第163話 梅の精、大いに語る
さてさて天神様の結界“春の園”に神隠しにあっているシリウス一行ですが無事に抜け出せるのかどうか
リアルはそろそろ梅雨入りしそうな今日この頃ではありますが本日もよろしくお願いします
【旦那さま・・・どうしましょう】
どうしましょうかね?
「まずは天神シャンのお話ば聞いてからじゃなかぎんたここからずっとも素直にシリウスにきゃあっともこたうっこたできんしぇんね」
ううむ、方言でしか喋れない!これは白塗りお歯黒の祟りかなんかか?
【みっちゃんの助けをするっちゅう答えは無いんかい!】
ほう、ウーちゃんは白塗りお歯黒とグルかい。
「いきない神隠しにおうて情報の漏洩がどげんとかいわいたっちゃ強制収容ばさるっ理由っちゃおもえんし体のよか人質ば取られて作業ば強要さるっごたっ未来はまっぴらごめんですけん」
お諏訪様と八幡様の顔が曇ってる・・・売られた喧嘩は買うんですから!貴方たちも知ってるでしょ?・・・まさか意味が解んないとか?
その辺を漂う白塗りお歯黒も苦虫を噛み潰しているね。でもさ、いきなり拉致してから働けって、僕たちは異世界の勇者様御一行じゃないんだからね?
誰が素直に言う事なんか聞いてやるもんか!
【現世の崩壊に繋がりかねない大事でおじゃるのに協力してはくれまいかのう?】
「そいぎんなんで理由も言わんと呼び出して神隠しにすっとね?」
【あ~あ、兄貴がこうなっちまったら梃子でも動かねぇっすよ?】
八幡様、余計な一言ありがとう。帰ったら神棚の榊を全部枯れた奴に替えたげるから覚えといてくださいね。
【事が漏れれば現世が大騒ぎになるのは目に見えておじゃるから匂わす事も出来なかったのでおじゃる。
他意があったのでは無いのでおじゃるよ】
「そいぎん神隠しばしてでんよかって事やろかね?」
イエスとでも答えやがったら何が何でも帰ってやる!
【麿が事を焦ったのが発端でおじゃるから夫君のお怒りはご尤もでおじゃる。
急いては事を仕損じるとはよく言った物よのう、ほっほっほっ。
高い所からで済まぬがこの通りでおじゃる】
ふわりふわりと浮かんだまま頭を下げてくる白塗りお歯黒の様子を見せられるといつまでも意地を張り続けるのが馬鹿らしくなってくる。役者は向こうの方が一枚も二枚も上手だな。
陰険で陰湿な中世の宮廷で藤原氏を相手に孤軍奮闘していた白塗りお歯黒に勝てると思うのが身の程知らずだって事だよな、なんせ年季が違い過ぎる。
【夫君は麿を買いかぶり過ぎでおじゃるよ。
結局は闘争に負けて太宰府に流され祟り神にならざるを得なかった麿の何が凄いものか。
今も勝手に突っ走って夫君の、ひいては玉藻様のご機嫌を損ねてまうところでおじゃったよ・・・ウーちゃん様や諏訪様、八幡様の力をお借りしてでも皆々様に麿の考えを聞いてもらうべきでおじゃった筈なのにそれもせずにむやみに世間を騒がせてまうのは偏に麿の不徳の致すところでおじゃる】
ヤバい、なんかスイッチが入っちまったみたいだな。ウーちゃん、どうにかしてよ!
【根が内に籠る奴やからのう・・・しばらくはどうにもならんやろうな、とかゆうてる場合じゃあらへんか。
みっちゃん、気ぃしっかり持ってぇな!
ここと外じゃ時間の流れが違う事は忘れとらへんやろうな。サッサと話を進めんとコヤツら浦島太郎になってまうど!】
時間の流れが違うってどういう事よ!
【そうでおじゃった!
実はかつてとあるアホな坊主が手柄欲しさに曰く因縁の籠る石を削ったのでおじゃる。
さすれば削られた石が日ノ本中に飛び散って各地で異変が始まったのでおじゃる。
その異変を治めるのに八百万の神々が手を焼いている間に、信心が失われもとより日ノ本は戦乱の世であったのがより血腥うなってしまったのでおじゃる。
麿たちが目を離したから戦国の世になってしもうたとまでは言わないでおじゃるが、その責任の一端は麿たちにあるものと思っているのでおじゃる。
やがて異変を麿たちが抑え込むことに成功し戦国の世も終わっていったのでおじゃる。
それがここ数年で異変の芽がまたぞろ出てきたのでおじゃる、玉藻様たちが世に出るきっかけになった“シリウスの落ち武者”から始まる亜神悪神の誕生が始まった事がその表れでおじゃる!】
もしかしてその曰く因縁のある石って僕たちにも関わる“殺生石”・・・とか言わないでしょうね。
「だからタダ働きしろ、とか言わないだろうね?神様さ・・・ボランティアとかするほどの余裕はねぇんだぞ(ボソッ)」
お金にうるさいカオルン少年が白塗りお歯黒を睨みつけると、祟り神様は物理的に被害が及ばなそうな位置まで離れる・・・元はお公家さんだから痛いのは嫌だよねぇ。
【も、もちろん、報酬は用意するでおじゃる!麿も恵比寿サンの二の舞は御免でおじゃるからに。
で、さっきの続きでおじゃるが此度の異変の共通点が見つかったのでおじゃる。
一つは祟り神でおじゃる。
“落ち武者”の近くには新皇の佩刀を祀る神社があるのでおじゃる・・・かの大乱で多くの血を吸った呪いの籠った奴でおじゃる。
“猫”はと言えばひと山越せば麿や讃岐院様と言った数々の怨念を封じ込めた京の都、“オロチ”にしてもひと山先には玉藻様たちの殺生石、他にも恵比寿殿が追い落とされたあの海岸にも亜神の気配があるやら讃岐院様のご様子が最近怪しゅうなってはる事やらと祟り神の近くに蠢くもんがあるのでおじゃるよ。
もちろん、麿のあちこちの天満宮でも何やら異変が起きているようでおじゃる。麿自身には何の変りも無いのでおじゃるが梅が狂い咲きをしただとか臥牛の像が夜の間に移動している形跡があるだとか怪談めいたものを耳にするのでおじゃる】
臥牛の像が動くのはついさっき目の前で見ましたけど、あれってそういう仕様じゃなかったんですか?
【そしてもう一つの共通点は、“殺生石”でおじゃる】
その言葉は聞きたくなかったよ。
この章に入っていきなりおっさんの口調が方言丸出しになっていますが、これは天神様の祟りです(多分うすうすみんな気付いているでしょうが)
白塗りお歯黒とか肚の中で思ってる事ぐらい相手にはバレてますって
皆さんも他人の悪口は言わないようにしましょうね
落ち武者以降の神たちが殺生石の活性化、つまり葛葉嬢の誕生を機に力を付けだした事が原因だったという当の葛葉嬢からしたらかなりショッキングな情報が出てきましたがさてこれからシリウスの面々はどうするんでしょうか
などとカッコを付けつつまた来週




