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狸なおじさんと霊的な事情  作者: BANG☆
閑話 その13

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閑話 白い烏は信楽焼の夢を見るか 後編

昨日振りの投稿でございます


何となく話が膨らんだと言うか間延びしたと言うか・・・それが味なんだと強弁して本編に入りましょうか


大嫌いな冷やし中華を突きながら(ホントに突くだけ)本日もよろしくお願いします

「討伐の危険が迫っています、早くお逃げになってください」


《これまでの報告ではないのでありんすか?》


 暢気な母親にいら立ちを隠せない娘を見て、父が助け舟を出す。


「いきなり本題に入っても理解できるものではないんだよ?

 まずは説明をしないと、理解ができるようにね」


 父の言葉に、少し考える間を置いて娘が口を開く。


「私がご主人様、番頭サンの眷属になった事から話を始めましょうか。

 お父様のおかげでここからヒトの世界に行って私は警察官になったの。

 これは手紙に書いてた事もあるからみんなも知っていると思うんだけど、そこで何があったのかは書かなかった、いえ書けなかったの。

 だってそのまま書いたらインフル(インプの執事)が喜び勇んで私を奪ってアッチへ連れて行こうとしたでしょうから」


《お、襲われたのでありんすか?》


「もう、お母様ったら慌てないで。

 私の経歴は偽装していた事もあって誰からも注目は集めなかったの。これはお父様のお陰よ?

 でも、血筋を隠しした事や一人暮らしだった事から一部の上司や同僚から嫌らしい視線を集めるようになってしまったの。当然、私を守ってくれる人もいない所に行ったんだからそうなる事は覚悟の上よ?

 でもそこで私は能力に覚醒しちゃったの、チャームよ」


 その言葉を聞いて母親は自分の血統の正当性に確信を持った。血が混ざっても真祖に近しい家系なら能力に目覚める事が多々あるからだ。


《目覚めたのなら戻ってくればよいのでありんす》


「それがそうも言ってられないの。

 チャームが発動するタイミングがランダムなの、全く法則性が無いチャームなんて騒動の元でしかないわ。

 案の定、私に色目を使ってた連中が就業中でも関係を迫ろうとするようになって身の危険を感じた私は、外回りになったの。事務職じゃ逃げ場がなかったから。


 そうやって外回りに出るようになって担当するエリアの中に一軒の異様な喫茶店があったの。

 何が異様かって言うと普通喫茶店ってシックな雰囲気を出す為とかで割と暗色系のインテリアだとか内装だとかしてるじゃない?

 あ、お母様は下界を知らないからお父様、後で説明して上げてくださいね。

 その店は、白木作りのインテリアで魔除けの札が四隅に貼られてちゃんと結界が発生しているような所なの。

 普通だったら霊障の被害がありそうな場所でも注連縄(しめなわ)一つ用意されていないのが当たり前なのよ?

 そして従業員には物凄い霊能力者がいて料理を作ったり、他にも妖怪たちが接客したり警備をしたりしてるの。よくよく見たら八幡神まで給仕の真似事をしているのよ、信じられる?」


《まさかそれがチームシリウスの本拠地“喫茶シリウス”でありんすか?》


 娘は母親に深く頷くと言葉を続ける。


「そして普通を(よそお)って警邏(けいら)(パトロールの事)に訪れた私に八幡神から他の者にも聞こえる様な音量でこう言われたのです。

『烏魔』と」


 思わず立ち上がる母親に、自分が抱いた焦燥感がいくらかでも理解できたのかもと思いながら娘は話を進める。


「明らかに私の正体に気付いている八幡神が、チームシリウスにあるいはあの業界(霊能団体たち)にいつ正体をバラすのかと思うと夜も眠れない日々を過ごした果てに私が出した答えは、番頭サンの眷属になる事でした」


 部屋の外からガタンと大きな音が響く。話を盗み聞きでもしている者がいるのだろう。


《なんと早まった事をしてくれたのでありんすか!

 八幡神の口を塞げばよい話ではないかぇ。

 それならインフルにでもコロナにでも言いつけてしまえば済む事でありんす。それなのに》


 母親の過大な身内への評価に娘は頭を抱えたくなった。


「喫茶シリウスには八幡神の他にも諏訪神も来訪する所なのにインプやセイレーン程度の力で勝てる筈など無いでしょ?

 ()()にいる神に魔の力がどれだけ通用するものか知らないの?」


 白木造りで魔除けの札が張られている所ではインプやセイレーンがいかに強かろうと力が半減して不利だという事を世間知らずの母親は知らないのだと娘は思った。


《ナイトメアパレスにやってきた自称勇者たちを葬ってきたのはあの者たちでありんす!

 東の果ての神如きに後れを取る二人では無いのでありんす!》


 ナイトメアパレスとは母親の実家でありサキュバスたちの根城でもある魔界屈指の城塞である。

 当然、地の利は魔の者にあり喫茶シリウスとは発揮できる力に雲泥の差がある事を母親は理解していなかった。


「でも向こうを出奔して何年経ってるの?力は鍛えてないと衰えていくものよ?」


(わらわ)から見ればあの者たちの力量は一切衰えてはいないでありんす!》


 娘は母親の言い分に蟀谷(こめかみ)を揉みながらもホッとしていた。

 元々管理能力の無い母親が制御していた訳では無い事が立証されたからだ。

 母の力自体は、父との日頃の営みの中で(はぐく)まれて衰えを知らないのだがこの際関係はない。


「お父様はあの二人はどう思うの?」


「都合のいい時にだけ軽い神輿(みこし)扱いされてるだけだからねぇ。

 普段は話す機会も全くないし、何をどこでやっているかはさっぱり判らないな」


 父親の関与も無し、という事は一家で生き延びられるチャンスが残されているという事だと、そっと胸を撫でおろす娘だった。


《それで妾たちは誰よりどのような容疑で討伐されようとしているのでありんすか?》


「殺人及び殺人教唆(きょうさ)だと思うわ」


 キョトンとした母親の顔を見て、無知は罪だが殺されてしまうほどの罪でも無いと思った。

 父への愛だけで生きている純粋な存在だと。


「話が見えないんだけど、雪ちゃん、誰が誰を殺したとか誰が(そそのか)したのかとか解るかい?」


 娘はドアの方を見やって(おもむろ)に紙に書きつける。


『インフルとコロナが通りすがりの一般人を無作為に殺している。

 それをお母様が指図してるってタレコミがあったの。

 でもお母様は濡れ衣だと思う。だってお父様と一緒にいたくてここまで来たのにお父様が悲しみそうな事をさせるとは思えないモノ。

 きっと、あの二人が自分の力の維持と誇示の為にやった事、そしてここにいられなくてもナイトメアパレスに戻れば済むぐらいに思っている。

 あの二人って人間が大嫌いだから』

「それが解れば苦労しないんじゃないかしら、私が警察にいた時も関係ないものを散々探しまくって捜査が終わるなんて事がしょっちゅうだったから」


 ドアの外向けに適当な事を言いながら書いた紙を両親に見せる。


 母親は息をのみ血の気が失せて失神し掛けるも、父親がしっかりと抱きとめて音を立てさせない。

 父親の表情は憮然としている。

 妻の部下たちの勝手な振る舞いが自分たちに影を落とすなんて認めたくないから。


「サキュバスは血生臭い事が苦手なある意味平和的なモンスターだから殺人云々(うんぬん)でウチに来るのはお門違いなんじゃないかな?」


 外の連中に気付かれないよう、失神し掛けて急に黙り込む妻の代わりに声を出す父親に感謝の意を示しながら娘が紙に更に書きつける。


『ここを捨ててシリウスに身を寄せた方がいいと思うの』

「ウチの会社に事件の捜査の依頼が来たから番頭サンと奥様の社長が直々にここに来る筈よ。

 私はその先遣隊としてやってきたの。

 こういう時、前職が警察官だと体よく()き使われちゃうのよね」


 外の気配が消えた。どうやら身一つで逃げるか捜査が及ぶ前に相手を消すかの選択をしたようだ。


「好きじゃなかったけどご主人様の手を(わずら)わせる事なく逃げて欲しいな」


 しかし、娘の願いは通じなかった。


 自身の力を誇示し眷属の契約を白紙に戻そうと暗殺を試みたモンスター二人は、本丸の夫婦に辿り着く事なく夫の眷属たちの繰り出す風魔法や水魔法に翻弄され、その果てに妖力を搾り取られて滅びてしまった。


 全ては娘の見立てた通りでしかなかった。


 その後、サキュバスとその夫はシリウスへと辿り着き、ウェブサイトの管理者として貢献していく事になるのだが、それはまた別のお話である。

主要な登場人物の一人称や言葉遣いをできるだけ変えているのは結構大変なんですよ


会話が続いた時に誰が喋ったか解りやすいようにとかいろいろ考えた結果なんですけどね


よく漫画で暗闇の中で吹き出しだけがある時に誰が喋ったか解るようにクセを付けたりするじゃないですか 昔から好きなうる星やつらだったら『だっちゃ』が付いてたらラムちゃんだとかみたいな、ね?


それとやたらルビが多いのも難しい漢字で文章書いて一人悦に入ってたって読み手が解らないと同じだって思いがあるからなんですよね


全く本文に絡まない後書きですいません


そういう話は置いといてまた来週、見に来てね

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