第176話 狸、喧嘩を売る
11月にはいって秋めいてきてとっても気候が良いのは年寄りには嬉しい事です
神ころがしと言うよりも嚙みつき屋の本能のままに行動するおっさんが今回の見どころ?
今のところ好調でほっとしながら本日もよろしくお願いします
【ほう、朕が讃岐院であるとな?そこまで言うのであるなら構いはすまい】
なんぞと平凡な顔をしてどこにいても目立て無さそうな陰気な(多分)祟り神のおっさんがじめっとした笑いを浮かべるのを見て、コイツとは馴染めそうに無いなと確信をした。
「だってここに摂社ば出しとうとって祟り神ん中ぎんた天神しゃんに神田明神しゃんに大黒しゃんぐらいで白峯しゃんなんてお呼びも掛からんやったくらいしぇん妬み嫉みで爆発しながらきよろうち思うとったもん」
僕は、ヤツのじめっとした笑い顔が屈辱に歪むのを確実に見た。ザマァ見やがれ、舐められて堪るかい!
【ち、ち、朕を、朕を、朕を愚弄しやるか!】
おうおう、青白かった顔が熟し過ぎた柿じゃあるめいし赤黒くなってんじゃねぇの。チンチンだかちん〇こだか知らないが顔に自主規制のモザイクでも掛けた方がいいんじゃないのかい?
「名乗らんごたっ相手にどがん思われたっちゃ構わんくさ。
ただ、摂社も出しえんやった貧乏祟り神ぎんた讃岐院ぐらいしかおらんって言いよっだけのこったい」
これぞ神をも恐れぬ罵詈雑言、沸点低いコイツだったら暴れ出してもおかしく無いんじゃね?これで実は大黒様でした!とか言わねぇよな?
ここでウーちゃんがインターセプト。
【ここまで言われても黙って神域に唾つけようとか姑息な事をするんか、オドレは?
摂社を出しとらん辺りで何か企んどるやろうなぁとは思うとったが人間に言い負かされよるようじゃそれも無理やのう。悪い事は言わん、大人しゅう帰ったがええんとちゃうか?】
ウーちゃんに上から目線で諭されて信号機みたいに顔色を変えている地味オヤジ。いい加減に名乗れよ。
それにしても摂社を出していないのは乗っ取るつもりだったからとか中々に曲者だねぇ。ただそれも煽り耐性がなさ過ぎて失敗しちゃったみたいだけど・・・一つ間違ったら濡れ手に粟で地味オヤジが高笑いをしてたかもしれないんだけどさ。
ちょっと待て、大黒様こと大国主命の先祖には天照大御神を天岩戸に引き籠らせるは八岐大蛇退治で暴れ回るはの暴れん坊素戔嗚尊もいるじゃん、あの家系って天皇家の祖だったんじゃなかったっけ?・・・あっちもしっかり祟り神だし関係のある摂社ってなかったよな。
天皇の一人称の“朕”を使ってるから崇徳上皇だと思ってたけどもしかして間違ってた?
いやいや、素戔嗚尊だったらさすがのウーちゃんももうちょっと気を使った喋りをする筈だし・・・でも天皇家の祟り神って崇道天皇とか弘文天皇とか他にもいっぱいいるんじゃなかったっけ?謀殺されたり敗死したりあそこの血筋って室町時代までそんなのばっかしだからどろっどろだったりするんだわ。
あらいやだ、こりゃ祟られるぞ?
僕が色々余計な事を考えてる内に襲撃者はいなくなっていた・・・こいつは助かったのか?
【何とか帰ったようやな、タマちゃんの旦那さん、自分が上手いトコあ奴を煽ってくれて気ぃ逸らしてくれたさかいこの神社を使う前にぶっ潰さずに済んだわ。
あんがとさん】
「うんにゃ、いきない頭ごなしに来たもんけんちぃと逆ろうてしもうたったい」
僕の返事にウーちゃんは頭を抱える。
【なんや、考えなしにやっとったんかい!
新しい神社に魂入れるんは、きっちり集中してせなあかんやったさかい、アレを怒らせたんは正解やったとはいえ偶然やったんかいな!
いっちょ間違うたら富士山からなんから全部の山が火ぃ噴いてこの国が丸ごと海に沈んどったかもしれんのやで?少しは自重っちゅうもんを覚えてくれんかいな、ったく】
「自重したぎんあんおっさんはどげんなったとね?」
【・・・この神社を乗っ取ってタマちゃんにちょっかい出して・・・タマちゃんの逆鱗に触れてこの世が終わっとるやろうな】
苦渋の表情で未来を予測して見せるウーちゃんを見て胃薬でもいるのかな?なんて心配してみる。
だってどっちに転んでもアウトだったんなら、これで結果OKって事じゃない?
「最善の結果になったっちゃけんこいでよかろうもん」
【ええ訳有るかい!
いつでもどこでも神さんに喧嘩ばっか吹っ掛けくさりよって!
少しは自分の影響力っちゅうもんを自覚せい、ゆうとんのや!】
「ばってん名乗ってこんとよ?そがん卑怯者に手加減する意味あんね?」
そうだ、僕はあの地味オヤジの名前を未だに知らないんだから当然だよね。
崇徳上皇時間切れでまさかのリタイヤ
でも今回これだけじゃ終われません
とか引っ張りながらまた次回




