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狸なおじさんと霊的な事情  作者: BANG☆
脈動する悪神と恋する乙女編
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第134話 亜神、来襲する

どこぞの丁稚がさんざっぱらやらかした駄々をいい年こいたオッサンが捏ねとります


みっともないけど我慢してね

「タダ働きはまっぴらごめんです」


【未曾有の一大事なのだぞ!この予がここまで頭を低うしてまで頼んでおるのにそなたらは我らの願いを聞き入れてくれんのか!】


 話をすり替えんな、報酬の話抜きで絶対動かんからな。それに今の僕たちじゃ100パーセント返り討ちに遭う。戦力不足だ。今まで亜神が誕生した時に悪寒が走った事なんて無かった、つまりは今までの常識では測る事は不可能なんだ。葛葉嬢がいないのにそんなのに対応できるとは思えない。仲間や眷属たちを犠牲にしても勝てる気がしない。目の前で“クトゥルフの猫”が亜神に変わる瞬間を見ている僕がそう感じるんだ。まだこの業界に首を突っ込んでいなかった“シリウスの落ち武者”の時はともかく“双頭のオロチ”が誕生した時だって何も感じなかったんだ。それを感じたって事は遥か格上の存在が誕生したって事だ。


「さっきも話したと思いますけど、タダ働きが嫌なんです。

 出すものだすって言うんなら僕たちにだって考える余地ぐらいあります」


【なんと嘆かわしい!!末法を迎える間際にこのような不心得者にしか力を与えられていないとは!!】


 ちなみに末法とは仏教におけるこの世の終わりの事でキリスト教のハルマゲドンやら北欧神話のラグナロクに相当する事象、そして末法の後は弥勒菩薩が救済に地上に降りてくるとか何とかそんな話だったと思うんだけど。


「不心得者で悪うございましたね。

 何にも出す気はないがボランティアで死んで来いとかどの口が言ってるんですか?

 何度も言ってますけどタダ働きが嫌なんです!!」


 モブ2号んトコの香ちゃんにひもじい思いをさせる訳には行かんのよ!こんな僕にさえ懐いてくれる可愛い娘にみじめな思いはさせられません!でも葛葉嬢がいないんだから受ける気は無いんですけどね。


【稲荷神殿、この一大事に細事に拘るこの者を説得してくださらんか】


 不動明王の奴、報酬を出したくないもんでウーちゃんに泣きつきやがったよ。


【ナニゆうてけつかる。オドレの溜め込んだ財宝のほんの一かけらでも出してやりゃあこ奴は首を縦に振っただろうさ。さんざ『タダ働きは嫌や』ゆうとんのやさかいそれくらい解っとんのやろ?

 それをあれやこれやごねて話をもつらかしとんのはオドレの方やないけ。

 ワテらはこの件に関してははらくくっとるわ。滅びるならそれでもええ最後の望みの一つも聞けんで何が神や、何が仏や。

 この事態を招いたんは他でもない不動明王、オドレや。

 それに滅ぼすかどうかはあの悪寒の主が決める事や、ワテらやオドレらの力の及ぶ範囲はとうに超えとるわ】


 ウーちゃん、男前だねぇ。不動明王の器の小ささが際立っちゃって失笑ものだよね。


【予は既に不当な賭けを強要されて1000を失っておるのにこの上報酬を差し出せと申すのか。

 うぬは鬼じゃ。神の名を借りた鬼じゃ。来世は無いものと思え!】


 不動明王は仏の癖に呪詛の言葉を残して姿を消した。やっぱり金出したくなかったんだな、このドケチめ。


【ワテらに輪廻転生の思想は無いさかい無用な呪詛やな。アヤツ結局報酬は約束せぇへんかったけど、タマちゃんの旦那だんさん、どないすんねん】


「どないすんねんとか言われましてもね。どげんもこげんもなかくさ、なるようになるったい」


 八百万の神々や不動明王の後を追って姿を消しつつある仏神たちは元より僕の仲間や眷属たちでさえも固まってしまった。チームシリウスは法事に付き合って長崎に一緒に行ったよね、僕が地元の方言を使えてもおかしく無いでしょ?


 他所のヒトにもわかるように言うと『どうもこうも無いさ、なる様になるんだ』だけどそんなに難易度高かった?


「おじさま、今までネコ被ってたんですね。でもそっちで通してくれた方が親しみやすいですわよ」


 君の関西訛りのイントネーションもとっても親しみあるけどね、ちんちくりんも普段地元訛りを隠そうと努力してるでしょ?地方出身のコンプレックスってまずは言葉からだからね、仕方ないだろ?


 なんか気の利いた事を絞り出そうと口を開いた時、その場にいた全員が背筋に氷の柱でも突っ込まれたみたいな悪寒に襲われて思わず棒立ちになった。


【なんじゃ、何が起きたんじゃ!ウーちゃん、わしを連れて逃げてくれんか?】


 あのしわがれ声は白髭ハゲ(猿田彦命)か。性懲りもなくここに来ていたのか、一発ぶん殴ってこようか。


【何寝ぼけてけつかる!不動明王のボケがもたもたしてくれたおかげで向こうがホンマに起きてきてもうたんや。

 ここで逃げるとかみっともない事でける訳あらへんやろうが。いっつもそっくり返って偉そうな事ゆうとる口はどこに行った。そないな事しとるばかりから嫁に逃げられるんや】


 別に興味も無いがあのハゲ、嫁に逃げられていたのか・・・いい気味と言うより僕との違いは何なのかって思えちゃうのは何だろう。葛葉嬢に逃げられて片意地張って後を追わず今最期を迎えようとしているのは間違いなく僕の失策だ。ここは妻子持ちのモブ2号やまだ若いカオルン少年ちんちくりんいやそれどころか眷属たちも僕から切り離して自由してやって少しでも生き残る確率を上げてやらなけりゃならない。


 意を決してみんなの方を向いた時、僕の考えが間違っているのかも知れない事に気が付いた。


 チームシリウスのみんなはもう覚悟を決めていた。それでも僕は言わなきゃならない。


根津(モブ2号)、お前さんは綺麗な嫁さんも可愛い娘さんもいるんだ。残されるものの事を考えて去ってもいいんだからな」


「水臭いですよ番頭さん。この中じゃ一番の若輩者ですけど命の張りどころは心得ているつもりです。

 俺の力が仏神にも少しは届く事が証明出来ましたし思い残す事はもうありませんよ。美沙江と香にもいざとなったら俺無しでも頑張っていけるようにいつも言ってますから」


 そんなにまぶしくて清々(すがすが)しい笑顔で僕を見ないでくれ。打算と衝動で生きてきたのにそんな僕に巻き込まれてるお前さんがそんないい顔するなんて罪悪感が半端ないんだよ。


 そんなやり取りをしている間にも、悪寒は収まったとはいえ特大の亜神の気配が近づいてきていてもう逃げる事は叶わないだろう。消え損ねた仏神や勝利の余韻に浸っていた八百万の神々の表情には、恐怖、畏怖、無念といった表情が見て取れる。例外と言えばウーちゃんがしっかりと顕現していて諦観からの穏やかな表情しているのと八幡様がまだ僕たちに期待しているのか僕たちに真摯な眼差しを向けている事ぐらいだろうか。


 そしてその存在がこの公園へと入ってきた。

ええと、次回から金曜のみの更新とさせていただきます


言い訳はしたくありません 単に筆が進まないんです><

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