第210話 呪いの門番、デレる
今日も今日とて仕事三昧 休んだのは更新が遅れた3日だけ
ブラックな中小で仕事をしてると愚痴を垂れようにも周りも同じような奴ばかりで溜息しか出ない
それでも連投最終日 本日もよろしくお願いします
【他にも身に覚えがあるだろ?『呪いの森の門番』とか『暗き深淵の主』とかさ】
どっかのダンジョンにでも出てきそうな文言を呪文のように唱えるのは止めて欲しいんだけどね。呪いの森の門番とか言っても富士樹海の結界の番をしていた付喪神の狛犬たちだったし、暗き深淵の主なんて大層な名前で言ったってダム湖に巣食う大ナマズの妖怪が湖の主って呼ばれてただけじゃないの。身に覚えがあろうとなかろうと今はそんな事を話題にしてる暇なんて無いんじゃないの?
【どうやらわしの説明に不服があるようだけどね、実言うと番人も主も亜神に成り掛けてたんだけどね。あと半年も放っておいたら確実に亜神に成ってた事だろうね。もちろん両方とも殺生石の欠片が近くにあったんだから、なぜだか解るよね?】
「“呪いの森の門番”とは暴発寸前だった霊力を専務秘書にほどほどに吸い取って貰ってから管理部長に蹂躙させた後ウチの娘の闇魔法で制圧したって奴でしたか?
それから“暗き深淵の主”というのは警備部長が配下の船幽霊さんたちと嘱託の河童さんたちに袋叩きにさせてトドメに尻尾で往復ビンタをかました大きな魚だったと聞き及んでおりますが」
誰だよ雪パパに業務内容全部バラしたのって、機密情報だってあるのにダダ洩れじゃないのさ。雪子ちゃん、情報の共有は必要だけど守秘義務ってもんがあるでしょ?実働部隊じゃない雪パパとは共有しなくてもいいんだからね?僕より頼りになるってのは自覚有るけどさ。でも不良中年の追求から逃げられそうで助かったよ。殺生石って葛葉嬢と僕の前世の成れの果てなんだから因果応報で自分で決着付けたってだけなんだからそこに注目が集まるのは嫌だからさ。
抑々社員寮にしているアパートの、いやマンション?の玄関先で踏ん張っている狛犬の“あんぎゃあ”と“うんぎゃあ”や船幽霊が棲み付いてる喫茶シリウスの前にある池に新参者として入居している大ナマズの“ふなっしぃ”がそこまで格が上がってたとは僕ですら思ってなかったんだけどね?
おい、元“呪いの森の門番”よ。話題になったからってデレてんじゃねぇよ。
ちなみにこいつらは降参してきたんで僕たちの監視下で更生させるという名目で引き取っていて有限会社シリウスの準構成員になっている、もちろん“暗き深淵の主”こと“ふなっしぃ”も同様だ。ウチのシステムで丁稚なんだって事は解ってるだろうね?
それにしても大体何が何でも全滅させるとかどれだけ労力使うと思ってるのかね。恭順してくれるんならこっちに引き取って無害化した方が楽だし戦力の強化にもつながるし・・・人より安く上がるし。よく言うでしょ、win-winって奴だよ。
妖怪退治を看板に挙げてるからって全てを滅ぼすとかありえないから、平和が一番だよ平和が。
《雪子ちゃんがやれたんだもの、次は妾の番でありんすよね?》
リっちゃんことサキュバスの雪ママのヤル気発言に雪パパならずとも苦笑いをしているのは僕たち全員が彼女の実力を知っているからなんだよね。能力に問題は無くても実力に問題があると言うか何と言うか。
そんな事よりどうやって向こうをやるかって事なんだけど・・・
ちょっと待て八幡様に張って貰った結界って表の池は範囲外だったんじゃない?
「だいか表ん池ば見てきてくれんね!丁稚んふなっしぃのどげんなっとぅか確かめてくれんね!」
僕の言葉に現在更生中が飛び出していく。しばらくして慌てた様子で現在更生中が転がり込んでくる。
「専務ぅ!」
「どげんやったか?」
「裸のボンキュッボンのおねぇちゃんが気絶してたっす!」
・・・?
この切羽詰まって余裕がない時に何をホザいているのかねチミは。
「裸んねぇちゃんってや?
なんかと見間違うとらんや?」
「冗談でもなんでも無いっす!ゆきちゃん♡に誓ってもいいっす!
裸のボンキュッボンのおねぇちゃんが池のそばでひっくり返って気絶してるっす!」
「私に誓わなくてもいいですけど、なんで御主人様がそれを知ってらっしゃってんでしょうか!」
この修羅場でなんでそこに食いついてくるかな、雪子ちゃん?今は葛葉嬢の一大事なんだって事が解ってないのかい?
ほら、葛葉嬢もそんな不信の眼で僕を見ない!グルグル唸らない!カオルン少年やらちんちくりんやらの世迷い事は寛容に受け止めているクセ、こんな時だけ僕を疑わないの!
そうじゃなくて今はそのお姉ちゃんの正体が問題なんだってば!
「河間くん、そいでふなっしぃん姿はあったとね」
「・・・池の中に影は無かったっす。結界から出たら戻ってこれなそうだったから出来るだけそばに行く努力はしたっすけど店の外1メートルが限界だったっすからそれ以上の事は言えねぇっす」
「河間くん、君は裸の女性に見惚れていたんじゃないんだろうね。
そんな間抜けにウチの娘はどうかと思うがね!」
この時間が無い時に余計な修羅場を作らないで欲しいんだけど。雪パパ、現在更生中がどう思っていようと雪子ちゃんにはその気は無さそうだから安心して通常モードに戻ってくれない?
アンタがしっかりしてくれてるのがここの規律がしっかりしてるかの基準なんだからさ。
《我が君、言いにくい事ではありますがそのおなごはおそらくふなっしぃかと思われるのであります》
やっぱりディーテもそう思う?亜神に届こうかって妖怪だと人化とか出来そうだもんな・・・となるとアンジェやディーテも亜神なの?ピュアも大きいモードだと最近は翼が腕になりかけてるし・・・葛葉嬢の影響がそこまで来てるという事か。抜け殻より生身の方が力はあるだろうしある意味納得だわ。
【だから亜神になりかけてたって言っただろう?今じゃもう立派な亜神だよ。しっかり番頭殿の僕って感じだな。
あの様子だと結界の外でうらなりから精神攻撃でも受けたんだろうな。あの外道、あわよくば結界を壊させて玉藻様を攫わせようとか考えたに違いないわ。それにしてもよくアレを耐えきれたもんだ、精神攻撃を番頭殿への忠誠心だけで乗り切ったようだからね。
それにしてもこのような手に出るとは祟り神の風上にも置けんヤツよ!】
見事な祟りっぷりだと思うんですけど。耐えきったらノビちゃうんですか?
【夫君、その様子やと祟り神の本分をご存知ないと見たでおじゃるが?
・・・やはりそうでおじゃったか。
麿を例に挙げてみれば雷を落とす病をばら撒くなどという事はしても他者を操るなどという姑息な事はしなかったでおじゃる。例外として呪詛の言葉やら犯行声明やらを祟る相手に近しい者に一時憑りついて語って見せるくらいの事をしたぐらいでおじゃった。
自分の力を見せつけるための道具ではなく自分の代行をさせるなど陳腐にして卑怯、祟り神から物の怪に『じょぶちぇんじ』したようなものでおじゃる。
犬神どもを自爆させて小細工をして見せる小汚しさも神としてあるまじきそれこそ犬畜生にも劣る所業でおじゃる。
あれは闇堕ちしてるに違いないでおじゃる】
普段、公家で学者だった生前からの慣わしを守って皇族から成り上がった神や先達に遜る事が多い白塗りお歯黒が唾棄するような物言いをするだなんて相当怒ってるな。元々祟り神なのに闇堕ちって何なのよ。
【これは猶予は無いようだね。
皆の衆、これより玉藻神社(仮)を不法占拠する逆賊顕仁討伐戦を開始する!
先発は――――】
こうして何の策も無く崇徳上皇討伐戦は開始された。それだったら最初から総力戦で向かった方がよかったんじゃなかろうか?
すっかりストックが無くなり毎週金曜に更新できるか今から不安なんですけど
まぁご意見ご希望もしありましたら書いてください(出来るかどうかは問題外)
上手くいったらまた来週




