第175話 謎の悪霊、イキる
忘れてません!ちゃんと予約入ってるでしょ?
色々突っ込まれる前に
本日もよろしくお願いします
それにしても何でこの神社に稲荷、天神、八幡、諏訪、弁天、毘沙門なんて僕たちに所縁がありそうな摂社が集まったんだろうね。
明治の神仏分離令でごく一部を除いて八百万の神々と仏神が一緒に祀られなくなった筈なんだけど。
それにこいつ・・・もしかしてこの神社って葛葉嬢の為のヤツとか言わねぇだろうな。
今更ながらスマホでマップを開いて現在地を確かめる。そこから北にある山を越したら・・・喫茶シリウスだよ。道なりだと山すそを縫ってくるし、市も違えば県も跨いでいたから今まで気が付かなかった。まさか・・・な?
いや『あの山がジャマ!』って何度か言った覚えがあるよな・・・バカだ、僕って。
神社ってのは拝殿の他にご神体が祀ってある本殿とか奥の院ってのが大抵ある。太宰府天満宮みたいに道真公の墓の上に神社を建てたからいきなり本殿なんてのは例外もいい所だよ。真北の一山向こうとか穿ち過ぎじゃない?・・あとで地脈でも調べてみるか?いや、結果が怖い・・・
って事は、御神体は葛葉嬢本人って事?本人に何の了解も得ないで・・・人がいいからウーちゃんにいいように丸め込まれるんだろうなぁ・・・・ウーちゃんとかヤサカ様とか弁天様とかが女子会よろしく寄って集って言い包める様が目に浮かんじまうぜ。それを防ぐためにその状態の所に混ざるってのは・・・大分慣れたとはいえ辛いなぁ・・・神様とは言え女性と話すのはやっぱ・・・
【―――ご不満とあらばまた先日の霊震を起こして進ぜましょうぞ!】
【何寝ぼけてけつかんねん!今ここでなら縛りがまだないさかいやり放題やれるやないかとか思うてけつかるのやろ!
そないなズル認められる訳無いやろ、このすっとこどっこい!】
ウーちゃんの言い草からすると、まだ誰の神域とも定められていない領域で力を揮われたら、そこはそいつに不法占領されちまうって事なんだろうか?それとも縛りなく力が使い放題になるとか?どっちにしても碌な事じゃないな。
「おい、関係あんね?」
僕の素朴な問い掛けに固まるウーちゃんと崇徳上皇(推定)。
【あんさんは関係者と言えば関係者、せやけどこの場におるんは不都合や。
とりあえず帰ってぇな】
【下々の身で朕を見る事が出来るなど一生に一度、いや百生に一度も無い事よ。
黄泉の国への手土産と思うて見ておればよい】
相反するご意見ありがとうございます。ウーちゃんは葛葉嬢絡みで大事になるのを恐れて帰宅要請、崇徳(仮)は冥土の土産にしろと殺す気満々。
さて、どうした事か。
なぜ祟り神ナンバー3(仮)がここに湧いているのか。元々それが問題だよね。
「こけは天神しゃんと神田明神しゃん、そいから大黒しゃんの祠もあっとばってん構わんちゃろか?“讃岐院”しゃん」
もし違ったら一大事になるとはいえ、もうここまで来たら大して差は無いから一発勝負に出る事にしよう。
白塗りお歯黒こと天神様、新皇こと平将門、讃岐院こと崇徳上皇は三大怨霊などと言われる代表的な平安時代の祟り神なのに対して大黒様こと大国主命は神話時代で最もポピュラーな祟り神だったりするんだよね。
白塗りお歯黒とは贈り物をしあう間柄(いらなくなった牛とか貰っても嬉しかないが)、新皇様ときたら神田明神にも寄せ付けてくれない(参拝に行こうとすると必ず交通機関がマヒをする、あるいは近所で大事件が発生して非常線が張られて近づけない等々)でも摂社だけは八幡様より早く決まった(稲荷、天神、諏訪、神田明神、八幡、大黒、白髭の順番だった)。
それに対して崇徳上皇の白峯神社はノーリアクションだったそうな。
シリウス出入り禁止のハゲタ彦の白髭神社が7番目で白峯神社は興味ないとか、殺生石の絡みとかで考えたら有り得ないようだけど事実はそう。
尤もこの神社が葛葉嬢を祀るもんだと仮定しての考察だけどね。
【ほう、朕が讃岐院であるとな?そこまで言うのであるなら構いはすまい】
僕の問い掛けが地雷だったのかな?
なんの特徴も無い平凡な公家は意味ありげにほくそ笑む。
ヤバい予感しかしないよ。
色々調べてたら崇徳上皇の“讃岐院”って呼び方って後鳥羽上皇側からの蔑称なんだそうで
本来なら“崇徳院”らしいそうですけどたまたま手に取った資料が讃岐院だったもんでそっちにしちゃってます
まっ自分で卑下して蔑称を名乗ってるって事で納得してもらうしかないかと祟り神の皆さんは自虐癖が有るという設定で我慢してください
さぁ何もなかったかの如くまた次回




