第37話 狐の神様、武神より武神になる
今回から登場の神様について・・・フィクションですから!これはフィクションなんですから!
間違っても通報とかはしないでくださいね。
「だったら解り易くて信じられるものをぶら下げてやればすぐに食いついてくるのは必定です」
だって、武神なんだからごっついおじさんが来るって思ったんだもん・・・
今、僕は二人のおこちゃまの相手をしている。諏訪神社の祭神建御名方命さまと八幡神社の祭神誉田別命さま、なんだそうだ。
絶対これはウーちゃんの嫌がらせだ、そうに違いない。
「ええと、お二柱はどうしてこのようなお若い姿で顕現頂いたので御座いましょうか」
研究職だったんだから言葉遣いが怪しいのは勘弁して欲しい。
【だって大先輩のお稲荷様があのようなお姿で顕現されているのに、若輩者の私が大人びた姿で出てこれる筈が無いではないですか】
とは父親の大国主命とのタッグで日本神話の国譲りの場面で初出演された建御名方命、通称お諏訪様の弁。まあ明治の初めまで8才くらいの子供に自分の名代をさせていた方ではあるので、小学生姿は馴染みが深いのだろうよ。
「何をそんなにビクビクされてるんですかね?」
【逆にお主みたいにあのお稲荷様に向かって面と向かって罵倒する奴なんて、オレも初めて見たもん】
・・・応神天皇であらせられた誉田別命、通称八幡様の有り難いお言葉ですよ、ええ。
【せやせや、もっと言うたれや!】
相変わらず大人げないおばさんには溜息しか出ないよ。
【なんや、オドレ!その溜息は何かい!態々無理言うて連れてきたんに礼の一つも無いんかい!】
武神より荒ぶってる豊穣の女神なんて誰得なんだろうね・・・はぁ・・・
「それはどうもおせわをおかけいたしました。まことにたすかります」
【心がこもっとらんやないけ!オドレとは一回きちっと決着付けんとあかんようやな!】
「それはそうとウーちゃん、もっとお婆ちゃんになってくれません?」
【お、お、オドレは言うに事欠いて、ワテに皺くちゃのクソ汚い婆あになれっちゅうんか!!】
「だって、ウーちゃんが若作りするから、お諏訪様も八幡様もバランス考えて子供になっちゃったんだから仕方ないじゃないですか」
「「!!」」
おや?武神二柱の表情が硬直しちゃいましたね。
「あーっ、お稲荷様、私はそんなつもりでこのような姿で顕現してきた訳では無いのですよ」
「そうだよ。オレたちはいつまでも若くてきれいなお稲荷様にあやかりたいと思ってこうやって出てきたんだから」
八幡様、アンタ虎の尾を踏んだよ、っつうか踏み抜いたって感じ?
【おおそうか、いつまでも若くてきれいなワテの若作りを馬鹿にしたかったんやな。こんのクソガキどもそこに並ばんかい!一遍、頭すっ飛ばして正しいもんを詰め直してやるさかい、覚悟せいやぁ!】
やれやれ、どこのヤクザかよ、まったく。大体さ、お諏訪様は元をたどれば出雲の国の土着の神様だし、八幡様だって大分の1豪族の氏神様から来てるんだから2千年ぐらいは経った神様なんだけど、ウーちゃんはさ葛葉嬢の前世の殷の妲己と知り合いなんだから年季が違い過ぎるんだって事は自覚して貰わないとね。
「流石は庶民派、高貴さやら気高さやらこの場に入らないモノはかなぐり捨てて、闘魂一筋って感じでいいなぁ。パワフルって言うか、王者の風格覇者の覇気っみたいなもんが滲み出てて決戦前にふさわしい気構えだよね」
【そ、そうかぁ?そんなつもりはないんやけどなぁ。やっぱ、ここ一番ってやる事やらなあかんやん?
まぁ、旦那さんのやる気が高まったんやったらそれでええか、なぁタケ坊、ほんちゃん】
「「はい、その通りです!(収めましたよ、アレを)(オレ、兄貴って呼んでもいいかな)」」
なんか、妙な視線を武神二柱から感じるんだが、時間も無い事だし作戦を実行しなくちゃな。
「済みませんが、お諏訪様、八幡様。今日の討伐戦で骨折りをお願いしたいんですが」
「中東の神の徒たちが何やら邪な動きをしていると聞いていますしね。このままでは近淡海(琵琶湖)が我が諏訪湖程になってしまうやもしれませんから協力は惜しみませんよ」
「古来より宣託は、オレの得意分野なんだ。兄貴はオレたちに任せてドンと構えてくれてたらいいぜ」
・・・兄貴?神様から兄貴認定されちゃいましたが・・・なぜに?
早速、神様たちには色々やってもらいましたよ。人使い、いや神使いが荒いってウーちゃんから怒られても今やっとかなきゃ詰みなんだもん。業界2位神道系トップの“禊の会”に大人の姿のお諏訪様に降臨して貰って誰の許可で討伐をするのか問い詰めて貰った。
三流政治屋のゼニバコ ヒソカ程度の肝いりでどうにかなるものじゃなし、業界トップで3割近いシェアを持つ“世界救世教会”のごり押しがあったとしても当の『猫』から瞬殺されて無視されている状態で同盟に討伐をさせなかったら、それこそこの近辺は焦土と化すことだろう。何しろ新しい祟り神の出現なんだから。
今はまだ『シリウスの落ち武者』ほどの力は持っていないとはいえ、ここに集まった霊能者を全部喰らえばどうなるか。琵琶湖が諏訪湖程度になるかもなんて言ってたお諏訪様の予言が、的中してしまうかもしれないじゃないか。
そしてお諏訪様のサインと引き換えに得られた答えは、討伐したもん勝ち・・・だった。同盟以外との対決はあり得ないんですけど・・・約定違いで反故にされたら日本は壊れるよ?
教会のキムなんちゃらの考えが日本には何したって許されると思ってる事は、ハッキリしたみたいだね。
「それじゃ八幡様、よろしくお願いします」
【兄貴の為ならガンバルゼ!】
どうも八百万の神々とは感性が合う気がしないなぁ。
そして出された八幡様の御宣託は、除霊業界の面々を震え上がらせるだけのインパクトを日本中に与えたのだった。
〖日ノ本を守る八百万の神々を代表して八幡神が遥か西より参られた神の使徒に告ぐる。
我らが人の営みに手出しせぬ事を良い事に、新しき神が約定を交わせし者を除外しそれと成り代わらんとするは笑止千万なり。
成り代わらんとする者共には、我がその権能を以って霊能を奪うものなり。
新しき神と約定しうるのは、先に『落ち武者』なる神の覇業を阻みし者の同胞のみなり。
新たなる約定は速やかに行うべきものなり。
決して背く事無かれ。
背くは如何なる教えに従うものであろうと須らく我が力を目の当たりにするであろう〗
【うっしゃ!ほんちゃん、よう言うた。流石は道鏡の頃よりの“告ぐる神”や!ワテも鼻が高いで】
何はともあれ、16強って言うか教会の出方待ちだよね。
決闘開始まであと2時間。
八幡神社の由来とか色々錯綜しているもんで取りあえず都合のいい話を繋ぎ合わせて作ってます。
BANGされる前にぎぶみぃ★!