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狸なおじさんと霊的な事情  作者: BANG☆
邪なる猫神と小さな番長編
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第43話 狸、審判になる

「同盟と『猫』との果し合いが決まった後、無断で『猫』の討伐資格を最初に決めたのが16強の教会のキム会長だそうですから決定だと思いますが?」


 いやぁ、ソウル大卒整形不美人のイさん、顔色悪いですなぁ。アンタ、キムの秘書だったんだから裏側の事を知ってるものね。


 さてさてドナドナしましょかね。丁度時間にもなった事だし。


「それでは『クトゥルフの猫』討伐大会改め『クトゥルフの猫』による霊能検定競技会をこれより開始します。

 諸々の挨拶等は、『クトゥルフの猫』の方が嫌がりますので省かせてもらいまして早速説明を始めさせていただきます。

 試合会場は、旧駅前交番を中心とした半径100メートルの円内をフィールドとします。

 審判に対する攻撃は、霊能者側『クトゥルフの猫』双方とも実行した時点で即刻失格、直ちに掃討戦に入ります。

 霊能者側の勝利条件は最上は『クトゥルフの猫』の討伐ではありますが現実的ではありませんから次善の条件でも結構です。すなわち持ち時間15分を耐え抜く事。

 敗北条件はギブアップ、会場のフィールドからの参加メンバーの逃走、偶然かどうかに関わらずフィールドからの逸脱、フィールド外からの協力者による攻撃、実技に参加メンバーの中のリーダーの死亡、戦闘の回避。

 『クトゥルフの猫』にとっての勝利条件は、最終戦の対戦相手の敗北が決まった時点でフィールド内に留まっている事。敗北条件は討伐される事、戦意を失わされる事、戦闘の続行が不可能になる事。

 勝利報酬は霊能者側はメジャー(16強)を名乗れる事。『猫』はしかるべき場所に神社を創建して正式な神を名乗れる事。

 敗者には、霊能者には16強から1年間の脱落、『猫』には野良の怨霊として1年間の放浪を申し付けます。

 これを担保するのは神道より稲荷神社、八幡神社、諏訪神社。キリスト教よりローマ・カトリック教会。仏教より園城寺、醍醐寺の各位となっています。

 申し遅れましたが、僕はこの競技会で審判を公平に努める事を条件に『猫』から信任を受けました通称“シリウスの番頭”です。僕の仲間は、ここには来ていませんがそれについての文句があったら僕に面と向かって言ってください」


 会場も周囲も咳一つ聞こえない異常なまでの静けさでなんかやらかしたかな、僕?


「それでは時間も遅くなりましたから早速競技に入りたいと思います。

 順番はクジで決まっています。エントリーナンバー1番“世界救世教会”Aチーム、こちらに」


 厳正なクジでしたよ。細工したのはウーちゃんたち3柱ですから。


 死にそうな顔して前に進み出てきたのはソウル大卒整形不美人を筆頭にした12人。目を細めて首筋を見てみると全員が生首状態。八幡様の仕事の徹底ぶりが(うかが)えますね。


「顔色が悪いようですが棄権なさいますか?」


 土気色の顔が一斉に横に振られる。そりゃそうだな、メジャー落ちのA級戦犯にはなりたくないんだろうから。でも霊能が戻らないかもしれないのに除霊屋にしがみ付く事も無いだろうにね。


 能力も無いのにどうやって『猫』に対抗するのか、後学の為にも視てましょうかね。


 ブザーの音が鳴り響き12人が一団となって『猫』の元に向かう。足並みが揃ってて軍隊みたいだね。


 整形不美人の指示で『猫』の前面に扇状に広がって、やおら身の丈ほどの十字架を左右から『猫』に向けて突き出すと周囲に水を振りまき賛美歌を歌い始める。


 霊能が無ければ水は聖水として機能しないらしいんで完全に無駄な努力なんだけど、『猫』の方は教会の連中に見向きもしない。専守防衛を約束しているんだから全く攻撃の体を為していないって事なんだよね。


 15分の攻防で1度も『猫』を起き上がらせる事も無く教会Aチームの戦いは終わった。素人目にはずっと攻撃し続けていたかのように見えていたかもしれないけど、現実問題としては何もしなかったのと一緒だったな。


 とは言え、勝利条件はクリアしたんだから教会は来年もメジャーで居られることが確定した。なんとも悪運の強い連中だ。ただ、あの戦いぶりで注文が来るかどうかは(はなは)だ疑問だけどね。


 続きまして2番は同盟のお隣さん“日輪道場”だ。


 リーダーの道場主の首が微かな青紫で胴体とつながり番頭格が淡い紫色、あと5人ほどいる弟子たちは生首か。


 修行中に世話になった事もあるからあまりひどい目に会って欲しくも無いんだが、さて『猫』の判定は如何(いか)に。



 それなりに迫力のある道場主の掛け声に呼応して、6人の弟子たちが一斉に金剛杵(こんごうしょ)を振りかざし九字を切る。うむ、同盟のお隣さんだけあって仏教系か。微かとは言え霊能による攻撃に『猫』が不機嫌そうに鼻息を吹きかけ、日輪道場の面々を蹴散らした。


 吹き飛ばされても撫でるように弾かれても、7人は声を揃えて『猫』に立ち向かう。吹き飛ばされる度に擦り傷や(あざ)が増えていき、お揃いの白装束が泥に(まみ)れていく。ちゃんとした道具を使ったら初級どころか己級でも充分仕置きできる実力はあるみたいだな。逆に言えば道具がひどい・・・


 5分が過ぎ、10分が過ぎた頃から体力が無い者から脱落し始め、残り30秒を切るあたりで残るのは道場主と番頭のみ。タイムアップの笛を吹こうと準備を始めた時、二人が最後の攻撃を始めた。


 最後の力を振り絞っての攻撃は、懐に忍ばせていた特大の数珠に念を込めての投擲とうてきだった。しかしそれは

『猫』の鼻息によってあらぬ方へと逸らされ不発に終わった。


 万策尽きた日輪道場はここで投了を宣言、あと30秒を堪えられずに16強の座を逃してしまった。クレバーな挑戦者だったら最後の30秒は仕掛ける振りだけで時間稼ぎをしたのかも知れないけど、フェアで愚直な選択で運を使い果たした格好だね。


 でも、世間の好感度は爆上げになったみたいで、気の早い依頼人が八幡神社や稲荷神社に伝手を求めて殺到し始めているらしい。


 道場主、ヅラが新調できそうですね。その前に道具をどうにかしなくちゃいけないか。


《今の連中は中々筋が良かったな。いい道具さえ揃えてたらオレも手加減が出来なかったよ》


 『猫』も同意見だけど、僕の見立てじゃ道場じゃ己級までなら大丈夫だと思ってるんだけどね。お前さんは己級だって自己申告しているようなモノなんだけどさ。整形不美人の能力がオフになっていて運が良かったな。

文中の各宗教団体の関係者の方は完全に気にしないでください

フィクションなんで(ドキドキッ!!)

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