第130話 狐の神様、賭けを仕切る
昔からスーパー戦隊シリーズって一人を寄って集って苛めるからいじめを助長するなんて話がありましたけど人間相手に寄って集ってとか恥ずかしくないんですかね?
「おや5対1の決闘ですか?僕としては戦隊モノの怪人じゃないんですからタイマンでやって欲しいとこですけど?」
僕の抗議に鼻を鳴らして不動のボケが胸を反らす。
【念には念を入れて慎重に対処する、これが予の身上だ。
四天王を破れぬ程度の腕前では予に挑むなど夢のまた夢。勝ち上ってこそ予に対する挑戦権が生ずると言うものだ。
解ったらサッサと四天王と手合わせして惨めに命乞いでもするがよい】
それを聞いて慌てて僕の元に応援に来ようとする仲間たちに、不動のカスは子飼いの仏神を使って足止めをしようとする。
【これはそこの浅墓な下郎が望んだもの。手出しは無用だ】
これに対してカオルン少年とちんちくりんは、自分の倍ほどの重量を持つであろう仏神たちを次々と薙ぎ倒して僕の元にやってこようとする。この予想外の事態に不動のゴミは慌てふためいてウーちゃんを呼び出した。
【おい、稲荷神!あ奴らを食い止めよ!】
【あ゛あ゛?なんでワテがオドレの顎で使われなあかんのや。寝言は寝てから言いや。
でもなぁ、勝負はこのままじゃオドレらの惨敗になるんは必定や。そないなったら賭けてるワテらかておもろない。
そや、若女将、おっぱいちび。自分らどっちか一人であの下種い仏神どもを叩きのめさへんか?そしたら旦那さんはあのくそムカつく不動のボケカスをけちょんけちょんにできるやろからなぁ】
ちょっとウーちゃん、しがない後衛職の僕にあのごつい筋肉バカを一人でやれとでも言うんかい!でも、それだったらアンジェやピュアやディーテが使えるから楽勝かも。
【もちろん、旦那さん。眷属の加勢はなしやで。そないなったら瞬殺で賭けにも何にもならへんさかいなぁ】
鬼だ。神の皮を被った鬼がここにいる。どこの世界に炎の剣をぶら下げた神に勝つ一般人がいる!
【何を仕切っているのだ!この場は予の決めた掟で予の思う通りに処刑する場ぞ!何を部外者が勝手に予に指図するのだ!】
【何を寝惚けてけつかるんや。
オドレがワテに食い止てくれゆうて拝み倒したさかい、こない無理な裁定をしとるんやないか。
それとも何か?あの二人の横に積みあがっとんのが目に入らんのか?】
命令してたはずが悪逆非道のウーちゃんに懇願した形に話を作り変えられて、さぞかし不動のクソ野郎は血の涙でも流して憤慨してるんじゃないだろうか。そう思ってウジ虫野郎の方をチラ見するとヤツは呆然と立ち尽くしていた。
ヤツが見ている方を改めて確認するとカオルン少年とちんちくりんの脇にはそれぞれ二人の突進を阻もうとしたらしい仏神たちが20柱以上小山になって積み上がっていた。ちなみにモブ2号でも5柱の仏神を薙ぎ倒していたからこいつらの強さってホントは大した事無いんじゃないのか?
借りてきた配下の四天王はと言えば、こちらはやる気満々でザ・脳筋ズといった風情で柔軟体操をしている。おっさんよりぴちぴちした女の子の方が相手としては楽しいかも知れないけどさ、女犯とかにひっかからないの?
【あのような歯ごたえの無さそうな中年男よりそこそこ力を持ったおなごの方がやる気をそそると言う物。ここは稲荷神殿に免じてこれで我慢すべきであろうな♡】
【これ広目(天)よ、不謹慎な事を言っておらずに真面目に相手をせぇよ?圧し掛かろうが前後から攻めまくろうがこれは不可抗力なのじゃからな】
【どさくさ紛れに女犯を犯そうなどと不心得はよさぬか。隙を見せれば我等とて土を喰らう羽目になるのだぞ】
【この中では唯一あの娘たちの動きを目の当たりにしている多聞(天)がこのように慎重なのだ。用心に用心を重ねて悪いという事はあるまいよ。
しかし増長(天)よ、わしは女犯で罪を問われとうは無いから後ろから攻めさせてもらうぞ】
・・・以上四天王の広目天、増長天、多聞天(毘沙門天)、持国天のありがたいお言葉でした・・・世俗に流され過ぎじゃねぇのか?
【賭けの基本レートは四天王VS若女将で2.5対1、四天王VSおっぱいちびで3対1やで。後はオドレらの賭け次第で上がりも下がりもするで。
歴戦の勇者に対して眷属任せで惰眠を貪る四天王がどこまで持ちこたえられるかが勝負の肝や。今のは単に四天王が5分持ち堪えられるかどうかのやで。さぁどうや!はったはった!!】
・・・ウーちゃん、いつからアンタは胴元になったんだよ。
【ウーちゃん、単に勝ち負けだったらレートはどうなってるのさ?】
【なんやサラちゃんやないの。いつこっちに来たん?
まぁそれはええとしてあの下種どもと“狐塚葛葉とその一党”の内の一人とでは今んとこ賭けは成立しとらへんな。ワテの儲けを吐き出したにしても四天王の勝ちに賭けるアホゥなんざ一人もおらへんて】
【あら、不動様も賭けてないの?薄情よねぇ】
【どないするんや、下種の極み野郎】
【げ、下種の極みとは誰の事だ!】
【大人気なく5対1で決闘しようなんぞと考えとるオドレの事に決まっとるやないけ、ボケェ!
ただ、下馬評は四天王は持ちこたえられんとそのままオドレとワテの元使徒の勝負になるんやて見とるみたいやけどな】
【馬鹿馬鹿しい!賭けておるのは皆出雲勢ではないか!(八百万の神は出雲に年1で集まる事から不動明王はそう呼んでいる)
我が仏門に帰依する神々が一介の人間如きに敗れる事なぞありはせん!よし、四天王の勝ちに1000を賭ける!】
こうしてウーちゃんの口車にまんまと乗せられて決闘は四天王対カオルン少年(元修験者のちんちくりんは辞退したと言うか嫌気がさして関わり合いになりたくない様子だった)の激突が第1ラウンド。そしてそこでカオルン少年が勝てば不動明王対僕の対戦が待っている事になった訳だ。因みに最終的な賭けのレートは勝敗で20対1、5分間耐久で6.5対1といずれもカオルン少年の勝利を疑う者がほとんどいない状況だった。
確かにカオルン少年は、4対1でも今までも複数の悪霊相手に立ち回ったりしているから何の心配も無いだろう。ただ眷属の手助けも無く自力で僕が不動明王相手にどれだけやれるかはどうだろう。どこまで抗えるかの勝負だと思うんだけど。
神様を千切っては投げ千切っては投げってどれだけ仏神って弱いのか?って感じですけどモブ2号でさえ他の16強に行ったら不動のエースになる事は間違いないくらいの設定にしてます
葛葉嬢の弟の秀和よりも強いくらいのレベルだけど周りが凄過ぎて目立てないだけだったりして




