第135話 亜神、潜伏する
1週間ぶりの投稿で御座います
何とか形にはしましたがやり直したい気持ちもちらほらと・・・
とりあえず読んで頂ければ幸いです
最期の時を迎える為、私は助手席に父を乗せたまま喫茶シリウスまで戻ってきました。
でも時間はもう深夜、もうみんな寝てしまっているかも知れないと思って喫茶店の裏に建てたアパートに寄ってみたけど気配はありません。この気配は根津くんのトコのみさえさんとかおるちゃんかしら?
ポンのすけとポチの気配までが無いとかどういう事でしょう。夜更かしは子供によくありません、ちゃんと叱らないといけません・・・もう私にはそんな資格なんて無いのにね。
「クーちゃんクーちゃん、もうみんな寝ちゃったんだろうから明日出直したらどうかい?」
【明日になってしまったら・・・いえもう日付は変わってしまっているので御座いますよ?正しくは夜が明けたらで御座いますね。
もしそうなったら私の決意はもう無くなってしまう事で御座いましょう。
私だって死ぬのは怖いので御座います「だったら無理しなくても」いえ、これは悪霊退散妖怪退治を生業にして参りました私なりの最後のケジメで御座います。
お父様には無理に付き合って貰って本当にごめんなさい。とどめを旦那さまに刺されてお父様やシリウスのみんなに見守られながら最期を迎える、それが私の最後の望みなので御座います】
「一番かわいいクーちゃんを目の前で殺されるのを黙って見ているなんて・・・僕には僕にはそんな事はできないよ」
【泣かないでください。それが安倍晴明に連なる陰陽師の務めなのでは御座いませんか?例え愛する妻や子供でも容赦するべからず、で御座いましたよね?
・・・それにしてもここには根津さんの奥さんとお嬢さんの気配しか御座いませんね。みんなどこにいるので御座いましょうか・・・!?】
おや?ここから少し離れた元の公園の辺りから何やら微かな気配が感じられますね。まるで結界で隠蔽でもしたかのような気配が・・・いるのは神々や高位の仏・・・それから旦那さまや薫くんたちの気配まで感じられますわ。
【お父様、少し離れた所にある元の公園にみんながいるみたいで御座います。行って見ましょう】
「クーちゃんクーちゃん、僕には何も感じられないんでけど?」
【人間を辞めてしまいますと色々と分かり過ぎてしまう物なので御座いますよ】
自嘲を籠めて私が説明しますと父は泣きそうな顔で首を振ります。
「クーちゃんクーちゃん!どんな時だって僕は君の父親なんだからね!人間を辞めたとか簡単に言っちゃダメだよ!」
今、私はこの人の娘で本当に良かった、そう思う事が出来ます。ただ、旦那さまとの事を認めてくれなかったり、旦那さまの事を悪し様に罵ったり、旦那さまに何かと嫌がらせをしたり・・・そんな事をしなかったらですけ怒。
いけません、思わず感情が高ぶり威圧が溢れてしまいます。
アパートの一室の明かりが点き、女の人の慌てたような声と子供の大きな泣き声が聞こえてきました。あらいやだ、かおるちゃんを起こしてしまったみたい、ごめんね、かおるちゃん。いつも旦那さまに怒られているのにまたやってしまいました。
私は、そそくさとその場を離れ徒歩で公園へと移動します。
街灯も無く月明りだけを頼りに歩く夜道はヒトではなくなってしまっても心細いもので早く旦那さまと合流したいと小走りになってしまいます。懐中電灯の代わりに狐火を一つ出しておきましょうか・・・こんな事が簡単にできてしまうくらい私は人外になってしまったのですね。
公園に届いてみると公園にはぐるりと結界符が括りつけられた注連縄が張り巡らされていて東洋式の結界だと一目でわかります。要はキリスト教系の何かはいないという事でしょう。というか神道系と陰陽師の合作みたいな結界ですね。中々の強度があると思いますよ?使っている呪符は私が作ったものですしね。
私は、隠形を自らに施すと手頃な場所の結界符に息を吹き込み注連縄から浮き上がらせます。すると、強固だった筈の結界が緩み、私一人が入っていけそうな隙間が姿を現します。結界は外からの刺激に敏感になるように作ってある場合があるので少しでも騒ぎが大きくならないように触れないように用心しながら中に滑り込みます。ちょっとしたスパイみたいだな、なんてふと思ってしまいましたけど赦してくださいね。
【なんじゃ、何が起きたんじゃ!ウーちゃん、わしを連れて逃げてくれんか?】
あら?こっそり来た筈なのにしっかりバレているではないですか!
でも何処のどなたか知りませんが、切った張ったの除霊屋稼業でそんな事を言ってたら明日のお天道様にお目に掛かれなくなるって宇佐木さんが言ってましたよ。隙を見せたら負けなのですよ?何と言ってもこちらは祟り神なんですから。・・・そうならない未来は無かったんでしょうか・・・
【何寝ぼけてけつかる!不動明王のボケがもたもたしてくれたおかげで向こうの方からお迎えに来てしもうたんや。
ここで逃げるとかみっともない事でける訳あらへんやろうが。いっつもそっくり返って偉そうな事ゆうとる口はどこに行った。そないな事しとるばかりやから嫁に逃げられるんや】
あの声はウーちゃん!・・・ずっと気にして貰ってたのにとうとうこんなになっちゃって・・・こんな姿、とても見せられないわ・・・
「根津、お前さんは綺麗な嫁さんも可愛い娘さんもいるんだ。残されるものの事を考えて去ってもいいんだからな」
あぁ、この声は旦那さま!もう二度と交わる事の出来ない間柄になってしまいましたが私の思慕の念は変わる事は御座いません。
できる事ならもう一度だけ抱きしめて欲しかった。
「水臭いですよ番頭さん。この中じゃ一番の若輩者ですけど命の張りどころは心得ているつもりです。
俺の力が仏神にも少しは届く事が証明出来ましたし思い残す事はもうありませんよ。美沙江と香にもいざとなったら俺無しでも頑張っていけるようにいつも言ってますから」
根津さんもいつの間にか一人前の霊能者になってしまったんですね。この気配なら弟のひでと同等程度の力を持っているわ。もうチームシリウスから卒表させてあげても大丈夫ね、私と言う試練を乗り越えられればでしょうけど。
旦那さまの言葉に甘えて逃げて行っても誰も咎めたりしないのに不器用なヒトだ事。
それにしてもチームシリウスのみんなの力が凄いと言うか凄過ぎます。
毘沙門台で当時の私と五分に渡り合えた薫くんにしても着実な加持祈禱の腕前とウーちゃんからの加護に負けない程鍛え上げた隙の無い宇佐木さんにしてもウーちゃんクラスでも来ない限り圧勝できるんじゃないかしら?その上、旦那さまに仕えるアンジェ、ピュア、ディーテの眷属たちにしてもその気になったら相性次第では“双頭のオロチ”程度なら単独でも不覚を取らない筈よ。今思えばあの時ディーテが鮭頭の方と戦っても勝てた筈だわ。本人は旦那さまから『倒せ』とは言われていないから対陣するだけに終わらせたような気がするのよね。
・・・もうもたもたしていられないわ。決着を付けなければなりません。そろそろ隠形を解く事にしましょう。
毎度つたない文章を我慢してくださりありがとうございます
これでも3回は書き直してるんですけど進歩の跡が・・・
また金曜日に出せるように何とか頑張りますのでよろしく




