第183話 狸、首座を狙う
世間様はお休みでございますね 当然こういう書き方をする位ですから今日も仕事ですよ、ええ
愚痴っても仕方ありませんので本日もよろしくお願いします
(多分)大国主命がゆっくりと顔を上げる。
瘴気を振り撒き出してかれこれ1時間が経ちようやく動いたところだ。
その顔には現れた時の穏やかな微笑みは無い。
あるのは、青筋を立て深く眉間に皺を刻み込み食い縛った口元から太く反り返った牙が覗く憤怒の表情だけだった。
親にそうなるように仕向けてしまった子のお諏訪様は既に避難してこの場にはいない。本人は責任を取って刺し違えても止めるとか言ってたけど面倒臭いんで八幡様に連れて行ってもらった。
その代わりと言っちゃなんだけど白塗りお歯黒が祟り神の先輩の瘴気に当てられて真っ青になりながら僕の傍に来ている。
【これは豪い事になったでおじゃるな。
さりとて麿は玉藻様と番頭さんの後見人でおじゃる!ここで逃げる訳には行かないのでおじゃる!】
気持ちは有り難いんだけど、死にそうな顔で言われるとこっちも余裕がなくなるんで勘弁して欲しいんだけど。
「天神しゃん、無理せんちゃよかとばい?」
【何を言うでおじゃるか、後見人を申し出た時からこれくらいの覚悟はしていたでおじゃるよ。
八百万の神々の首座におわす方とて現役を引退されてどれほど時が経っていると思うのでおじゃる?
現役の祟り神として負ける筈など無いでおじゃるよ】
言葉は威勢いいけどブルブル震えてますけど?・・・でもちょっと待って?八百万の神の首座?
豪いトコに喧嘩吹っ掛けちゃったんだね、僕・・・でも神々の首座って天照大御神じゃないの?大国主命じゃないんじゃないの?
「八百万ん神々ん首座っちゃアマテラス様じゃなかと?」
【それは深い事情があるのでおじゃるよ。実は・・・】
【菅原の、アンタは人が好過ぎるっていつも言っとるだろうが!
一々人間如きに説明する必要などあるか!】
「そいけんおいには名乗るつもいはなかって言うこつたいね」
瘴気をものともせずに仁王立ちで大国主命(仮)に面と向かう僕に、正体不明の神は(いい加減に名乗れよ)憤怒の顔を歪ませる。
【物事には手順と言う物があるだろう?
わしが直に名乗ると言うのはわしの格がお前さんと同等以下になるという事なんだよ。
それとも何か?八百万の神々の首座に就きたいとでも言うのか?もしそうなら喜んでお譲りするさ。
そう、わしは「専務~~~ふしんしゃですぅ~~~~!不審者を確保しましたぁ~~~~~!」
えーっくそ!もう少しで重荷を捨てられたのに!】
どうやら僕はとんでもない重荷を背負わされるのを回避したらしい。こっちとしては神々の流儀もしきたりも知らないんだから命拾いをした、と思う。
声を掛けてきたのはモブ1号で何かを引きずっている。その後から暴れる何かを引きずりながらモブ2号と現在更生中が付いてきている・・・この中じゃモブ2号が一番格上だろうがしっかりしろよ。連中が来た方向はと言えばさっきから色々噂していた廃棄した摂社があった方じゃないか。
「井上くん、どがんしたとね?そぎゃん汗ば掻いて」
「・・・どがん?そぎゃん?あぁ意味が解んないよぉ。
とにかく、あっちの廃材置き場付近で不審者を三名、一人は人間じゃなさそうですが確保してきました!」
モブ1号が引きずっているモノを見て白塗りお歯黒と謎の祟り神(きっと大国主命)そしてウーちゃんが眼を見合わせる。
よく見ると僕にも見覚えがあった。
【【【「恵比寿(様)じゃないの」】】】
大柄なモブ1号に引きずり回されそれでなくても尾羽打ち枯らした感が半端ないその姿は、土に塗れ至る所で破れた元は白かったはずの服も千切れて裸同然のかつての豊漁と繁栄を司っていた元神とはとても思えないものだった。
残りの二人ってどうせ一人はあの山賊野郎だろう。あともう一人ってのは?
出オチでやられる恵比寿様登場でいつもながらの展開が待っていますよ
好き放題書かせて貰ってあれなんですけどお祓い受けに入った方がいいんだろうか?
そんなこんなでまた次回




