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狸なおじさんと霊的な事情  作者: BANG☆
災いの足軽と頼りなき受験者編
189/278

第147話 狼、試験官になる

新章というか前章の続きでございます


おっさんと化け狐は出てきませんので悪しからず


では本日もよろしくお願いします

 梅雨時のまだ夜も明けきらない早朝の降りしきる雨の中、かつて反社会勢力麦踏会の拠点があったビルの前に年齢も性別もばらばらな集団が傘も差さずに集合している。

 飽きずにまだやるのかとどこぞの武神(弁財天)に揶揄されながらの有限会社シリウス新規採用試験会場だ。


 もし霊的な目でこの場を見る事が出来るなら、目が潰れんばかりの壮観を目に出来るかも知れないな。


 周りを取り囲むようにしているのは八百万の神々は元より文殊菩薩などの仏神、背中に羽根を生やした大天使ミカエル、或いはかつてはあがめられていたが今では物語の中でしかお目に掛かれないようないにしえの神々までもが興味深げに覗き込んでいるのだから。


 試験を受けるのは、帰りの旅費の工面が出来なかった元僧侶に娘たちへの土産代欲しさにやってきた元霊能業者、有休を消化し終えて親でも殺した事にしてでも休もうかとしたところセクハラ上司からの叱責を受け笑顔で辞表を叩きつけて乗り込んできた元警官とその警官に桃色の妄想を描きながらついてきた元犯罪者、そして生ゴミのような異臭を漂わせ杖を突いて歩く路上生活者の5人だ。有限会社シリウス社長の弟は前回姉と面会できなかった事と急ぎの仕事が入った為に参加を諦め、某16強の運転手は仕事を抜け出せずに参加を見送っている。


 一方受け入れる側は、断腸の思いで喫茶店を休業させてきた小娘と黒猫の化身の大妖が大妖の配下の野良猫軍団と言う人海戦術ならぬ猫海戦術を使って採点するつもりらしいぞ。


「“シリウスの番頭”がサマナーだといううわさが聞いていたが本当に猫又が試験官になって出てくるとは思っていなっかたよ」

「足利サン、番頭さんはサマナーではなくテイマーです」


 大妖が率いる見渡す限りの猫の大群に元僧侶が頬を引き攣らせてその大妖の主人に思いを馳せると元警官が元僧侶の些細な間違いを修正している。


 当の大妖は、普段主人にしか見せる事が無い黒豹のような姿を受験者の前に晒して、そ知らぬふりをして受験者の様子をこっそりチェックしているね。

 こういう事には如才が無いのはシリウスに所属する個体の中でも一二を誇る存在なので一応の責任者である小娘は気楽なもんだ。だからこそ店を休業にしたくなかったんだけど社長と専務の言いつけなので仕方がない。諦めろ。


「全員不合格にしてすぐに解散したら夜ぐらいは店開けれるんじゃねぇか?どうせ時間の無駄だからよ・・・おっちゃんから怒られるからやんねぇけどさ(ボソッ)」

《まぁたぁ、そんな事言ったって今のままじゃ手が回らなくなって仕事に潰されちゃう羽目になるのは目に見えてるんだからさ、めんどくさくなってサボったりしないようにターさん♡がウチをお目付け役に付けたんじゃない。

 いい加減諦めて目の前の事に専念してくんないかな?

 所詮アンタはまな板の上のコイなんだからさ》


「でもさぁ、店がやれねぇんだったら休みてぇよな・・・オレだっておっちゃんとデートとかしてぇんだからよ(ボソッ)」


 どいつもこいつも本音を駄々洩れにしやがって・・・


「いつでも試験を始めて構いませんぞ」


 最年長で試験初参加の路上生活者こと益岡老人がぼやく二人に声を掛けてきた。

 実際御老体を傘も無しで雨の中に立たせるとか老人虐待のそしりを受けても仕方ないので小娘ことシリウス事業部長大上 薫が試験の開始を宣言する。


「それじゃゆーげんがいしゃシリウスのさいよーしけんをおっぱじめます。

 前ん時いなかった人も来たんで改めて実技とか見させて貰うからよろしく・・・こんな感じかな?(ボソッ)」


「前回は不本意だったからちょうどよかった、まだ道場を続けられるかも」

「雨は夜更けすぎぃにぃ~♪」

「カオルンちゃん、事業部長になってんだ・・・偉くなっちゃって」

「げっ!あの喫茶店のあんちゃんシリウスの奴だったのかよ!」

「やれやれ今更実技とは、年寄りを試すとか親の顔が見てみたいわい」


 事業部長、要するに喫茶シリウスのラスボスの宣言にまたやるのかとうんざりする声と事業部長様を見てびっくりする声が交差する。

 ただ元霊能業者の伊達よ、梅雨時にクリスマスの歌を口ずさむのは止めんかい。そんなだから“宇宙人”なんて二つ名を付けられるんだぞ。


()()のは簡単ですから1時間もあれば解散になるぜ・・・こんなんで選べるのかよ(ボソッ)」


 後を引き継いで、その簡単な試験の概要を管理部長(並)の番頭の眷属でもある黒猫の大妖闇風のアンジェリーヌが説明する。


《アンタたちの周りにぐるっといるのは、ウチの配下の野良猫軍団よ。

 その中にはこの試験の為に浮遊霊を憑依させたのが何匹か混じってるわ。

 試験ってのはその憑かれた子を正確にウチのトコに連れてきて欲しい、それだけ》


 どれだけ正確に区別ができるか、どれだけ早く見つける事が出来るか、どれだけ多く見つける事が出来るか、どれだけ逃がさずに連れてくる事が出来るか等々のチェックポイントがある事を猫又は伝えていない。


 それを含めての実技試験なのだから。


 あくまでも今日の試験なのだから翌日にでも別の試験が待っているのだ。濡れて風邪でも引かれた日には社長や専務から溜息を吐かれる事は間違いない。


 だってこの場に集まっているのはこの国でトップクラスに成り得る人材なんだから。いやほぼトップに近いと言っても間違いはないかも知れない。能力に対して不遇だというだけだ・・・宇宙人は・・・やればできる子?


 とにかく大妖の二本の尻尾が巻き付いたチェッカーフラッグが振られ、新規採用試験実技編はスタートした。

やる気のない事業部長とあきらめ気味の管理部長はちゃんとした社員が選べるんでしょうか・・・


神様たちの関心は高そうですが受験者側のやる気もどうだか

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