第194話 狸、解散を宣言する
新年二日目、今のところ平穏です
何はともあれ本日もよろしくお願いします
【女、よくもわしに刃を向けおったな!その方、わしが直々に今すぐ祟り殺してくれようぞ!】
自分が出した命令で店に異変が起こっている事を棚に上げてやられた事にだけ反応するとかこの不良中年って本当に出雲の首座なのか疑わしいな。
そんな事よりさっさとみんなを元の場所に返してくれたら事態の収拾も早いだろうにさ。
「はらかいとっとこなんばってんくさ、そもそもん原因はそっちん不手際じゃなかとね?
八幡しゃんのおいたちん都合ば考えぇじこけ集めたとでん首座しゃんの儀式ば強行しようちしたしぇんやろ?
なんで強行しようちしたとかち思うたとはおいのゆうこつば聞かんしぇんやったろうが。
ゆうこつばなんで聞かんやったかちゅうぎん、いつまででん名前ば教えて貰えんやったしぇんたい。
そん名前ばおいたちに伝える筈やったとはお諏訪しゃん、あんたん仕事じゃなかったとね?
そん挙句においたちは遠かとけ放り出されて我がどんの店んどげんなっとっかもわからんごつなっとっとたい。
除霊やらで出動しっとったもんでん途中で仕事ば放り投げとっごとしか見られんめぇ。
こいでおいたちは火ば出したっちゅうこつで世間の信頼やらばうしのうて、そん上仕事ばほっぽいだしたて評判の立つとやろうな。
馬鹿んごたったい。
もうやっとられん。
みんな、もうこげん稼業はせんちゃよかろう?
金輪際廃業たい。
帰らしてもらうけん、今後一切呼ばんでくれんね】
ここまで言っても動かないんだったら本当に廃業してやる、除霊も喫茶店も何もかもだ!
【いやいや番頭殿、まだ火事になったと決まった訳でなし、仕事を投げ出したと決まった訳でなし、そう結論を急がれなくてもいいじゃないの。
わしはただ神としての尊厳を守りたいだけでだね「そいでウチんかわいか娘ば殺すち言うとやったら問題外たい」
いやだからあれは言葉の綾と言うか売られた喧嘩に反応してしまったと言うか】
全くお話にならないね。
僕は、黙ってみんなに合図をすると稲荷狐しかいない参道を歩き始めた。
当然有限会社シリウスの社員たちは僕に続く。
ここから喫茶シリウスまでタクシーを飛ばしても30分、他の現場だって2時間以上かかるだろう。
それでも最後の尻拭いはやらないといけない。立つ鳥跡を濁さずって奴だ。
後ろから首座様が何か言ってらっしゃるみたいだけど、廃業する霊能業者にとっちゃ何の足しにもなりゃしない、無視だよ無視。
「社長、勝手なこつばかいしてすいません」
【妻は夫に従うもので御座います。
それに社長なんて柄でも御座いませんでしたから丁度良かったと】
「店・・・どうなっちまったかな(ボソッ)」
「毘沙門の方で営業するごつしゅうか?」
「いやそれやっちゃうとさ、お絹の立場ってもんが無くなるじゃん・・・せっかく自立したんだしもったいないじゃん(ボソッ)」
生き甲斐の店の事を思いながら温泉を仕切る化け狸の心配までするとかカオルン少年の成長には目を見張るもんがあるな・・・僕が年を取るのも当たり前だよ。
「清算するとしてどの物件を手元に残されますか?」
【旦那さまのお考え通りになさって結構で御座います】
だから無条件に丸投げするんじゃありませんっていつも言ってるでしょ?
「退職金の手当てでんせんばけん手元に残さる物ってほとんどなかちゃなかろうか?
裸一貫で人生やり直すしかなかろ?」
我ながら世知辛い話だね。
【ちょっと待てって言ってるだろーが!!!】
いきなり祟り神の顔して前に回り込まないでくれる?
大黒様が段々気の毒になってきたのはアタシだけ?
初詣で罰が当たらないようにお願いをしてきたのでまた明日




