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狸なおじさんと霊的な事情  作者: BANG☆
喫茶シリウスと荒ぶる少年(仮)編
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第24話 狐、狸を頼る

「いい加減にどきやがれ、エロジジイ・・・責任取れよな(ボソッ)」


 うつぶせに組み敷かれて、僕にだけ聞こえるようにののしってきたカオルン少年、いや元少年、ではなくお嬢さんのお言葉に僕は全身を(・・・)硬直させてしまった。


 決して不埒な事を考えたりした訳ではないんですよ。


 ほら、この手汗、脂汗、心拍上昇、動揺なんてしていませんよ、ねぇ、していませんとも。



「・・・ええと・・暴れないで・・くださいね・・・狐塚さんの・・・迷惑・・に・・・ならない・・ように・・・」


「ちゃんと花嫁修業はすっからよ・・・末永く頼むわ(ボソッ)」


 な、何か僕、悪い事しましたっけ?


 下手すりゃ孫の年頃の子に手玉に取られてますけど?


《ターさん♡!そこどけて!》


 アンジェの呼びかけに我に返り慌ててカオルン少年、あぁ咄嗟に修正できない!とにかく薫くんを抱えて横に転がると、さっきまで二人で寝転がっていた場所に深い溝がえぐられる。間一髪で助かったよ、アンジェ。


《間一髪とかさぁ、もう残りあんまりないんだからいたわってあげないとね?》



 ・・・余計なお世話だ。



「ジジイ・・・じゃないよな・・・あ、あ、あ、あなた?」


「無理は・・しなくて・・いいんだから・・・ね」


「う、うん・・・おっちゃん・・・ありがとな(ボソッ)」


 アンジェのおかげで助かったんだけど僕の評価が上がっちゃってる?


 罪悪感が・・・半端ねぇ・・・



 そう言えば葛葉嬢は何を・・・してるんだよ。


 “連合”の養成所で磨いた美しい姿勢から投じられる札。そしてそれは、何もないカウンターに張り付いていた。


 悪霊がいない所目指して札を投げても除霊できる訳無いでしょ?


「狐塚さん!」


「私の名前は葛葉です!」


 ・・・こんな危ない時にそんな事言う余裕がよくあるな・・・


「アンジェ、狐塚さんのサポートはしてるのかい?」


《下手に声かけると、ウチに札を投げてくるから手が出せないのよ!》


 葛葉嬢の作った札は強力みたいだからアンジェも用心してるのか。


「狐塚さん、札の残数は?」


「・・・」


 この期に及んでこの強情者め。


「アンジェ、敵の残り数と札の残数は解るかい?」


《残ってる怨霊は全部で3。大ボスとその取り巻き2ね。ターさん♡の言い方で言えば特大1と大きいの2ね。

 タマちゃんの残ってる札は・・・強さから言って自分で作ったのが回復2金剛2除霊1かな。買ったって言ってた奴は回復3金剛3除霊1封印1だと思うわ》


 持っている札まで解るとは猫又め、あなどれない奴。



 それからこっちも大ボスこと特大のヤツも大きいの2つも確認できた。


 どデカい落ち武者(骸骨)と山伏もどきが2つか。

 

「狐塚さん!今金剛は使えるんですか?」


「・・・くっ!旦那さまは乙女心がお判りにならないので御座いますか?」


 今は押し問答している場合じゃないだろう?


 と、言ってる傍から横からの山伏もどき1号のサイドアタックが葛葉嬢を襲う!


 咄嗟に、手に持っていた使用済みのビニールバッグを悪霊に投げつける。


 弧を描きながらビニールバッグが飛んで、悪霊の錫杖を持つ手を削り落として彼方に消える。


「ふぅ、危機一髪ってトコか。

 狐塚さん、貴女、敵さんの場所が判らないんでしょ?

 こちらから誘導をし「旦那さま、もしかして本当に霊の所在がお判りになるんで御座いますか?」

 さっき悪霊の数やら強さやらが判ると言ってたでしょ?

 肉眼で見える範囲なら位置もしっかり確定できますよ。それどころか最初の雑魚たちのゾンビみたいな顔のドアップとか大ボスの落ち武者みたいな姿もしっかり見えて今夜はうなされる事が確定してますよ(生きてたらね)」


《だからターさん♡・・・自分から髪の事言っちゃ・・・ねぇ》


 アンジェ、お前が気にし過ぎなんだよ!



 それにしてもさっきのバッグ、悪霊を切り裂いていなかったか?


「狐塚さん、もしかして金剛符を貼って発光が終わった後でもまだ効果が残っているもんですか?」


「旦那さま、抑々(そもそも)発光って何なので御座いますか?

 まぁ、金剛符は威力が無くなった後でもその残滓が少しはあるらしいとは聞いた事は御座いますけど、実際の所は判らないので御座いますが・・・」


 そのおかげで貴女は助かってるんですけどね。


 とにかく今(わか)った事と言えば、僕に見える霊たちは葛葉嬢には気配としてしか感じられず勘で勝負しているという事、僕に判っている金剛符の効力の終了は葛葉嬢からは判らないという事か。


「どちらにしても手札がもう厳しくなっておりますのですみませんが旦那さま、敵の方向を教えて頂けますでしょうか」




 葛葉嬢が僕を頼ってくれている・・・感動に固まっている場合じゃなかった。


 単に方向を教えても遠近感も何もない筈だから、その辺も言った方がいいのかな?


 そうこう悩んでいる内に山伏ズが左右から挟み込むように襲ってくるじゃないか!


「狐塚さん!右斜め前の壁に掛かった時計の6時を狙って投げて!」


 葛葉嬢は頷くと呪文を唱え熟練の姿勢で札を投じる。


「急急如律令!」


 ・・・あの長い呪文じゃないのかよ・・・って事は購買部のお札かよ・・・


 札は右から攻める山伏の額に吸い込まれるように張り付き効力を発する。


 が、悪霊は消え去る事はなく2周りほどしぼんでよたよたと後退する。


 輪郭がぼやけてきたから効果がなかった訳じゃないだろうけど一先ひとまず小休止ってトコなのだろう。



 さて左の山伏を、と思ったトコで僕はある事に気付いてしまった。


 カオルン少年、じゃあなくてお嬢さんの上に乗っかったまんまだった。


「済まない・・・すぐ・どける・・から」


「おっちゃん・・・嫁に気を遣うなよ(ボソッ)」


 ビクンと思わず硬直しちゃったじゃないですか!


 嫁とか正妻だとか眷属だとか血の雨が降りそうな修羅場が待っていそうな言葉はモウヤメテ!


 いやいや、今はこんな事をしている場合じゃなかった。


 急いでカオ・・・お嬢さんの上からどいて左の山伏の方を見る・・・まだ大丈夫かな?


「カオ・・・じゃなくて・・・お嬢さん・・霊は・・・見えてる・・?」


「ううん・・・全然わからないんだよ・・・役に立たなくて・・・ゴメン(ボソッ)」


「狐塚さん・・も・・・見えて・・いないから・・・気にする・事は・・ありませんよ」


「狐のねえちゃんもなんだ・・・よし、まだイケるかも(ボソッ)」


 この緊急事態に何を考えているんだか・・・


「君の・・手袋を・・・片方で・いいから・・貸して・・もらえない・・・だろうか?」


「片っぽなんてけち臭い事言わなくてもいいのにさ・・・嫁なんだから(ボソッ)」


 一々胃に来るような事を言わなくてもいいのに・・・


「狐塚さんの・・援護・攻撃を・・したいんです・・・いいですか?」


 少年・・・修正が出来ん・・・


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