第139話 狸、悪神の正体を知る
さて名探偵の種明かしとなるか、それとも狐と狸の化かしあいになるか
本日もよろしくお願いします
【どうや、ワテと答え合わせとしゃれこまへんか?】
「その前に不動明王とかその辺の方々を起こした方が後々疑われなくていいんじゃないですか?」
【あのアホゥどもには聞かせとうない話もあるさかい、このままでまだええ。
こっから先は他言無用や。もちろん、タマちゃんもやで】
だからその悪い笑顔は止めなさいって。ウーちゃんの余裕に満ちた態度に流されて、葛葉嬢が思わず頷いてしまう・・・貴女の悪いトコですよ、それ。
【みんなが感じたあの悪寒の発信源が解ったんや。どこや思う?】
【私の所ではないので御座いますか?】
だからその顔止めい。葛葉嬢の必死過ぎる顔とウーちゃんの悪代官みたいな顔のギャップが凄過ぎるだろ?
「あの顔からすると姫様の所じゃないみたいですね。
でもこっちに話を振ってくるとなると姫様、と言うより前世の玉藻の前に関するものでしょう。
そうなると日本三大怨霊の中で玉藻の前に関わる方となれば・・・崇徳天皇。その所縁な場所と言えば京都か香川・・・京都だったら菅原道真公も釣られて暴れ出しそうなもんだから香川が震源地、ですか?」
【ワテは三大怨霊なんぞ一言もゆうとらへんで?それに香川?ゆうたら京の都のずっと向こうやないか。
何で自分はそこに行きついたんねん】
おや?これが真犯人だと思ってたんですけどね?でも当たってなくってもいいか。当たらなかったら命が無くなるって訳でも無いし。
「一つは“落ち武者”以降“猫”“オロチ”とここ2年で新しい神が次々と成り上がっている事。これは何らかの理由で霊的な力が高まっているものと推定しました。
二つ目はあの悪寒です。姫様だったら盛大な威圧をぶっ放して出てくるだろうに悪寒を振り撒いて出てくるとか、すでに出来上がった悪神の復活でなければ何なんですか。
三つ目は・・・あれです」
僕が顎をしゃくった先には、大勢の取り巻きの下敷きにされながら幸せそうな顔して伸びているアホがいる。
【あのアホゥがどないしたっちゅうねん】
「悪神の誕生で神様や仏様が僕たちに討伐を嗾けた事って今までありました?
“落ち武者”にしても“オロチ”にしても結果的に亜神だっただけで神殺しの認識なんて誰も持っていなかったじゃないですか。まぁ“猫”は目の前で神になっちまいましたから例外ですけど。
でも見えてないトコで神になっていたとしたら今頃どうなっていたんでしょうね。
ところが今回、初めて出会う不動明王が神殺しを強要してきた、つまりはかなりの上位の神が生まれてきた証拠でかなりの脅威だって事です。
だからぽっと出の亜神ではなくかつて封印された祟り神が復活したと思ったんです」
あれ?ウーちゃんの顔が引き攣っている気がする・・・やっぱりお肌の曲がり角が・・・
【何がお肌の曲がり角やねん!3000年前からワテの肌はピッチピチなんや!
それよか霊的な力が高まるって何が原因やて思うねん】
「“オロチ”が出てきたタイミングとか考えたら、恵比寿様が闇落ちしてパワーバランスっておかしくなってません?
自分たちでやっといてなんですけど・・・もしかして今のこの世界って安定してないんじゃないですか?」
だんまりを決めようとするウーちゃんに、恵比寿様の横暴な支配から解放して今は僕たちの大切な仲間の一人になっているディーテが手を上げた。
《某、稲荷神さまや我が君そして皆々様のおかげを以って生かされている身であります。
その我が身を以って我が君延いては大奥様や連なる皆様の為なら命など惜しむつもりは無いのであります。
ただ、今の状況が先主が生み出したものなら先主を追い落とす原因でもあった某が責を負うというものであります。
どうか、某を贄として崇徳院様を鎮めては頂けませんか?》
【海坊主よ、自分の気持ちはよう分かったで。せやけど、自分を犠牲にしても讃岐院は収まりはせんで。
どっちかゆうたら戦力が落ちて負ける公算が強うなるだけや。自分は自分らしゅうやってみんなを助けるんがスジってもんや。
旦那さん、この世界は元からちっとも安定なんかしてへんで。せやから自分は余計な心配なんかせんでええ。
恵比寿のボケがやらかしたんは身から出た錆なんやさかいチームシリウスに何の落ち度もないっちゅう事は頭に入れといてや。
あ、讃岐院ってゆうてもうた・・・意地悪してひっかけよう思うたけど旦那さんがよう状況を理解してはるさかい騙せんなぁ】
いえしょっちゅう騙されてる気がしてますけど。
【相手が讃岐院やゆう事も讃岐の国が震源地やゆう事もアタリや。
しいてゆうなら恵比寿の件がちぃとズレとるぐらいかな?
讃岐院が動こう思うたんも恵比寿がおらへんようになって力の均衡が崩れたゆうんがあるとは思うねんけどな。
あやつに新しゅう力が加わったゆうんが大きな要因や思うんや。
それはなんや思う?
それは・・・タマちゃんや】
葛葉嬢の顔が強張る。咄嗟に葛葉嬢を抱き寄せ頭を撫でて鎮めようとしたが、葛葉嬢の体の震えは止まりそうにない。
【いずれ教えなあかん事やから敢えて今言わせて貰うけど・・・輪廻が巡ってタマちゃんが現世に帰ってきた時に今の状況は決まっとったようなもんやった】
そう伝えるウーちゃんの顔も葛葉嬢に負けず辛そうだ。何度も九尾の妖狐が闇落ちしているのを見てきたからなのかな。それでも友達だなんて僕にできるだろうか。
【タマちゃんが玉藻の前の時の最期って覚えてるか?
・・・覚えてへんか。まぁありゃ辛い事やったからタマちゃんも旦那さんも前世に置いてきて正解や思うで。
ともかく玉藻の前が討伐された後、その体は殺生石と化したゆうんは聞いた事あるか?
あぁ若女将は知らへんか。
ほな、その顛末ゆうんを聞かせたろうやないか。結構長い話になるで、覚悟しぃや】
こうして深夜の年寄りの長話が静かに幕を開けた。
全てを見通す者・・・こ〇すばのバニ〇さんかよ
次回より3000年前を知る女(ババァとか言わないように)が舞台背景とか説明してくれる・・・筈




