第202話 狸、言い争う
え、え~出遅れてしまいました
こそこそ投稿します
本日もよろしくお願いします
【それでも警備についておった稲荷狐らぐらいは残っておる筈だ。
それがどうした】
不良中年の言葉を合図にするかのように悪寒が襲ってきてその場に居合わせた八百万の神々はおろか痴女や脳筋オヤジまでもが騒めきだす。稲荷狐たちに至っちゃ揃いも揃って白眼剥いて泡を吹いているよ。
普段葛葉嬢の威圧に晒されてるシリウスのみんなは若干不快感を示す者がいたものの全員無事だ。
鍛え方が違うんだよ、鍛え方が。
ところで悪寒が来たって事は、ある人物の仕業だって解るよね。
そう、これは地味オヤジが何かをやらかしたって事だよ。
そうなると思いつくのは、番犬にもならないアホ狐どもを放し飼いにしている空き巣状態の旧東京晴明神社だ。
「白峯しゃんに騙されたっちゃなかとね?」
【番頭殿よ、何を根拠にそのような戯言を抜かすのかな?
玉藻殿の番でなければ疾うに天罰を喰らわしていたものを口惜しや。
虎の威を借る狐ならぬ狐の威を借る狸殿が何を根拠にわしらを見下すのかな?】
不良中年はご機嫌斜めだな。別にこんなおっさんに気に入られても何の得にもならないけどなんかムカつくな。
大体、根拠根拠って一々煩いんだよ!
「第一に白峯しゃんはあそけ潜り込もうてしよった。
そん時は、首座しゃんたちのゾロゾロおったしぇんいつン間にかおらんごつなったろうが。
そいば皆しゃんは力んのうなって帰ったち言いよったろうが。
ほんなごて力ば使い果たしておらんごつなったっちゃろかて思うたったい」
僕の説明に黙り込む八百万の神々。
返事も来ないので取りあえず先に進む事にしよう。
「白峯しゃんは、あそけ潜り込んでなんばしようち思ったっちゃろか。
あそかぁ葛葉しゃんの社にすって言いよったろうが」
不良中年が不承不承頷く。自分で葛葉嬢にそう言ってたんだから間違いないよね?
「そいぎんそけはあん神しゃんの力ん源ん葛葉しゃんのモンの溢れっとでしょうもん。
白峯しゃんの次ん首座ば狙うとぎん絶対欲しかとでしょうもん」
【先生!そうは申されましてもあの時、間違いなく四国に気配は戻ったので御座いますよ?】
「お諏訪しゃん、そいはどがんやろか。
あんお方にでん眷属っておらすとやろ?」
【・・・犬神、で御座いますね。
でもそれが何か?稲荷狐より使える奴らとは寡聞にして聞き及んではおりませんが】
【タケ坊、ワテんトコのボケナスとうらなりんトコのゴミカスを比べるゆうんも肚立つんやが?
自分トコの蛇かて恵比寿のスカタンを見失うとるやないけ!】
ウーちゃん、出番が無いからって割り込まないで欲しいんだけどね。
「ウーちゃん様、四国の妖怪と言えば阿波の化け狸に讃岐の子泣き爺辺りが有名ですけど犬神ってその上の位なんですか?」
【なんやワテの存在に関する重要事項の確認を邪魔せんといてくれへんか。
まぁおっぱいちびの顔に免じて答えたるがな。
犬神が化け狸より上?ハッ!そないな事ある訳あらへんがな、知名度で負け、実力で負け、頭数で負け。
うらなりの眷属やあらへんかったらとっくの昔に“れっどぶっく”に乗っとるわい】
レッドブックって事は絶滅危惧種扱いなのかよ。
妖怪自体が絶滅危惧種なのにその中でのそれってほぼニホンオオカミ状態って事だよね。
「そいはどがんでんよかっちゃなかね。
おいは白峯しゃんのなんかトリックばつこうてアリバイ工作しよらしたっちゃなかかて思うとっとばってんが思い当たらんね」
【我らを出し抜いて騙しおおせるなど万に一つも有り得ないと思うのでございますが】
【タケ坊、お前は疑う事を知らんのかな?それこそそのタヌキが狸たる所以だと気付かないとはな・・・
わしらの眼を誤魔化す方法などこの世に存在する筈が無いじゃないの。目を覚ませよ、ったく】
不良中年は、僕の話を聞く気が無いらしいな。
「弊社ん宇佐木の聞きよった妖ん話はどがん思うたね」
【ふん?どうと言われても単なる世話話じゃないの?】
「おいには犬神の白峯しゃんの庇護でようよう生き延びとうとの知れたとばってん?そうは思わんやったね。
そいぎん犬神の白峯しゃんの為言うて無茶すっとの眼に見えてこんね。
たとゆるぎん白峯しゃんの握っとう殺生石ん欠片ば白峯しゃんの気配の濃か所縁ん場所で暴発させて見すっとか」
【そんな事をすりゃ自分の身が危ないじゃないか。特攻隊か自爆テロじゃあるまいし、する意味が解らないよ】
静まり返った小火の消えた店の裏手で対峙する八百万の神々と僕たち。不良中年はあくまでも僕の考えを軽視したいようだな。
そしてさっきよりきつい悪寒がやってくる。明らかに崇徳上皇は力を増している。
「とにかく話ば次に移すばってん恵比寿しゃんがあんタイミングで来たとは偶然やろか?そいが第二たいね。
もし白峯しゃんと恵比寿しゃんの連携ばしとったぎんどがんね」
【そんな事はありえんよ!
お前は空想と現実の区別もできんのかい!】
ファンタジーの住人が自己否定とは片腹痛い。
「なんば甘かこつば言いよらすっちゃろかね。
葛葉しゃんの様子ば見てでんそがんこついゆっちゃろか?」
僕の傍らには力なく伏せる九尾の白狐の姿があった。
予定は閑話を二つ挟んで最終章の予定なんですけど難産でして少々遅れる事も予想されてしまいます
出来るだけ頑張りますが遅れたらすいません
ではまた来週(あっ、又プレッシャーが・・・)




