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狸なおじさんと霊的な事情  作者: BANG☆
閑話 その2

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閑話 狐、山賊に抱き着かれる

「ねえちゃんよぅ。Aを頼みたいんだけどよぅ、ついでに俺の話も聞いてくれよぅ」


 私のスカートのすそをムンズと掴んで離そうとしないニキビ顔の少年A。


 この子は、女の子に振られたと言っては3日と空けずに私に愚痴りに来る。


 私に恋愛の相談しに来られても、旦那さま以外に興味が無いと言うか旦那さま以外を知らない私で御座いますのにお返事のしようがないでは御座いませんか。それに少年からすれば私は『オバサン』と呼ばれる年齢とし、大人の女性としての魅力でも溢れてしまっているので御座いましょうか?


「ツトム!センパイに馴れ馴れしくするんじゃねぇよ!・・・人妻に色目なんて使うんじゃねぇ(ボソッ)」


 カウンターの中からの薫くんの鋭い視線に、少年Aことツトムくんは目を白黒させて手を引っ込めます。


 なんか少しかわいそうな感じが致しますね。


 まぁ何となくですが弟でも新しくできた様な感じも致しますから可愛がってあげたくなりますね。我が家の弟ヒデカズに爪の垢でも飲ませてあげたいもので御座いますわ。


 しょんぼりしている少年Aの頭を軽く一撫でするとカウンターの中の薫くんに声を掛ける。


「Aランチ一つ、3番テーブルに入りました」


「ッシャー!3にAいっちょ!」



 秋にあの悪神?を討伐してウーちゃんが力を貸してくれて喫茶シリウスが開店してもうすぐひと月。


 年も代わろうとしておりますのに私こと狸小路葛葉は、討伐で頑張ってくれた大上薫くんのこの店で住み込みのウェートレスとして働いております。


 大学を出ても養成所に通っても自分の望む職業に付く事は叶わず、最愛の夫は私に相応ふさわしい実力を付けたいからと修行の旅に出てしまわれました。


 窓際の陽だまりで硝子越しの日差しを浴びながら背伸びしているのは、夫から私たちの護衛へと付けて頂いた眷属の黒い猫又(シャム猫の杏莉)で御座います。



 オープン以来この店は、コーヒー1杯の代金すら碌々払えない様な若者が数多く来店し常連になって頂いています。


 どうやら薫くんの昔からの仲間だったらしく、あまり柄はよく御座いませんが朴訥として素直な子が多く、私の事を“ねえちゃん”と呼んで懐いてくれる可愛い子たちで御座います。


 薫くんがこの店を開くのをきっかけに辞めた暴走族の元の仲間たちだそうで御座いますが、揃いも揃って呪いを受けて交通規則を守らないと吐き気と眩暈めまいで死にそうになるから暴走行為が出来なくなったとの事でチームも解散して普通に働く若者たちになっているそうで御座いますが・・・呪いと言うよりも交通安全の祝福でも受けてしまっているような気が致しますけれど・・・稲荷神社の御利益に交通安全と商売繁盛が御座いましたのを思い出してしまいました。


 当然のことながらお祓いをしても効果は御座いませんし、時間とお金の無駄にしかならない事で御座いますから、喜ばしい限りで御座います。


 でも我が夫狸小路がここを出て行った原因に、彼らの巣窟になってるからという事も理由の一つらしかったので辛い事でもあるので御座います。


 願わくばコーヒー1杯をツケで飲まないで欲しいので御座いますが・・・



 カランとドアに付けたドアベルが鳴り新しい客が入って来られました。


 途端に身を起こし警戒をする黒い猫又(シャム猫の杏莉)


 猫を被って普通のサイズだったのが黒豹サイズに戻っています。もっとも霊感の無い方からはただの猫にしか見えないようで御座いますが。


「いらっしゃ・・・い・・ませ?」


 凄まじい臭気が私の鼻を襲って参りました。


 思わず袖で鼻を覆い理由を探しますと・・・原因は今入ってきた男性で御座いました。


 ソレは入ってくるなり、私の顔を見るやドタドタと駆け寄って参ります。


 客商売で御座いますからそれを拒否するすべは御座いません。


『いらっしゃいま「貴女のような美しい方は生まれて初めて見ました。ゼヒボクのツマになってください!ボクはアナタのためにいままでヒトリデシタ!ゼヒボクノツマニナッテボクヲシアワセニシテクダサイ!ボクハ【ガン!!】」』


 臭いに耐え切れず鼻を覆ったまま声を掛けましたら、その臭いの塊が臭いと唾をき散らしながら私の肘を掴んで参りました。


 そしてけたたましく私に食いつこうとするかの勢いで何事か叫んでおりましたが、薫くんからトレイで殴られやっと口をつぐみました。


 横では黒猫が『シャーッ!!!』とその男に向かって威嚇いかくをしております。


「なんだ!ここは客にいきなり暴力を振るうのか?警察に訴えてやる!」


「いきなりオレんトコの従業員に抱き着いてくる不審者は客とは言わねぇぞ!(ボソッ)」


「なんだと?客に向かって不審者とは何だ!」


「・・・ええと・・・不審者とは・・・」


 あら?薫君の様子がおかしいわ?


「不審者とは・・・コーヒー1杯の金も持たない・・・ツトムみたいな奴か?」


 その瞬間、店内に強風が吹きこんで玄関のドアが吹き飛んで行った。


「今のお客様・・・いや不審者は?(ボソッ)」


《しっかりしなよ、テンチョウサン(・・・・・・・)


 黒猫が2本の尾で薫くんの頬を軽く叩きながら定位置へと戻っていく。


「薫くん、大丈夫で御座いますか?」


 呆然としながら頷く薫くんの視線の先には、吹きさらしの荒れ地で喫茶店の玄関ドアを抱えながら伸びているあの男がおりました。


「ねえちゃん・・・今日はオレ帰りますね・・・カオルン隊長、すいません注文キャンセルで」


 コーヒーをツケで飲む少年A(ツトムくん)がビクビクしながらドアの無い玄関から出て行く。


 口止めしないと明日からの客足に影響が・・・


《あのドアをさ、入り口に付けときゃダイジョブじゃない?》


 猫又はアバウトすぎるから嫌いで御座います。


「でもオレなんであれを不審者じゃないって思っちまったんだろ(ボソッ)」


《だってアイツ、前にターさん♡を酷い目に遭わせようとした奴だもん》


「「えっ?」」


《ボッサボサの白髪頭で赤黒い顔、半分死んだ洞穴ほらあなみたいな目玉にボロボロの歯。

 極めつけはあの臭い!人間をたぶらかす力まであるんだもん他人の訳ないじゃん》


「じゃあアレって、おっちゃんが寝言のように言ってた大っ嫌いな野郎ナンバーワンのタナカって奴なんだ(ボソッ)」


《確か指名手配?って奴が掛かっていた筈だから警察呼べば?》


「呼ぶのはいいけどこの状況をどう説明するのさ・・・めんどくせぇぜ(ボソッ)」


 そうこう悩んでるうちに指名手配犯タナカコウタは目を覚まし這う這うの体で逃げて行きました・・・盛り塩をしておきましょう、2度と来ないように。


「センパイ・・・着替えてきた方がいいっすよ・・・臭いのが移ってるし(ボソッ)」


「えぇっ!旦那さまに嫌われてしまうでは御座いませんか!」



 私が慌てて着替えに行っている間に、薫くんが玄関を修理してくれておりました。


《第2第3のアレが来ないとも限らないんだから気を引き締めて行ってよね》


 陽だまりで背伸びをしている貴女に言われたくはありませんよ。


このタナカ氏の前世は実はある人物の前世とリンクしています。


書く機会があるかどうかは神のみぞ知る。です。

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