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狸なおじさんと霊的な事情  作者: BANG☆
閑話 その10

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閑話 磯の鮑の片思い

ウーちゃん無双月間という事でウーちゃんを狂言回しに閑話をやってみようと思います


まずはVS祟り神編という事で


本日もよろしくお願いします

【んで?】


 絶対零度の視線がちんを貫く。


【んで?と申されましても・・・】


【ワテは、この落とし前はどう着けてくれるんかて聞いとるんや】


【・・・】


 目の前の怖い先輩が睨み付けてくるのをじっと耐えている朕。


【黙っとったら時間が解決するとでも思うとらせんやろな。今回の件、あっちは不動明王まで出張って来とんねんで?

 めんどくさい時に本気なんぞ出しよってどないすんねんて言いよるんや、ワテはな】


【とても喜ばしい事がありましてちょっと身じろいだだけではありませぬか、特に何もやらかしてはおりませぬよ】


 朕の言葉に目を剥いて威嚇いかくをする先輩、とてもじゃないが居心地が悪すぎる。それでなくとも覚醒したあの者を迎えに出掛けねばならぬのになんでこの方は朕に絡みたがるのだろうか。ハッキリ言おう、朕は年上(ババァ)は好みではない。


【下じゃ今度の事を『日本大霊災や!』ゆうとるんやど?やらかしてへんやあるかい!】


【朕も四国を守護する身、多少の事で下々が騒ぎ立てる事もあるやも知れませぬがそれは下の都合と言う物、朕のあずかり知るところでは御座いませぬ。

 もとより持ちたる力を振るわぬよう自制して縮こまっておりました故、過剰に反応したに相違ございませぬ】


【ワテかてみちのくを守護する顔を持っとるがな、特別なもんやあらへんがな、そないなもん。

 オドレが蠢動しゅんどうを始めたんは、大方タマちゃんが人間辞めたからやろう。違うか?】


【はて、タマちゃんとやらに心当たりは御座いませぬが・・・800年以上待った甲斐がありました!

 愈々(いよいよ)、朕の横にはべるべき者が現世に戻ってきたので御座います!】


【朕、朕って真顔でやらしい事抜かさんといてんかぁ。

 日陰者のたたり神の分際でキモいわ。

 今、現世でオドレの事を何人が知っとんのか解っとんのか?】


【三大怨霊の一人とまで恐れられた朕を知らぬ者など現世におりましょうか、いや居りますまい!】


 ババァの挑発に朕も名乗らねばならぬのか?


 朕の名は顕仁あきひと。人であった頃の呼び名で言えば崇徳院、あるいは讃岐院と言えば分かるであろう・・・誰じゃ讃岐廃帝などと申したのは!廃帝と申すは朕の前に淡路廃帝(はいたい)、朕の後に九条廃帝(はいてい)がいるのみ、朕が廃帝となった事実など無いぞ!・・・弟の後白河が平治の乱の後、朕を殺して追号せなんだ事はあったが報復の祟りをたんまりぶち込んでちゃんと崇徳の名を贈らせたから廃帝にはなっておらんのだからな!


菅公(菅原道真)新皇(平将門)に比べたら地味やっちゅうのは自覚が無いんかいな。

 それになんや、800年待って現世に侍らせるんが現れたゆうんは?】


【菅公や新皇という名だたる先輩の前ではかすむやも知れませんが、朕とて讃岐に追いやられて数々のみかど、公卿、武士もののふと呪い殺してきた実績は地味とは言えますまい。

 それにもうすぐ朕の手にあの九尾の妖狐が戻ってくるのです。もう最も身分は高けれど最も地味な祟り神などと陰口は叩かせませぬ!

 800年前の恨みつらみを一気に晴らさせて貰いましょうぞ!】


 この無敵感、この高揚感、今、朕は八百万の神々の頂点に立とうとしているのです!


【・・・今、九尾の妖狐がどうのこうの聞こえたんは、きっと空耳やろうな】


 このババァ耄碌もうろくしやがりやがって朕の壮大な構想を理解できないのであろうか?


【朕が800余年の月日を待ちわびてようやくわが手に収めようという狐が気に入られなんだとはこれはしたり。

 800年前もあと一息の所まで追い詰めたものを愚かなる武士どもが勢いに任せて散らしてしもうた事は今をっても忸怩じくじたる思いが尽きぬ。

 されど此度こたびは800年貯めに貯めた朕の力を存分に発揮して逃がしはせぬ、逃がしはせぬぞ!】


【800年貯めに貯めたとは笑わせてくれるやないか、その力、オドレのほんまもんの力やあらへんやろ。

 力が溜まり始めたんは650年にもならん筈や。オドレの力の源やゆうとるんは下野の那須にあった殺生石の破片やさけな。

 あのお節介なバカ坊主が名を上げよ思うて殺生石を成敗するなんぞとほざいて砕いた破片が国中の『高田』に飛んで災いを振りまいたんはオドレも知っとる事やろう。知らん言わさへんで四国におる“犬神”はその名残なごりやさかいな。なんせ、四国ゆうんは元々狐がおらへん土地柄や、化け狸がハバ利かしとるような場所には犬神は大騒ぎの元になったやろさけ知らん筈が無い。

 そして犬神をこさえた他にも四国には殺生石は飛んで来とる。


 オドレのトコにな。


 その妖気を取り込んで溜めてきたんがここ2~3年で急に活性化した、図星やろ?そこでオドレは九尾の妖狐の復活を確信した訳や。

 ただそれだけやまだ動くには力不足や。

 ところが去年、恵比寿のアホが失脚しよった。そしてその空白を埋める為に国中の神々が駆けずり回った訳や。当然、オドレに対する監視は薄うなる。

 オドレ同様殺生石を吸い込んだオロチが神まであと一歩のところまで行ったんを知ったオドレは既に神になっとる自分やったら天下が取れる思うたんや。

 そして九尾の妖狐が昨日完全復活したんや、遂に日陰もんに日が当たる日が来たゆうてな】


 このババァ、どこまで知っとるのか・・・まさか、計画がバレているとでも?


【800年の時を越えて添い遂げる事は罪ではありますまい。それとも何かご不満でも?】


【なんや、開き直りかい、可愛げの無いやっちゃ。

 800年片思いしとったからゆうて誰も誉める訳無いやないか】


 ババァの物言いに流石の朕もはらを立ててしまった。


【800年も思われれば女も本望と言うものでありましょうぞ!】


 あっ、くそ!このババァ、朕を鼻で笑いやがった!


【800年800年て声高に吠えんでもまだワテの耳はええで。

 当の九尾の妖狐の眼にはオドレなんざ鼻毛ほども入っとらんのに何を寝惚けとんのやら】


 言うに事欠いてこのババァ!


【かつて時のみかど見初(みそ)められしおり、頬を染めて頷いた娘がおりました、その名は藻女みくずめ

 されど時の上皇、朕の父鳥羽院に仲を裂かれ、又その後はお互いに対立する連中の神輿みこしに担ぎ上げられ、生涯添い遂げる事はかなわぬまま朕は祟り神とされ彼の者はあやかしに身をやつした。

 時は移りようやく二つの魂がそろう事が叶ったのです。それを何です?『眼には鼻毛ほども入っとらん』ですと?

 馬鹿も休み休み言ってはくださらぬか、倉稲魂命うかのみたまのみこと殿。

 朕が望むものを藻女が望まぬ筈など無い。これが当然の摂理なのですよ】


【たった800年の片思いでようもまぁ上から物が言えるもんやのう。

 オドレのゆう“藻女”は心ならずも時の権力者鳥羽院から玉藻の前の名を授かり子を為したんは事実や。

 せやけどあの子は『妖に身をやつした』んやない、運命に翻弄されて本性に戻らされただけなんや。

 ぽっと出の妖狐やないんやで?

 あの子の前世は周の国を滅ぼした褒姒ほうじ、そのも一つ前もいんを終わらせた妲己だっきや。ワテはその頃はもう向こうで神さんやっとったからその頃からの顔なじみやねん。

 んで妲己が殷の紂王ちゅうおうに后にされる前に一緒やった男がおってん。なんせ仲取り持ったんはワテやったからな。

 その男は妲己が紂王に召される時に後腐れ無うする為に殺されてまうんや。

 それをはかなんで妲己は来世では添い遂げようと月に誓うんや。

 男に未練のある妲己はどない紂王がしてもなびこうとはせなんだ。

 妲己の気を引きたい紂王は、あの手この手で事件を起こしそれでも見向きされへんからゆうて終いにゃ悪逆非道の限りを尽くして、挙句の果てに国を滅ぼしてまうんや。

 そして妲己は諸悪の根源みたいに言われながら九尾の妖狐へと姿を変えて太公望に殺されて行く、来世でホンマの思い人と結ばれる事を願いながらな。そしてその時からその思い人の魂に呪が掛かってまうんや。

 妖狐の願いを聞き入れた月の力が妖狐に巡り合う様に輪廻をいじっていくんや。

 褒姒ん時は召使やったな、おなごの。おなご同士じゃ子は出来へんから次こそはなんて言いながら滅んで行きよったな。

 そして玉藻の前ん時は敵味方に分かれてもうてん。そん時は無理やり取り込んで一緒に殺生石になったんやけど旦那の方が先に抜けて輪廻に戻ってもうた。

 そやけど今度は30年ほど生まれがズレてもうたけど相思相愛や。それにさお差そうとかするんは自滅行為っちゅうヤツやで?

 格はあっちが遥かに上や、それもヒトっちゅう枠から解き放たれたんやからオドレなんぞは鼻息一つで消し飛んでまう事やろうよ】


 そんなに一気にまくしたてなくてもいいだろ?すぐにいなくなる人間と違って朕には悠久の時間があるんだし、見た所朕の方が遥かに器量は上と言うものだ。


【いろいろ申されても所詮は妖でしょう。

 その連れ合いとしては神と成りし朕と生身の有象無象とでは勝負にならぬと言うもの。

 800年の間熟成させた朕の情熱と誠意をってすれば結果は火を見るより明らか。

 我が眷属に迎えゆくゆくは后に取り立てると申せば是非も無く靡く事であろう。

 よって朕に不要な心配をされるのは杞憂と申して間違いないこと】


【・・・忠告はしたからな、その身が滅んでもワテを逆恨みなんぞするんやないで】


 ババァが凄んで見せた所で何の痛痒も無いさ。800年間を込めた思いは岩をも砕く事だろうよ。


 そして朕は高揚した想いを発露させようと立ち上がった時ババァが独りちた言葉を聞き逃していた。


【800年程度で何を浮かれとるんやか・・・タマちゃんの情念は3000年分やで?

 長さも質も深さもオドレとは比べもんになる訳無いやないか】

反省をしない崇徳天皇に明日はあるのか

その前に天皇をネタにして筆者に明日があるのか(´;ω;`)


取りあえず臭いものには蓋をしてまた来週

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