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狸なおじさんと霊的な事情  作者: BANG☆
邪なる猫神と小さな番長編
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第30話 猫、チンピラを威嚇する

「要するに猫田兄弟は、職権を乱用して犯罪行為を実行隠蔽しているんですね」


 猫田かぶれが憤慨したかのように目を剝く。


「犯罪行為とは何だ!名誉棄損で吊し上げるぞ!」


 えぇっこっちが訴えられる流れ?絶対コイツの脳みそ、うじが湧いてるよ。


「これから拉致監禁を公言して実行しようとしてるのに警察が動かないなんておかしいじゃないですか。それともこのイカれた奴の方が真面まともだとでも?」


「残念ながらこの街に於いては『同盟は正義』なんだよね」


「正義だから何をしても構わないとでも?」


「この街の市長も県知事も儂たち同盟の支持によって決まっておるし、事が起こるまでは民事不介入って奴で警察が儂たちに手出しなんぞできるもんか。

 つまりは、この街は同盟の息が掛かった人間が支配していてそれを覆す事は誰にもできん。同盟がシロと言えば白、クロと言うなら黒なんだよ。

 そう、誰も逆らうなんて事ぁできないんだよ」


 猫田かぶれの鼻持ちならない得意げな表情と猫田警官の悔しそうな顔(演技の可能性ある)は僕に抵抗を失わせるきっかけになる、と思っているのは猫田兄弟だけみたいだな。


「事は起きているじゃありませんか、猫田さん!

 ここでこのおっさんを連れてかれたら我々警察の信用はゼロになりますよ?

 交番に駆け込んできた他所の人間までヤマ(・・)へ連れて行かれるようになったら、もうここには誰も来なくなってしまいますよ?

 大体同盟はもう“16強”の中にはいないんですよ?もうそろそろ同盟の支配から抜け出せてもいいんじゃないです?

 ねぇ猫田さん!今が変われるチャンスじゃないんですか?猫田さ」


 鈍い音と共に栗栖の後頭部に叩きこまれた警棒。持っていたのは猫田かぶれ。


「ごたごた御託を並べる頭でっかちはいらんよ。三郎、後はいいな」


 コイツ、これは殺人未遂じゃないのか?いや死んでたら・・・


「次郎兄さん、これは・・・流石にこれだけは見逃せないよ・・・」


「じゃあ、お前も同じようになるだけだな」


 無慈悲に振り下ろされる警棒をかわす猫田警官。そりゃあ武道有段者が採用の基準の警察官だものそう簡単には仕留められる筈が無いよな。


 その隙に交番の奥に逃げ込む僕。そこで僕はとんでもない物を見てしまった。



 奥にはロッカールームがある。それ自体はごく普通の光景だと思うんだがそこに充満していたのは・・瘴気だった。


 猫田のロッカーには、名前のプレートの脇に奇妙な模様と言うか絵と言うか何とも言えない黒く塗りつぶされた禍々しいものが描きこまれていた。


 頭と思われる部分には二つあるから目なのかも知れない大きな穴が、その下で大きく裂けているのは口なのかも知れない。頭と別に細長く塗りつぶされた部分からは5本の捻じれた棒が飛び出している。それがぴくぴく動いている、というよりどうも僕の方に向かって動き出したみたいだ。


 僕の乏しいイメージで呼ばせてもらえるならクトゥルフ神話に出てくるような『何か』だ。


 ここは新興宗教がひしめく霊峰を望む街。ネクロノミコンみたいなのを聖典に据えたカルト教団があっても不思議じゃない・・・除霊屋とれ合う悪徳警官が裏ではカルト教団を主宰していて、夜な夜な血塗られたなたを下げて憐れな生贄を探し暗がりを流離さすらう・・・なんてシャレにならんだろうが!


 慌てて表に戻ってみると、事態は一変していた。


 猫田かぶれが床に伏している、という事は兄弟げんかは弟が勝ったのか?そんなことより・・・


「ロッカーのあれは何なんですか?黒い『絵』が瘴気を纏ってうごめいてましたけど」


「“狸小路”サン、あれが『絵』だって解ってくれたんですね!いやぁ、アレを絵だっていくら説明しても本気にしてくれる人は今までいなかったんですよ!」


 僕もアレが絵だなんて本気では思っていませんけどね。


 それにしても、二人の人間が横たわる事件現場ではしゃげるアンタのメンタルの強さには頭が下がるよ。全く真面まともじゃねぇよな、アンタ。それに、僕と狐塚父(親バカ)との電話を盗聴していたな。僕はまだここでは名乗ってないのに、狸小路の名前が出てくるとはね。


「それってもしかして僕の事ですか?名乗った記憶も名乗るつもりも無いんですけどね」


「警察を舐めちゃいけませんよ。このバカのおかげで随分と泥水を飲まされてきましたけどね、俺だってやればできるんですよ、色々とね」


 そうこうしている内に表にも瘴気が流れ込んで来始めた。『絵』が僕を追って移動してきたのか?


「あの『猫』を『絵』だって認めてくれた初めての人があんただって言うのが嬉しくもあり残念でもあるんだけどね」


 意味ありげに口元を片方吊り上げて微笑む猫田警官に、何か怪しいものを感じるも口にする事は出来なかった。


 何と言うか、空気を読まない闖入者ちんにゅうしゃが交番の引き戸を開けて大挙やってきたからだ。


「部長!話はついたんでしょうか?あのハゲは・・・げっピンピンしてるじゃん!どうして・・・

 あぁっ!部長っっっ!どうしたんすか?」


 チンピラの中でもひと際(やかま)しいのが床でのびてる猫田もどきを見つけて騒ぎ出した。騒ぐ暇があるならサッサと逃げろよ!


「お前たちんとこのクソみたいな猫田総務部長様は、残念ながらまだお迎えは来ていないさ。きっとあの世からも受付拒否られてんだろうさ。それにしても俺の仲間の栗栖をやっちまってるから今度こそブタ箱に放り込んでやりたい処だがもうタイムアップだ」


 猫田警官、いや猫田三郎の後ろに寄り添うようにアイツの言う処の『猫』がゆらゆらと揺れながら僕たちを睨みつけてくる。その大きさは2メートル程にでもなっているだろうか。


 幸か不幸か猫田三郎と『猫』は僕やチンピラども(同盟構成員)が逃げ出すのを止められるような位置には立っていない。どうにか逃げ出せるかもしれないがここは確認をしておかねば。


「随分『猫』が育ったねぇ。さっき見た『絵』の時は、せいぜい10センチかそこいらだったのにもう2メートルかい?」


「おかげさんで育ったみたいだね。今までずっと、こいつらが何かやらかす度に端金はしたがねを掴まされてずっと尻拭いをさせられてたからな。

 そこのちび、忘れたとか抜かすなよ。俺はお前たちをゆるす気は無いからな」


 猫田三郎は、チンピラども(同盟構成員)の中のひと際背が低い奴に向かって罵りながら自分の優位を疑いもせず目をぎらつかせている。


 そうだったな、警察って負の感情が溜まり易くて霊障が起きやすいんだったな。


 ここにいる『猫』は、猫田三郎が溜め込んだ怒りが生んだ生霊が乗り移った怨霊って事か・・・もし栗栖がホントに死んでいたらそれも吸い込んで力を付けている事になるか・・・それこそサッサと逃げないとみんな『猫』の餌食になっちまうぞ。

主人公の年齢設定からしてもこのサイトでの受けもよくは無いだろうと覚悟していましたが、自分史上最高の読者の方がいらっしゃいます事に感謝しております。

まぁ星は・・・仕方ないですかねぇ(泣)

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