第36話 兎、情報を開示する
【それから“16強”が対決を仕切る事になったでぇ】
そりゃあそうなるだろうね、って言うかそうなるように仕向けるつもりで情報流してるんだもん、なってくれなきゃ困るんだよね。
討伐成功で崩壊寸前の同盟が起死回生のV字回復で16強に戻ってこれる、となると追い落とした方としてはどう思うか・・・それと逆にもし同盟が討伐に失敗した場合は、霊的にも重要な霊峰と京都が悪神に取り込まれるという情報、それも稲荷神社から全国の祠を通して全国民に対して流されて極秘情報として秘匿する事の出来なかった情報の信憑性をどう位置づけるのか。
神道系仏教系は、神社とも付き合いが浅くないから稲荷神社の宣託を無下にはできない。一方、キリスト教系は闘いを司る八幡神社や諏訪神社ではなく、本来農耕神であり家内安全五穀豊穣などを恵むべき稲荷神社が先日の『落ち武者』に続いて今回の『猫』の悪神認定をした事を問題視しているに違いない。つまりは誤報として処理をしたがっている筈なんだ。
除霊業界が一枚岩でない事は、一番のシェアを誇るキリスト教系の世界救世教会が悪辣な手口で仏教系神道系陰陽師系から仕事を奪ってきた事が原因で、世間的にも認知されている。何しろ研究三昧で世事に疎かった僕でさえ知っていたんだから。
さて、この各宗派の軋轢をチャンスと見て16強の中でも最も胡散臭いと言われる新興宗教系“光の会”が胡散臭さでは世界に誇れるレベルの国会議員ゼニバコ ヒソカ氏を担ぎ出して1大キャンペーンを繰り広げ、キリスト教系の抵抗を押し切って16強主催で『猫』討伐が決行される事になったらしい。ビバ胡散臭さ、ビバ光の会!
ただこの辺の話は修行中だったので、ウーちゃん情報だからちょっと怪しいかも知れないな。
とにかく今の情報が欲しいとちんちくりんに言うと、不敵な笑いを浮かべながら僕にこう答えた。
「己を知り敵を知れば100銭危うからず、ですよね」
・・・そりゃ商売人だったらそうでしょうけど100戦だよ、孫子はね。
どうやら修行中のちんちくりんは、自分の情報網から状況の把握に努めていたらしい。流石、僕より参謀らしいと思わない?
「昨日の夕方時点で街に入った霊能団体は48。
16強で来ていないのは、キリスト教系だと“北の大地”神道陰陽師系なら“東京晴明”の非全国系メジャーの2団体のみ。“連合”は解体、“同盟”は追放、、、ですから12団体が参加ですわね。
野良の有名どころだったらおじさまの“狐塚葛葉とその一党”が不参加ですわ」
東京晴明が来ていないとなると葛葉嬢は、あの親バカの狐塚父に妨害されて動けないとかだろうな。それともあのクソ親父が今回の除霊が失敗に終わると踏んで戦力温存を図っているのか。
でもあの親父は葛葉嬢に除霊をさせるのを嫌がってたから、単に手放したくないだけかもな。
「一応、野良でやってきた一旗組も読み上げましょうか?
ええと、チームシルク、シノヅカカズマとその仲間、日輪道場、スーパーノヴァ、あすなろの会、エスパーエクソシスト、閻魔の魁、―――――」
なんかどっと疲れてきた。光の会並みに胡散臭い上に厨二っぽいのが揃ってるじゃないか。
流石は売名目的の一旗組だよ。チームシルクって海外で紹介される狐塚葛葉とその一党の別名からのパクリだろ?シノヅカカズマとその仲間もあやかりたいだけだろ葛葉嬢をさ。日輪道場・・・あぁ、この寺の隣の新興宗教か。スーパーノヴァ?爆発して終わりじゃないか。あすなろの会・・・おとなしめな真面な名前だな。エスパーエクソシスト・・・日本人の英語力の限界を感じさせる英語圏には聞かせたくない名前だな。閻魔の魁・・・この世を滅ぼしたいのかってネーミングだよな・・・こんな名前がダラダラ続くのって精神的に疲れるよ。
「・・・それで・・・もう・・・出番の・・順番は・・・決まって・・いるの?」
ああ嫌だ。慣れない女性が相手だと、スラスラと言葉が出てこないのは相変わらずだよ。かれこれ1週間一緒にいて、頭の中じゃちんちくりんを意識しなくても平気になっているのに口が喉が言う事を聞いてくれない。この章に入ってちんちくりんとの会話をわざと「」で出さなかったのは真面な会話になっていなかったからなんだけど・・・進歩がねぇなぁ、僕って・・・
【へぇー、そうなんや。タマちゃんや杏莉相手やったらスラスラ喋ってんやん。あれは・・・そうか愛情のあら「黙れ、駄女神。今は時間が惜しいんだ。・・・宇佐木さん・・・」シクシクシク、ズズーッ】
「いつもながら、ウーちゃんさまには手厳しいお言葉ですね・・・えーと、登場順はエントリー順だそうです・・・ね?」
「どこに・・・誰が・・・エントリー・・・したの・・・かな?」
「・・・16強の教会が設置した討伐実施委員会の事務局が窓口になっているみたいで・・・昨日で締め切っています・・・」
「・・・君たち・・の・・・出番は?」
「事務方のあたしが合宿に参加していましたので・・・エントリーはされてませんね・・・」
「・・・そこまでして・・・同盟・・を・・・戻したく・・・ないのか・・・」
「教会がえげつない事は昔から知ってはいましたけど、今回は日本の危機だって解っているんですかね?」
「・・・教会・・の・・・トップって・・・日本人・・・なの?」
「キム何とかって言う西の国の出身だったと思います」
「・・・日本・・には・・・何したって・・いいって・・・思っている・・・連中かぁ・・・・日本・・が・・・潰れても・・いいし・・・同盟・・が・・・出てこれ・・ないなら・・・もっと・・・いい位・・の・・・感覚・・・なんだろうな・・・・じゃあ・・・誰か・・・『猫』・・に・・・ちゃんと・・・アポを・・・取ったの・・かな?」
「あたしたちなら『猫』から見張られてるでしょうから連絡のしようもあったとは思いますけど、他の奴らはどうかしら?」
「・・・討伐・・実施・・委員会・・とやらは・・・どこ・・の・・・許可・・を・・・受けて・・・誰・・と・・・連絡・・を・・・取って・・・どう・・・『猫』・・から・・・了解・・を・・・得たん・・だろうねぇ」
やっぱり「」は取ろう・・・悲しくなるから・・・
「討伐する側から討伐される側にアプローチするとか普通はしませんよね?」
そりゃあ普通はしないだろうけど『猫』にとっては同盟以外は目に入っていないんだよ?それが後から勝手に割り込んできてあーだこーだ言い出したらへそ曲げて問答無用に叩き潰すんじゃないのかい?
「意識の上では同盟と『猫』の一騎打ちの筈ですからね」
「ウーちゃん、・・・おい駄女神。生きてるか?」
【ワテは・・ワテは神なんやどー!何が駄女神や!ちゃんと敬わんかい!ワテは、ワテは、ワテはやなー!】
「困ったな、壊れてやがる」
【アホンダラァ!ボケェ!カス!スカタン!お前なんか「何度も言わすな。黙れ、駄女神。確認だけしたい。『猫』と人間の橋渡しをした者が誰かいるのか?」
ふーん、橋渡しをした者ねぇ、ちーと待ちぃや。・・・ふん、解ったで。今は『猫』はあの“交番”やったトコに結界はって居座っておるで。そいでもって接触を試みたもんは今まで3人。全員霊能者や。最初の一人は、教会の奴みたいやな。なんぞ交渉を持ちかけたみたいやけど、鎧袖一触で瞬殺やったらしい。その後、二人組の除霊屋が仕掛けたらしいけどこれまた瞬殺で返り討ちや。
『落ち武者』みたいに10人も取り込んだ訳でも自力が有る訳でもあらへんけどああいう『おりじなる』言うんかな悪神認定されるんは自我もある上、知恵も回る。今の加護の付いとるアンタらかて一筋縄じゃ仕留めきれへんで。あのえらそーにふんぞり返っとるナンチャラ委員会の連中程度じゃ『猫』のエサにも足らんやろなぁ。
そんな奴らが仕切るんやと思うと片腹痛うて叶わんわ】
「それじゃあ仕切り直させるとしましょうか。ウーちゃん、済みませんが八幡さんとか諏訪さんとかと連絡取れますか?」
【そりゃあ取るのは簡単や。けどなんや、ワテじゃ役不足や言うてんのか?舐めるのも大概分にせぇや!】
「(あーっめんどくさい。こんなに血の気が多いのに豊穣の女神だって信じられるかよ)
いいですか、これは貴女の実力云々の問題じゃなくて単なる見映えの為の処置です。この子たちに付けてくれた加護を見たって貴女が一流の女神だって誰もが認めているんです(僕以外はね)。
人間ってのは、愚かで目で見たものでしか判断ができないモノなんです。だったら解り易くて信じられるものをぶら下げてやればすぐに食いついてくるのは必定です」
誰かこの時の僕に猿轡をかませてほしい。そして事態は混迷を深めていく。
決戦開始まであと4時間。
ご機嫌よろしければ星を頂けると嬉しいなぁとか思う今日この頃。




