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狸なおじさんと霊的な事情  作者: BANG☆
閑話 その4
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閑話 兎はさすらいの旅に出る

あれからひと月って感じですか

「このぼろっちい寺ともこれでお別れか」


 大きな湖を眼下に望む霊峰の中腹にある寺の参道を掃き清め終わって、あたしは箒を納屋にしまいながらここ10年通ってきた古びた本堂を見上げていた。


 年末の悪神討伐で大日本調伏同盟の最期の花道を飾り、みんなで生き残って年を越せたあたしたちにはかつてのライバルだった16強と呼ばれる除霊業界のメジャーから引き抜きの申し込みが殺到した。それは凄まじいものがあって、“宇宙人”こと伊達くんなんかは16強の中の生き残っている14社全部から札束攻撃を奥さんともども受けまくって有頂天になって世界救世教会に買われていったわ。契約金1億年棒2億5千万だなんてプロ野球の助っ人みたいな金額だったけど、きっと元を取るために教会からき使われて1年先に生きているかどうか・・・何しろあそこは、八幡様の怒りを買って1軍連中(エース級)が根こそぎ無能力にされちゃったからね。


 他のみんなは、おじさまが競技会で釘を刺してくれていたおかげでそんなに激しい勧誘を受けずに済んだのかも知れないわ。だって除霊業界に戻ったのは一人もいなかったんだから。元々事務員のあたしにだって仏教系の日本の来世を救う会とか日本と来世を繋ぐ会だとか弥勒の会辺りからお誘いだけは頂いたけど、神道の神様から加護を頂いた事があるだけの女に殊更の興味があった訳でも無かったらしくて一度お断りしたらそれっきりだったわ。


 新興宗教系の光の会やワールドエクソシズムが最後の最後までしぶとく勧誘に来てたけど、胡散うさん臭い業界の中でも一番犯罪のにおいが漂うあの辺りには立ち話もさせないように徹底したおかげで、騙される子がいなくてほっとしたものよね。


 とにかくみんなの再就職もようやく全員決まって出て行って、最後の仕上げの掃除が今終わったところなの。


 これからあたしは旅に出ようと思う。おじさまが旅先であたしたちに出会ったようにあたしも誰かと新しく出会ってみたいから。できる事なら平和的に会いたいけどね。


 事務所のロッカーの中にある数少ない私物をリュックに詰めて外に出ようとした時、()()は目の前に姿を現した。怖いものが苦手なあたしは、思わず悲鳴を上げて偶々(たまたま)持っていたペットボトルをそれに投げつけて這って逃げた。だって腰が抜けて歩けないんだもん。


 幸か不幸か(絶対に幸よね)追いかけられる事も無く、麓まで泥だらけになってでも降りてこられてホッとしたところでさっきのアレの正体に気が付いた。


 猫田部長だ、あれ。悪神になる前の実の弟と喧嘩で負けてそのまま寝込んで、悪神討伐に参加できなかったっていうか途中からは惰眠をむさぼっていたとしか見えなかったんだけど最終決戦は確かベッドの上で見ていた筈だわね。


 ようやくほとぼりも冷めて外に出てみれば、人っ子一人いない寺を見て慌てて飛び出してきたとか?


 その挙句に、出合い頭にあたしからペットボトル投げつけられて、ひっくり返っている間にあたしに逃げられて昼飯どうしようって考えこんでいるんじゃないかしら。基本自分一人じゃ何もできないダメ人間だったからね、部長って。愛人作って嫁さんにも逃げられてるし、って言うかその愛人もあのシノヅカカズマこと鰻 権蔵に寝取られてたんだったよね。


 鰻の奴がそこそこの霊力があるもんだから、商売を考えたら文句も言えずに札幌支部の支部長に栄転させて泣き寝入りしたんだったわ。


 そんなこんなで色々やらかしてでも幹部で居られたのは、先に雲隠れした副会長の弱みを握ってたからだなんて今更ながらえぐくてひどい会社だったよねぇ。


 まぁ借金取りに追われている幹部連中の事はほっといて、あたしはあたしの自分探しの旅にでも出る事にしましょうか。


 まずは東よね、最初は同盟終焉の場所へ巡礼の旅にいざ行かん!

この子は扱いやすいけど訛りをどうするかが問題だったりします

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