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狸なおじさんと霊的な事情  作者: BANG☆
閑話 その10
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閑話 蓼食う虫も好き好き

ウーちゃん無双月間第3弾


目先を変えてデート潜入レポート?編


誰がおっさんのデートの話を読みたがるっちゅんじゃい!


という訳で罵倒の嵐の中を本日もよろしくお願いします

【・・・んで?】


 そんなに疲れた顔して聞かなくてもいいでしょ。葛葉嬢が映画を見たいって言うからエスコートして横に立ってるだけじゃないですか、何かご不満でも?


【今日はデートやゆうてタマちゃん(葛葉嬢)が浮かれとったさかい、冷やかし半分覗きに来たんやないかい・・・

 それやのになんやその自分アンタのカッコは】


 左肩には欠伸あくびする黒猫が乗り、右肩には鸚鵡オウムが乗って僕の残り少ない髪で遊び、人魚の入ったバケツを下げ、足元には子狸が二匹(まと)わりついているだけですが、普通でしょ?


「姫様が外で待ち合わせをしてから映画を見たいって言ってたんです。見つけて貰う為には解り易くて見慣れた格好の方がいいでしょ?

 こんなチビでも黒猫(アンジェ)鸚鵡(ピュア)を連れていれば見落とされる心配もないだろうし」


【アンタと小姑(眷属)どもの事はどうでもええんや。そないな事よりその服はどないなっとんねん】


 部屋着替わりのジャージの上下はどうかと思ったから、日霊連とかに行く時に着てる着慣れた紺の背広に白のワイシャツですが突飛な格好をするよりましでしょ?それとも臙脂えんじの無地のネクタイがいけなかったのかな?それはそうと僕の眷属たちを小姑呼ばわりするのは腑に落ちないんですけど?


旦那だんさん・・・どない贔屓目ひいきめに見ても聞き込みに走り回って疲れ果てたうだつの上がらへんペット専門の私立探偵みたいにしか見えへんでぇ・・・】


【ウーちゃん、そんなにご心配にならなくても・・・仕事を離れて一緒にいられるなんて初めてなんで御座いますから私は幸せで御座いますよ?】


 出会った時は仕事が絡む前だったんだから初めてじゃないと思うんだけどね。あの時はいきなり頭からゲロを浴びせられて・・・いやいやそれを思い出すとなぜか葛葉嬢の機嫌が悪くなるから横に置いて、この格好のどこに不満があるんだおばはん(ウーちゃん)は。葛葉嬢は納得してくれているんだからそれでいいでしょ?


【ペット同伴で入ってええ映画館って世の中にどれくらいあんねん。盲導犬でもなんでもあらへんのやさかい衛生上のなんちゃらゆうて締め出されるんが関の山やあらへんか?】


 ウーちゃんの鋭すぎるその指摘に僕たちはもちろん、眷属たちも愕然となってしまった。こいつら、こんなに可愛いのに世間から差別されるのかよ!


 葛葉嬢も僕の足元からポンのすけをすくい上げてウーちゃんに頬ずりしながらアピールをする。狐の大妖なのに化け狸を可愛がるくらいの包容力があるんだから連れて入ってもいいだろ?


ぽんちゃん(ポンのすけ)なんてこんなにフワッフワで御座いますのに何がいけないので御座いますか?】


 狸は普通野生の生き物だからじゃないかな・・・自分でオチを付けてどうする。ここはもっと話を盛り上げて葛葉嬢の機嫌を良くしなくちゃならないんだぞ?


【世間じゃ狸とアライグマの区別が付かへんらしいやないの。狐にしたって耳の大きな犬扱いなんやで?

 そないな連中にどれがペットでどれが使い魔でどれが眷属やとかなんて区別が付けられる訳無いやないか!

 そやからいらん波風が立たんよう持ち込まへんゆうのが常識になっとるんやないか。

 タマちゃんも旦那だんさんにだまされてアホな事しでかさんよう気ぃつけぇや】


「騙すだなんて人聞きの悪い、僕はただ人の信ずる真理ってのが見方によってはどうにでも変わるんだって事を説明してるだけですよ。

 量子学ってのはそういう奴ですから」


 なんだよその元化学者()を疑うような目は!シュレディンガーの猫とか聞いた事ない?嘘は言って無いからね?


【猫なら自分(アンタ)の肩で欠伸あくびしとんのがおるやないけ、尻尾は二つあるけどな。シュレッダーがどうのゆうんは興味無いから言わんでええ。

 まぁそれはもうどうでもええがな(どうでもいいなら突っ込むなよ!)、なんで自分らはデートしとんのかっちゅう事や、要は。

 他の連中はときたらウチのボケナス(稲荷狐)どもまで引っ張り出して何ぞこそこそしよる。ワテは詳しい事は何も聞かされてへんのや、タマちゃんたちならなんぞ知っとるやろう思うてな】


 どうせ乱入して楽しもうとか思ってたんでしょ?ちんちくりんたちが秘密にしようなんて思う気持ちはよくわかるぞ。


「邪魔しないんなら教えても構いませんけどね?【邪魔なんぞした事も無いわい!】・・・『噓つきは泥棒の始まり』って学校で習いませんでした?胸に手を当ててよ~く考えてみましょうね。あっ、学校なんてものが生まれるずっと前からこの世にいるんでしたね、失礼しました。

 それはそれとしてねられたらめんどくさいんで教えますね。

 チームシリウスの採用試験をするから口挟んだりしないように二人でデートでもしてろって追い出されたんですよ、僕たちは。

 候補は僕や姫様からの推薦で選んでいましたから誰が来ても大丈夫なんですけど、他のメンバーとの相性とか色々あるじゃないですか。だから僕たちは邪魔ものなんです」


 あと葛葉嬢の威圧にどれだけ耐えきれるかとか、アンジェたちから信用を得られるかどうかとか、まぁ色々基準はあるだろうけどね。

 僕としては、“猫”の騒動の時に知り合いになった仙人みたいなお爺さん、益岡さん辺りが残ってくれてると嬉しいかな?


【自分らが立ち会わんでええんか?自分らシリウスの代表と副代表やろ?】


【会社組織に致しましたから社長と専務で御座いますよ?『有限会社シリウス』で御座います】


 そう、この増員募集をするついでに単なる除霊集団“狐塚葛葉とその一党”だったのを会社にしたんだ。

 社長は代表の葛葉嬢(狐塚 葛葉)、専務に副代表格の僕、経理部長にちんちくりん(宇佐木 チカ)、企画部長がカオルン少年(大上 薫)、そして営業課主任がモブ2号(根津)。人間じゃない僕の眷属たちはもちろん、アンジェの手下の野良猫軍団、ディーテの配下の船幽霊たち、毘沙門台温泉のポン太とその一族には一括で僕のおまけという事にしかできなかった。人間しか法律の網は掛けられないからね。そのせいで社外取締役としてウーちゃん、お諏訪様、八幡様、弁天様を迎えようとして役所からはペケを喰らったんだよね。

 格上の相手を人間じゃないからって無下に扱うとかどんな目に会っても知らないからね。


「最終チェックで入るからその前はみんなに丸投げって事になってるんですよ」


 だから僕たちは生まれて初めてのデートをするんだ・・・コブ付きだけど。


 いつもは恐ろしい葛葉嬢の吊り目がなぜか今日はとっても優しく感じる・・・魔眼か?魅了が掛かってる?


 まぁいいか、嬉しそうに上からしな垂れかかってくる葛葉嬢を受け止めながら僕は町中の雑踏を歩いて行く。眷属たちも僕たちを囃し立てるようにさえずったり鳴いたりしている。


 平和な一日っては僕にも存在していたんだという事を噛み締めながら映画館を僕たちは目指すのだった。

ペット同伴の映画館ってホントにあるんですかね?地方に住んでいると全然情報が無いもんでわからないんですけど・・・


まぁようやくおっさんも葛葉嬢を受け止められるようになってきたと言う事でめでたしめでたし?

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