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狸なおじさんと霊的な事情  作者: BANG☆
騒がしき神々と守護者たる番編

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第211話 狸、匍匐前進する

遅れてすいません 予約が予約が~~~


【皆の衆、これより玉藻神社(仮)を不法占拠する逆賊顕仁(崇徳上皇)討伐戦を開始する!】


 ――――そして今僕たちは今にも泣き出しそうな空の下、金網を切っている。場所はと言えば山の中だったりする。どこの山かって言ったら七福神温泉郷の・・・なんて事は無く喫茶シリウスと現在地味オヤジ(崇徳上皇)が侵略中の名無し神社(旧東京晴明神社)を隔てるとある山の中腹だ。もちろんシリウスと神社の直線上から外した多少出入りが厳しい所にしている。

 時間が無いのにもかかわらずこんなところで何をしてるんだと言われるかも知れないけどここは我慢だ。でも本当に泣きたいのは僕の方だってのは解ってるよね?好きでこんなところにいるなんて思わないでいてくれるかい?

 なぜここにいるのかって?僕たちは別動隊として神社に潜入を試みているからね。同行しているのは眷属のアンジェ、ピュア、雪子ちゃんとちんちくりんにモブ1号(井上)

 ディーテは結界が突破された時を想定して麾下の船幽霊と共に葛葉嬢の警護の為に残してある。血の涙を流して同行を訴えて来てくれたけど時間が無いのと有能な配下を持つディーテにしかあの状態の葛葉嬢を任せられないと口説き落としてきたんだ。

 そしてカオルン少年には、僕がいない間を守るのは君以外に()()はいないと口説き落とした。ディーテは元人間だったとはいえ、神の配下も経験しているけど今じゃ妖怪だからね。ウソは()いてないさ。

 ちなみにどうでもいい話だが僕の古くからの眷属たちに亜神はいないそうだ。アンジェは猫又になる段階で人化を覚えた大妖、ディーテは人魚の肉を食したが為に人魚に変化(へんげ)した元人間で海坊主に変化する事が出来るのは恵比寿配下になった時に自力で編み出した技なだけの大妖、ピュアは風の精霊だから変化は自由自在になるけど今はまだ幼いから翼が腕になったりと中途半端なんだとか・・・番頭クラスが大妖で亜神が丁稚だとか捻じれた構成になってるけど出会った順番とかあるから仕方ない。

 

 そんな事より正直時間制限が有る中、間に合うかはわからない。でも僕たちに出来るのは自力での救出、その為の地味オヤジ打倒だ。


「ピュア、なんも引っかからんやった?」

《うーん、おとーさん、まだなにもかんじないよ》 


 まだ気付かれてないと見ていいのか、泳がされていると用心しなければならないのか・・・本隊が崇徳・恵比寿連合と衝突してからが勝負という事で取りあえずは黙々と匍匐前進みたいな事をしていくしかないな。




 どれくらい時間が経ったのか、曇り空はいよいよどす黒くなっていき僕たちは中腰で長年放置されたままで伸び放題になってる枯れ草の中を分けて進んでいる。影から覗く若草を見付けてもそれを愛でるほどの余裕も感慨も無い。ただ八幡様の結界でも進行を止める事が出来なかった葛葉嬢の事を想って空を仰ぐとパラパラと雨粒が顔を打つ。


「社長は大丈夫なんでしょうか」

「まだ間に合うくさ。こけ(ここで)ボーッてしよったっちゃ(してたって)埒も無かやろが、先ば急ごうで」


 そう、間に合わせなきゃならないんだ!そう言い聞かせて一歩を踏み出すと突然轟音とともに地面が揺れた。

 本隊が決戦を始めたんだろう。


「始まったごたっけん(みたいだから)先ば急ごうで、あと少したい!」


 降り出した春雨で煙り出した枯野原を本殿へと僕たちは走り出した。


《おとーさん!》


 ピュアからの念話を受けて僕たちは一層スピードを上げる。ようやく気付いたのか様子見をしていたのか、そんなのはどうでもいい。どうせこっちに振り向けられるのは雑魚だ。強行突破あるのみ!


 やがて僕たちの前方に現れたのは16匹の狐ども、つまりは占領側の先兵の稲荷狐どもって訳だ。


わがどんぎ(お前たちじゃ)役不足たい!死にとうなかぎんた(死にたくなかったら)大人しゅう道ば空けんや」


 奴らの返事は無言で鼻でせせら笑いながら術を仕掛けてくる事だった。


 こっちの事はともかく不良中年たち(八百万の神々)は大丈夫なんだろうか。葛葉嬢の力を盗んだ地味オヤジ(崇徳上皇)たちに力負けしなきゃいいんだけど。 

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