それに『春風の』はあいつの案だからそれ以上は不公平になりかねないだろう?」


 よしちんちくりんも納得したみたいだから早速実行を・・・まだ文句があるのかい?圧壊の姫様(葛葉嬢)。・・・アウトレンジの魔王だったっけ?いや、圧壊の舞姫じゃなかったか?


「夫婦仲のいいオシドリで御座いますとかなら納得できるので御座いますのに・・・」


 それは種類の名前であって個に付ける名前じゃないだろうが!


「一夫一妻制を守ってるのはペンギンじゃなかったかな?オシドリって結構ペアが変わるそうだよ?」


 因みにハルピュイアは無反応だったりする。涙目で僕を睨んでも判定は確定しちゃいましたよ。


「オシドリは気に入らないようだね。それじゃあ大上さんは?」


「替えるとカッコ悪いからポチでいいや・・・ポチだよな?(ボソッ)」・・・却下だね・・・


【そないな個別認識が出来ひん様なん名前になるかい!やっぱろの2番や!】・・・無視されてますね・・・つうかアンタんとこの眷属じゃねぇだろう!


【兄貴ぃ、人面鳥の類となりゃぁオイラの眷属どもと親戚同然ですぜ!ここは一丁ホンちゃんって事で、どすか?】・・・嫌がってますよ。八幡様、そのどんどんチンピラ化していくキャラどうにかなりません?小物感、半端ないですって。


【古来、瑞鳥と言えば鳳凰。鳳凰よりいづるらんと申します。ただ、鸞は雄を指し示す名。

雌に関しては和と称すると聞き及んでおりますし、この娘は相応にさえずります即ち歌うのを好むと思われますので、和歌なる名はいかがでございましょうか】・・・すいません、難しい話は生まれたばかりの子供には理解できなかったみたいで反応しませんでした。お諏訪様が真剣に考えてくださったことは重々承知していますのでお気を悪くしないでくださいね。


「えーと諏訪大明神の後に意見させていただくのははなはだ不作法だと思うんですが何となくこんな順番になっちゃってすいません。あたしはしょっぱなから呼んでて慣れちゃったのでハルちゃんしか思いつきませんでした。春風のハルちゃんじゃ間が抜けてるみたいでダメですよね」・・・上目遣いで僕に訴えても決めるのはハルピュイアだからね、ちんちくりん。困った顔してハルピュイアが僕の顔を覗き込んでるから取りあえず保留にしようか。


「それじゃ最後に僕の案だね。ピュア、春風のピュアってのを考えたんだがどうかな?」


 ハルピュイアはパッと顔を明るくして囀りながら舞い上がった。ここ広くないんだからぶつかるなよ?


 そして僕の前に舞い降りて頭を下げてこう言った。


《なまえをありがとう、おとーさん。これからずーっとピュアのなまえをだいじにするね♡》


 と、婆さんみたいなしゃがれた声で返事をくれた。・・・ハルピュイアって老婆のような容姿をしているって話なのに残ってる絵や本人は若くてピチピチした美人さんなのにおかしいなぁなんて思ったら声がばぁさんみたいだったんだ・・・必要無い時は囀ってればいいさ、可愛いもん。

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