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狸なおじさんと霊的な事情  作者: BANG☆
閑話 その10
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閑話 盗人にも三分の理

ウーちゃん無双月間第2弾はチームシリウスを兵糧攻めにしようとした片棒を知らずに担いだ狐塚父編


なんとも小物感が個人的に親近感を持ってしまう筆者だったりします


本日もよろしくお願いします

【んで?】


 何で目の前で白い獣に乗った女が獣ごと宙に浮いているんだ!あまりの不気味さに言葉を失くした僕にその曲乗り女が目を怒らせて問い詰めてくる。


【何度も言わせんといてんか!

 オドレはどない落とし前を付けるんかいってゆうとるんや!】


「何度も何度もって言ってもねぇ・・・お宅と僕は初対面で、会った瞬間に『んで?』って言われただけなのに何をどうすりゃいいんだか解る訳無いでしょ?

 落とし前とか言われても心当たりは無いし・・・お宅、ここが日霊連の本部だってわかって来てるの?冷やかしなら間に合ってるし恐喝なら警察は真向かいだからね、悪い事言わないから帰った方が身の為だよ?」


 ぶっちゃけ心霊商法もヤクザどもも僕には通用しないんだからね、そこんトコよろしく。


【証拠が上がっとんのにシラ切るっちゅうんかい!

 優しゅうゆうとる内に正直に言わんとオドレが泣き見るんやからな!】


「証拠?証拠とか言われましてもね・・・いきなりなんで意味が解らないんですけどね。

 蛍原くん、こちらを案内してあげてくれないか。僕では手に余るようだから」


 新手の恐喝には屈する筈が無いでしょ?僕は秘書の蛍原くんに指示をして警察を呼ぶ事にする。


【オドレはワテが誰やか解らへんのか?タマちゃんの父親やゆうからちゃんとした霊能持っとるかと思っとったんに・・・】


 曲乗り女は目を丸くして僕の事を見ている。殺された陽子()と狐に近付いちまった葛葉クーちゃん以外の女は僕にとってはどうでもいいんだが何を言いたいんだか・・・


【狐塚葛葉とその一党、そう言ったら解るかいな】


「クーちゃんが、いや娘が道楽で始めた霊能集団がどうしたんです。法律でも犯したんですか?」


【そないな事はあらへんがな・・・いや勤務時間がどうしたゆうとったかいな。いやいやそんなんはどうでもええがな・・・

 そや、あそこに入る筈の金の流れがおかしいゆうとるんや!】


 ・・・金・・・だと?何をこの女は知ってるんだ!マズい蛍原くん(秘書)はこの件には関与させていない。それにこの娘の父親はたしか財務省にいた筈、早いとこ追い払わないと機密が漏れてしまう!


「いきなり現れて恫喝してきた挙句、金の流れがどうとか言い掛かりを付けられてもねぇ・・・蛍原くん、ちょっと隣のアレ(警察署)(通報)してきて欲しいんだが頼めるかな?」


 秘書は僕の指示に軽く頷くと昼食にでも出掛けるかのような雰囲気で席を立った。実際昼時に掛かってきたので昼食に出掛けるつもりだったのかも知れないな。たまには弁当でも作った方が彼氏にアピールする時に楽だと思うんだがね、今時の娘は自分の時間の方を優先するらしいから余計なお世話か。クーちゃんは・・・卵かけご飯も碌に作れない不器用な子だったな・・・


【猿芝居は終わったんか?】


「お陰様で・・・時間が無いんで単刀直入にうかがわせて頂きますが、貴女どなた?」


 僕の質問に気が抜けたのか乗っていた獣から音を立ててずり落ち、腰辺りを擦る曲乗り女。


【正月に不法侵入がどうしたゆうて大騒ぎしたんを覚えとらせんのか、このボケなすびは】


 え?・・・そう言えば去年の正月に、折角のクーちゃんとの会話を邪魔してきた曲乗り女がいたな・・・あいつか?・・・あいつだ!


「あん時の不法侵入者か!今度は事務所に不法侵入か!警察を、警察を呼んでやる!」


【どうせあの娘が連れてくるんやさかい二度手間や。自分がゆうたことも覚えとらんのか、このうすらボケ!

 それよかこっちも単刀直入に聞かせて貰うで、なんで娘んトコの依頼料をピンハネしたんや】


 老後の資金とか本音を言ったら絶対ヤバいよな。それにしてもこの女は誰なんだ!


「ピンハネなんか、ピンハネなんかしてないわ。実力に相応の等級で案内しているだけだ!

 僕が、僕が聞いてるのは、不法侵入してきた前歴があるのは解ったがアンタは何者だって事だ!」


 何を鳩が豆鉄砲喰らったみたいな顔してやがんだ。


【なんや、オドレはマジでワテの事を知らんかったんかいな。陰陽師としても下の下、神主としてもなんも覚えとらへん・・・マジで首斬られるで、自分。

 ワテの名は倉稲魂命(うかのみたまのみこと)や。お稲荷さんやらなんやらでお世話しとる筈やがな、ワテは】


 マジか?本当か?ドッキリじゃないのか?その辺の物陰からヘルメット被ったおっさんが、プラカードかざしてニヤニヤ笑いながら出てくるんじゃないのか?

 倉稲魂命って言ったら稲荷神だぞ?そんなのがホイホイ出てくる訳無いだろ?


「願望を口にするのは仕方ないとしてホントは誰なんです?」


 曲乗り女は顔を引きらせてわめき散らす。


【この期に及んでまだそないな事を抜かすんか!

 オドレら、このボケの眼ぇ覚まさせぇや、みんな出晒でさらせぇ!】


 その声に呼応してぞろぞろと事務所に入って来る人・・・随分毛深い人間だな、!犬か?それとも狼か狐か?後ろ足で器用に歩く獣の大群が事務所を埋め尽くしている!


【どや、これで眼ぇ覚めたやろ?ワテの眷属どもや、オドレらこのボケに挨拶してみさらさんかい!】


 後ろ足で立つ獣の群れが僕に対して頭を下げる・・・もしかして本物か?まさか。


「僕の眼がおかしくなっているのか、それとも・・・そうかこれは着ぐるみか!

 いやいや危うく騙されるところだった。随分大仕掛けな事をしてくれるじゃないか、イリュージョンだろ?これ」


 またまた盛大に滑り落ちて腰を打つ曲乗り女。


【あいたたた、んな訳あるかい!

 こ奴らは稲荷狐や!んでもってワテは稲荷神の倉稲魂命や!ワザとにしてもあざと過ぎるわ!

 ワテらはこれまで、オドレの娘の大事なタマちゃんのトコの仕事をオドレのトコ経由で斡旋してきたんや!

 そやのに今年に入って頭金しか支払っとらんやないか!ワテらの信用はガタ落ちや!

 この落とし前をどうしてくれるんやってゆうとるんや!】


「頭金だけ?そんな、そんな筈は無い!日霊連から迂回させての送金は僕が指示して流れていたんだぞ?頭金だけ等級を落とした差額をプールしていただけだ」


 あっ、ホントの事言っちゃった・・・口が勝手に・・・


【等級を落としたんなら報酬も少ないままやないか、何を偉そうに。

 実際オドレの娘んトコに入っとるんは二つ三つ等級を落とした頭金だけや。オドレが娘を出汁に使つこうて私腹を肥やしとんのはこのワテの眼にも明らかや、大人しゅうお縄につきぃや】


「そんな筈はない!残りはちゃんと後から流していたんだ!

 それに等級を落としたんだって他の奴らとの実力差を難易度で合わせる為だったんだ!」


【なんやその訳の分からん屁理屈は・・・そないやのうて金が流れとらんゆうとるんやないか!】


「直接日霊連から流れると16強と癒着を疑う奴らが出てくるから“東京”(東京晴明神社)とペーパーカンパニーの“霊能研究社”“霊構造分析協会”を経由させて喫茶シリウスに送金させていたんだ。去年の秋から始めて不具合は僕には報告されていない!」


 獣の背に這い登り直した自称稲荷神は疑わしそうに目を細める・・・お前の方が胡散臭いんだよ。それに一々乗り直すのはどういう意味があるんだか・・・


【その『ぺえぱあかんぱにい』は誰が取り仕切っとんねん】


「もちろん、作った“東京”ですよ、当たり前じゃないですか」


【なんや、そしたらオドレは何も考えんと“東京”に働いてもおらん金を延々貢いどったんか】


 突然何を言い出すんだこの曲乗り女は!


「僕を、僕を馬鹿にしてタダで済むと思うなよ!」


 凄む僕にふんと鼻を鳴らして曲乗り女は姿を消した。着ぐるみ軍団も同時にだ、やっぱイリュージョンじゃねぇか!


 その直後、怒号と共に殺到する警官の波に僕は飲まれて行くのだった・・・蛍原くん、呼び過ぎ。

のほほんとしていますがこの後狐塚父にはきついお灸が据えられ娘からひと月口を利いてもらえない地獄の苦しみが待っているのです


ご愁傷様


次は芋づる式に東京晴明神社の本陣へと切り込むのか・・・おばはんの気持ち次第ですね

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