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狸なおじさんと霊的な事情  作者: BANG☆
邪なる猫神と小さな番長編
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第34話 狸、謀を巡らす

「貴女らしいって言えばこれ以上の事はないですけどね・・・勢いで付けちゃダメでしょ、加護」


 一応は神様なんですからそれなりの理屈とかですね【じゃかあしぃわい!ワテがワテの遣りたい様にやって何が悪いんじゃ、ボケェ!】何でも勢いで誤魔化そうとするのはダメじゃないんですか?


【何やねん、高々タマちゃんの執念のおかげで転生させてもろうてんだけの癖してワテに意見するんは1万年早いわ!】


「そんな先まで人類が栄えてる筈無いじゃないですか。そのずっと前に、どっかのバカ垂れが核のスイッチ押して星ごと終わりですよ」


えらい醒めた考えをしとんのやなぁ、旦那だんさんって】


 話がひと段落付いたところで、ちんちくりん(宇佐木女史)が僕の袖を引く。


「おじさま、こちらに顕現されたのがウーちゃんさまですか?」


 稲荷狐どもが揃って恨めしげな眼でちんちくりん(宇佐木女史)を睨むけど、肝の太いちびには何のプレッシャーも与えられていない。うーむ、大物やね。ちっこいけど。


 まぁ、文句を言ったところでこのチンピラども(同盟構成員)には、ウーちゃんの正体なんて教えていないんだから仕方ないだろ?


 頷く僕にちんちくりん(宇佐木女史)・・・・鬱陶しいから以後ちんちくりんだけに統一しよう。ちんちくりんは中学生ぽい顔を紅潮させて吠えた・・・そう、叫んだとか声を張ったとかじゃなく『吠えた』んだ。


「鳥海山の大物忌神(おおものいみのかみ)さまと言えば我ら修験道に足を踏み入れた者にとっては最高神にも等しいお方!その加護を得られたという訳なんですね!」


 ウーちゃん、おめでとう。熱烈な信者がいたよ、ここに。


 ふとウーちゃんの方を見ると・・・ちんちくりん以上に浮かれてた・・・だから信者を幻滅させるんじゃないって言ってるだろうが。


「浮かれてるとこ済まないけど僕に一つ提案があるんだ」


【浮かれとるなんてこたぁあらへんでぇ。ワテは何時でも通常運転やぁ♪】


 この大ウソつき、一発シバいたろうか!


【な、なんや。やる気か?やるならいつでも相手したるでぇ!】


 言いながらいつもまたがっている白狐の影に隠れるのは止めなさい、みっともない。


「いつもそんなだったら全国の稲荷神社に誰も参拝しなくなりますよ」


 あからさまに、顔を引き攣らせて固まるのもどうかと思いますけどね。腹芸が出来ないんですか、貴女は。


【ん、んんっ。ワテの事はどうでもええやろ。タマちゃんの旦那だんさん、自分の提案てなんや】


 ハイハイ誤魔化されてあげますとも、話が進まなくて大変だよ。


「その前の前提として加護って期限があるの?」


【有る様な無い様なって事やな】


「じゃあ、付与した加護を回収する事も可能って事ですね?」


【そらぁ、ワテが好きでやったもんをやっぱ止めたうて取り上げるゆうんわ、理論上できるでぇ。

 ただな、ワテかて千年以上この国で神さんやらせてもろうとる身や。そうやすやすとあげたもん取り上げるなんてようせんでぇ。おのれ、何(たくら)んどるんや?】


「いつもながら、庶民派は柄が悪いですね。【じゃかあしぃわい!】いえね、僕はこの子たちの加護を10日間だけにして欲しいと思っただけなんですよ」


 周囲のチンピラども(同盟構成員)から悲鳴のような叫びが沸き起こる。まぁ、気持ちは解らんでもない。


【オドレ、ワテの差配になんぞ文句でもあるんかい!今すぐ外へ出くさらんかい!シロクロ付けたろうやないか!】


「いえ、大物忌神さまのお手をわずらわせるまでもございません。ここは私目が!」


 そう言って立ち上がろうとしたええと・・・許斐崎こいざき?いやキムか?とにかくそいつのすねを払ってその場でひっくり返す。鈍そうな僕の先制攻撃にチンピラどもの動きが止まった。


「僕を舐めても美味くはないですよ。

 ウーちゃん、いい加減自分の失敗を認めたらどうなんですか?」


【オドレ、何を言いたい】


「そんな怖い顔してると美人が台無しですよ、ウーちゃん。【ど、どアホゥ!女神を揶揄からかうなんぞ5千年早いわ!】ハイハイ、解ってますとも僕には『玉藻の前さん』が張り付いてますから余計な事は言いますまい。チクられたら大変な事になりますからね。

 この事が無くても同盟は年を越せるかどうかの死に体なんでしょう?そこの構成員に畑違いの神様が加護を与えたとなると、彼らは同盟解散の後は除霊業界で引っ張りだこになりますよね。技量は無くても宗派が違っても、自分たちの子飼いを守る安くて丈夫な肉の壁を得る事が出来るんですから。

 それに勝手ながら素の霊能力を全員観させてもらいましたけど、新入りさんたちは霊能は皆無でした。伊達がかろうじて霊能者と呼べる程度、残りは一生懸命鍛えれば使い道があるかもっていう程度でした。

 要は残念ながら除霊業界では生き残れる可能性が無いって事です。

 そんなアンタたちに下駄を履かせて除霊業界に再放流したところで、二束三文で死ぬまでき使われる未来しかないとなると、加護を与えたウーちゃんに恨みが向くことは必定でしょう。しかしあの猫田三郎と『クトゥルフの猫』に1週間後、闘いを挑まなきゃならない。生き残る為の加護で一生をり潰されるなんて僕は見ていられません。

 だからこその僕の提案になります。10日後、要するに年明けまで限定で加護を与えられてると稲荷神社の方から告知して貰えば、その後の人生を肉の壁として潰されなくて済みますから」


【えろうすまんかった。ワテの考えが浅はかやったんは認めるで。で、後はどないすんねん】


 全く脳筋なんだから、自分で考えるようにしないとボケるよ。・・・あっ、ウーちゃんの目が座ってきた。


「そうですね、稲荷神社にも手伝って欲しいんですけど、いいです?」


【大船に乗ったつもりで任さんかい!】


 ・・・いやいや突っ込むまい。話を詰める方が先だ。


「どうせ、ここは“京の都”の隣なんですから、除霊業者どもは独自に情報は取ってるでしょうがここはえて神社から情報を流して欲しいんです。

 先ずは『シリウスの落ち武者』に続いて今年2柱目の悪神『クトゥルフの猫』がこの街に発生した事。

 それから、ここが地元の崩壊寸前の同盟と1週間後のあの時間あの場所で雌雄を決する予定だという事。

 稲荷神社の倉稲魂命があまりの力量の差と、そののちの『猫』の神域に“京の都”を含め広い範囲が成りそうだという事を(かんが)みて同盟の主な構成員(・・・・・)に10日間の加護を与えた事。

 更に『猫』を討伐できたなら、名声が“狐塚葛葉とその一党”を上回って同盟が“16強”に戻ってくることは間違いないだろうという事。

 これだけ流せば、この子たちに来年を迎えられるチャンスがやって来る筈ですから」


 少々あざとい手だとは思いますけど、これで除霊業界も住みやすくなれるんじゃないかな?

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