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狸なおじさんと霊的な事情  作者: BANG☆
邪なる猫神と小さな番長編
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第32話 狸、首実検する

「“16強”からも追い落とされて破滅への道を爆走中っていうのが現状ね」


 端的でわかりやすい説明をありがとう、見た目は子供(中学生)中身は大人(28歳)絶賛恋人募集中の宇佐木チカさん。またの名が“裏番”か。


 所で今は、霊峰の中でややふもと寄りの山腹にある、とある寺院の本堂にいる。要するに大日本調伏同盟発祥の地で鳩首会議をしている訳だ。ここにいる同盟構成員の中で一番権力のある裏番(宇佐木)、一番調整能力のあるモブ1号(井上)、一番霊能力はある宇宙人(伊達)、一番気の小さいモブ2号(根津)そしてオブザーバーの僕って顔ぶれだ。


 それにしてもひどいな。改めて見る同盟の現有戦力となると、未だ目を覚ます気配のない猫田もどきも含めて生首ゴロゴロで終わっちまうな。


 生首ゴロゴロじゃ意味が解らないだろうから説明すると、あの悪神を倒した後僕は何の気なしに他人の霊力が見えるようになったんだ。これだけじゃ解らない?だよねぇ・・・


 実は、目を細めて目に力を籠めて他人の首のあたりを見ると、そいつが持ってる霊力の強さや傾向が見えるようになったんだ。霊力が強ければ強い程、首のあたりに光の帯のようなモノが首と体を繋いで巻いているのが見えるんだ。そしてその本人の特性が神寄りなら青っぽく魔寄りなら赤っぽく見えるんだ。


 箸にも棒にも掛からない無能力者なら生首が宙に浮かんだように見え、実力者ならまぶしい程光輝いて見えるって寸法さ。


 その伝で言えば、『使い物にならない』生首がかぶれ、鯖江、味田、平目、鮎川、許斐崎、キム。『鍛えたら使えるかも知れない』薄いベール状態が赤紫の井上、青紫の根津、紫の宇佐木。『霊能力者と名乗ってもいいかも知れない』細い紐状なのが根津より尚青い伊達と言う状態でコレのどこが霊能団体なんだと抗議の電話をガンガン掛けてみたくなるのは僕だけだろうか。一番ましなのが一番訳の分からん伊達ってもう詰みとしか言いようが無い。


 ちなみに僕たち“狐塚葛葉とその一党”(除霊業界での公式名、海外の文献には“チームシリウス”で通っているらしい。喫茶店シリウスの悪霊を退散させたチームだからだそうだが)で見ると一番霊能が低いカオルン少年ですら青紫の鈍く光る綱、アンジェが緋色に輝くマフラー、葛葉嬢に至っては直視できないほど輝く深紅の特大マフラーとなっていて霊能力の差は比べるのが失礼と言う感じですらあるな。尚、僕は自分の様子は確認する事が出来なかった。なんせ鏡越しじゃ何も見えないんだもの。


 蛇足ながらウーちゃんは、青緑色で目が潰れそうな位に輝いていた。流石は神様だね。


 でも、よくよく考えたら葛葉嬢なんて、九尾の狐の生まれ変わりだけど今は人間なんだよな?妖怪のアンジェよりも凄いってどんだけなんだよ。


 あまり大っぴらに言っていいもんでも無いだろうからちんちくりんの裏番(宇佐木女史)を手招いて診断結果を報告する。


 ちんちくりん(宇佐木女史)は仏頂面で軽く頷いた。


「コネで入ってきた連中でしたからそんなもんだろうと思っていました。

 それに元からいた連中の評価としてもほぼ妥当だと思えますから、おじさまの目は確かなものだと言って間違いありませんよ」


 霊能団体の実情ってこんなもんなのかい?このままじゃ除霊も真面まともにできるかどうかわかったもんじゃないの。


 かぶれなんて能力も無いのにどうして幹部になれたのさ?


「知りたいですか?そんな事。そんな暇あったら、修行でもしてる方がいくらかでも気が紛れると思いますけどね」


 ちんちくりん(宇佐木女史)は中々シビアな人だね。見た目は子供だけど。


 半目で睨み上げるちんちくりんの事はほっといて、この無能力者集団を1週間でどうやって死なないレベルまで持っていけるのか・・・僕だけならどうにかできると思う、1週間後もあの『猫』が変わっていなかったらね。


 でも・・・おい、ここ寺だぞ?なんでアンタらが出てくるんだよ。


 にわかに本堂の空気が清浄なものに変化し、寺に似つかわしくない奴らが入って来る。それに気付けるのがここには僕しかいないのが現状を表しているんだよね、はぁ。


 勿体ぶってもしようがない、事故照会いやいや自己紹介してみるかい?


《ウォッフォン!何やら文句でも言いたそうな顔をしておるな、玉藻の前様のアレよ。

 何はともあれこの“よの16番”が参りましたからには大船に乗ったつもりでよろしゅうございますな》


「何しに来た、陰険狐。ここは寺だぞ」


 僕が、ウーちゃんに『ウーちゃん』と話しかける度に(そうしないと一晩中枕元で泣かれる)恨みがましく涙目で睨み付けてあとからチクチクねちねち嫌がらせをしてた奴だ。


 葛葉嬢ですら陰険でしつこいとぼやいていた稲荷狐の中でも一番仲の悪いのがこれだ。


「おじさま、どうしたんですか?急に独り言なんて!」


 霊感の無い霊能力が低い人物にかかれば、陰険狐なんざこれこの通り空気扱いになる。


 僕の目線の先にいる尻尾が二又になったり三又になったりした二足歩行する3匹の狐たちも、大日本調伏同盟の精鋭の前では存在しないのと一緒って事さ。


「タナカさん、何かそこにいるんですか?」


 一番の小心者のモブ2号(根津)くんが、鼻をひく付かせて僕に尋ねてくる。うん、こりゃ絶対見えてないな。名前がネズミに似てるからって、ネズミの真似まで要求はしていないんだけどな。


 ちんちくりんが、顔どころか身体を硬直させながら硬い声を出してくる。


「え?何?お化け?・・・いやぁぁぁぁ!!あたし、幽霊とか絶対ダメなのよぉぉぉ!」


 じゃあ、なぜ同盟に入った?・・・まぁ、ちんちくりんにも弱点があるらしいって事で安心はしたが。


「いえね、ここ一年程ですけど浅からぬ付き合いをしている連中が、陣中見舞いにでもって来たんですがね、霊能が高くないと見えないみたいなんですよ。

 おい伊達、そこに何がいるか判るか?」


「へっ?阿弥陀如来が衆生救済されるのは「黙ってろ」・・・はい」


 素の能力はあっても鍛えてないとこんなものかよ。


 見えないモノ聞こえないモノを説明しても理解できるとは限らないからここは本丸を攻めるしかない訳で。


「稲荷狐が3匹も出てきたって事は、来てるんでしょ?ウーちゃん」


 締め切った本堂の中を生暖かい風が流れ、ひゅ~ドロドロドロと効果音まで付けて天井から袖を咥えて恨めしそうな表情を見せながら、ウーちゃんが白狐の横座りしたまま降りてくる・・・


 なんで神様が、怪談の幽霊みたいな真似をして出てこなきゃならないのか、僕には全く理解が出来なかった。

お稲荷様って本当はちゃんとした神様なんですよ(汗)

これはフィクションだからね。本物の稲荷神社から文句言われたらどうしよう・・・BANG?

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