第162話 梅の精、春の園に招待する
牛の後ろでかくれんぼしたり梅の木になったりと大忙しの天神様ですがオッサンたちをどこに連れていくんでしょうか
まぁタイトルで予想が付くだろうとは思いますが
まぁお気楽に本日もよろしくお願いします
【ここで立ち話はなんでおじゃります故、本殿へ皆様を案内するでおじゃるよ】
別に梅の花を大量消費しなくても、道なりに行けば御本殿には届くはずだよな。
【まぁまぁ、そのような寂しい事は言うてはならぬのでおじゃるよ?
さもなくば麿は祟らねばなりませぬ事になるのでおじゃるからして・・・平穏無事が何よりではおじゃりませぬか】
千百年を超える祟り神様に逆らうのはよくないな、うん。
【ほほほっ、麿は誰かれ構わず噛み付くような狂犬では無いのでおじゃる。
玉藻様とも夫君とも末永いお付き合いを望むものでおじゃるよ】
・・・ウーちゃんより手強いな、全く。全然丸め込める気がしないよ・・・神転がしの達人なんて二つ名が恥ずかしくなるよ。いやいらない。
【兄貴、オイラは武神だからみっちゃんみたいな頭で勝負するタイプにはからきし弱いっす】
【左様で御座います。だからこそ先生の深慮遠謀には我ら心酔するもので御座います。
ただ、それは権謀術数に長けた宮廷での抗争に明け暮れた道真殿とは違うもので御座います。
戦バカとか脳筋とか言われがちな我らにも等しく接して頂く先生になら我ら何度でも転んで見せましょうぞ!】
そんな時だけ波長が合うんだね、八幡様もお諏訪様も・・・それに僕のは完全に行き当たりばったりですから。
やがて白塗りお歯黒は、本殿の脇のちょっとしたスペースに僕たちを誘導すると柏手を一つ打つ。
すると僕たち一行を取り囲むように『ポン』という音と共に紅白の梅の花吹雪が巻き起こる。・・・季節は秋なんだよね。
花吹雪が収まると、足元の草むらから黄色いタンポポが覗き、その横ではスミレが紫の花をほころばせ、レンゲが薄紅の花を揺らし、クローバーが白い花を咲かせている。
そう、そこは春の草原になっていた。
「どうなってんのさ・・・おっちゃんに花でわっか作ったら受け取ってくれっかな(ボソッ)」
それって花の冠って奴かな?カオルン少年の意外な少女趣味が知れて内心驚いていると、ふわりふわりと白塗りお歯黒が漂ってくる。
【麿の自慢の春の結界でおじゃる。気に入ってくれたでおじゃるかな?】
「こいって異界って事やろか?」
思わず訛っちまったじゃねぇかぁ!
【玉藻様の夫君はよくご存じのようでおじゃるな】
「姉ふたいと姪がひといお世話になっとっけんね」
要するに僕たちは神隠しにあっているという事だろ?
【あれはウーちゃん様から頼まれて八百万の皆々様と力を合わせて封じ込めたまでの事・・・麿たちが封じる側に回る事などこれまでおよそ思いつきもせなんだ事でおじゃるが良い経験でおじゃった。
それとも夫君はあれを開放して欲しいのでおじゃるか?
お身内の方に言うのも気が引けるのでおじゃるがアレは害にしかならないでおじゃるよ?】
「ばってん、おいたちにでんおないごつばしよっじゃなかですか」
【そないな事を言われても困るのでおじゃる。
形は同じでも経緯はかなり違うのでおじゃる。
あっちは厄介払い、こっちは情報漏洩対策でおじゃるから】
「情報漏洩?失礼ではございますが天神様は我らが誰かに情報を漏らしているとお考えなのですか?」
【見た目は幼そうなのに実はゲフンゲフン・・今のは聞かなかった事にして貰えると助かるのでおじゃるが・・・聞き分けのいい女御でおじゃるな、恩に着るでおじゃるよ。
情報漏洩に関してでおじゃるが抑々玉藻様御一党を念頭に置いてはいないのでおじゃるよ。
逆に御一党を狙ってくる有象無象対策でおじゃる。
皆隙を狙って御一党に食い込もうと必死なのでおじゃる。
兄弟をダシにして取り込もうとする輩やら、親戚縁者の真似をして近づく者など今まで見かけなかったでおじゃるか?
図らずもここに来ていただく事を知って押し掛けてくる者どもで博多の街が溢れ返っている事をご存知でおじゃるか?まぁこれは麿の世話をする者共の腋の甘さが悪いのでおじゃるがそれを差し引いても麿の願いを汲んで頂くためには遮るに限ると判断したのでおじゃる。
のう八幡様、随分と小虫が引っ掛かっておったようでおじゃりますが】
【大宰府に兄貴たちが来てからでも除霊屋を名乗る輩が33匹、除霊屋に頼まれて探りを入れてきてるクソ野郎が46人、どさくさ紛れに拉致を目論む害国人どもが221。
全部捕獲して遠洋漁業の船に乗せたっす】
その外国人の数ってちょっと多すぎない?
【なんせ兄貴たちほどの腕のある連中なんて世界中探してもいねぇんでどこの国でも喉から手が出るくらい欲しいっす。
でも兄貴たちが他所の仕事を受けてくんねぇもんだから国を挙げて攫っちまおうってCIAやらモサドやらがチームで来るわ、下請けで三下が地回り巻き込んで網を張ってるわで上を下への大騒ぎってもんっすよ!】
最近入ってきた旧日輪道場系と旧穢れ無き世界系の連中の顔色が悪い。攫われるとしたらまずこいつ等だろうからね。
「そう言えばこないだ仕事上がりに居酒屋に行ったらエロいねぇちゃんに抱き着かれたよな」
「最近いつも誰かから見られてる気がするんだよ」
「それでカーナビの通りに走ったら行き止まりに行ったのか」
最初のはハニトラっぽいけど、瀬神人よ、お前そんなに霊感無いだろう・・・自意識過剰なだけだ。静内に至っちゃカーナビのせいした方向音痴だろうが、いや機械音痴か。
「おっちゃん!オレ襲われたらどうしよう!・・・おっちゃんに抱き着くチャンスかも(ボソッ)」
カオルン少年・・・元特攻隊長なんでしょ?喧嘩になったら絶対勝つじゃん。
「おじさま・・・身の危険を感じるんですけど」
ちんちくりん・・・君が神戸でヤクザを撫で切りにしていた事を僕は知ってるんですけどね。
【旦那さま・・・どうしましょう】
・・・葛葉嬢・・・貴女の一睨みで全員失禁しながら失神するとしか思えないんですけど。
眷属にしたってアンジェが捕まる?そこら辺の野良猫総動員して逆襲で全滅させられる絵しか思い浮かばないでしょ。ディーテ?いざとなったら水魔法で全てを洗い流してお終いだよね。ピュア・・・相手の霊力を好きなだけ抜き取れるのに叶う奴がいる筈無いでしょ?お絹・・・は戦闘力無いからお諏訪様の奥さんのヤサカ様にしっかりガードして貰ってるから大丈夫だしポチとポンのすけも同様だよね。雪子ちゃんは元警察官だもの格闘技で後れを取るとは思えないし最近は眷属になって色々能力が上がってきてるそうだから心配する必要は無いでしょ。
問題なのは・・・モブ2号以下の幹部候補たちか。下っ端どもを情けなさそうに見てるけどさ、自分たちはどうなのさ。
モブ2号は何とかできるとして、モブ1号はもうちょっと減量しないと息切れするだろうし、宇宙人は娘をダシにされればホイホイついて行きそうだし、坊さんとヒロはお人好し過ぎて紐にでも繋いでおかないと安心できないし、じいさんは年齢的に危険しか感じないし・・・みんなでここに泊まるか?
結局のところ現在シリウス一行は神隠し中でーす
雑魚っぽい八幡様が意外と有能である事が証明できた事が唯一の収穫のような気が・・・
人数合わせの連中が足を引っ張りそうな事態をどうするのか・・・そもそもおっさんは自力でどこまでできるのか・・・
帳尻合わせが出来るのか心配になりながらまた来週




