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狸なおじさんと霊的な事情  作者: BANG☆
脈動する悪神と恋する乙女編
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第127話 狐の神様、横領を見破る

名探偵ウーちゃん登場


今回はちゃんと予約が出来てます

【オドレに頭ごなしに文句言われる筋合いは無いんやど!ちったあものを考えてしゃべらんかい、この脳筋が!】


 そんな事をあの不動明王に言い放つったぁさすが戦う豊穣神の面目躍如だよね、ウーちゃん。とはいえここは面倒事回避の為にもちょいと探りを入れましょうかね。


「後学の為にも毘沙門天様のお話をお聞きしたいですね」


【さすがはタマちゃんが惚れた男や、ここは突っ込んでおくんが定石やろ?】


 僕は黙って頷くだけにしといた、だってこの面倒なの(不動明王)に絡むの嫌なんだよな。餅は餅屋で神様に任しときゃダイジョブだろ?


【毘沙門天殿、自分アンタそん時、狐塚葛葉とその一党の装備を見てどない思うたんや】


 毘沙門様は、上司(不動明王)の顔色をうかがいながらウーちゃんに答える。


【雪山に来るのにバケツなんぞを持って何をするのであろうかと・・・】


【バケツは眷属を運ぶのに必要なんやから仕方ないやあらへんやんか。

 それじゃのうて問題なんは装備や。自分、どれくらいの妖怪仕留める思うたんや】


【・・・我輩、陰陽道には通じておらぬのでどれほどの物かは断言できぬが、大凡おおよそ悪霊ならば楽勝で妖怪ならば己級いや戊級までは封じる事が出来ような】


【せやろうな。ワテらが注文流したんは初級の妖怪退治やったさかいその辺りの装備で来るんは当たり前やがな。

 せやけど実際の相手は、初級の妖怪どころかバリバリ位が上がって亜神から更に低級神に“じょぶちぇんじ”しとった訳や。

 そないな時、自分ならどないすんねん】


 ウーちゃんが意地わるそうな声出してるよ・・・底意地悪いが正解だったな。


【撤退か応援要請か・・・!?】


【やっと気付きおったか三流武神め。

 あの谷は狐塚葛葉とその一党にとっちゃ旧恵比寿廟の連絡網で袋の鼠やった筈や。実際毘沙門台の祠を通して“双頭のオロチ”が姿を現しとんのやさかい間違いないやろ。

 要は撤退も応援要請も現実不可能やちゅうこっちゃ。後はあるもんで構築した戦力で戦うしかあらへんゆうこっちゃな。

 そんなトコに欲かいた自分やら自分勝手に浮気話をでっちあげて一人で盛り上がっとるヤサカのドアホやらがノコノコ現れりゃ利用せん方がおかしいやないか。

 “双頭のオロチ”戦は運で騙し討ちしたんやのうて臨機応変に他力を利用した応用力の勝利やったゆうんがワテの分析やけど不動の、文句あるか?】


 ・・・随分買いかぶられてるんですけど・・・脇の辺りに妙な汗が・・・臨機応変と言うより行き当たりばったりでとにかく手に触った物を投げてるようなもんなんですけどね、実のところは。


 ゴゴゴッとBGMが聞こえそうな顔をして不動明王がウーちゃんをにらみつける、よっぽど悔しいんだろうね蟀谷こめかみの血管が突き破って出てくるんじゃないかって位に浮き上がってるんですけど。


【・・・くっ!くだんの妖怪の情報を出したのは誰だ!】


【・・・我輩です。“怨調”から上がってきた報告をもと狐塚党チームシリウスに処理させるべきと判断し初級相当と診断を下したのは我輩です】


 狐塚党ってのは初めて聞きましたけど仏神の中で流行ってるの?その呼び方。でも毘沙門様顔色悪いですよ?蒼白通り越して土気色だもの。


【では“双頭のオロチ”関連の予の元に参った報告書とは随分と感触が違うのはなぜだ?】


 葛葉嬢ほどじゃないけど中々な威圧だねぇ。大方毘沙門様は自分の活躍シーンを挿入でもしたんじゃないかな?そうしないと立場無いからね。


「それは毘沙門天様他の神様の力を勝手に借りて討伐しちゃったんです。当然手柄も分配されるべきだからじゃないんですか?」


 僕の助け舟に、毘沙門様の顔に安どの色が見え不動明王の渋い顔がますます渋くなっていくんだけどそんな事は僕には関係ない。


「それはともかくとしてあの時の報酬がまだ振り込まれていないんですけど、いつもらえるんですかね?」


 びついた蝶番ちょうつがいを無理やり動かしたような音を立てて不動明王の首が僕の方に向き直る。お金の事は大切だからちゃんと確かめとかないとね。


【・・・こ奴は中々面の皮が厚そうではないか】


「何はともあれ正当な報酬を頂きませんとかすみを喰って生きる仙人ではありませんから」


【予は正当な報酬は既に払われていると承知している。欲を掻き過ぎるのは身を滅ぼすと心得よ!】


「正当な報酬とは己級の前金で10%分を貰ったからという事ですかね?」


 霊能業界の分類じゃ霊障は上から神・甲・乙・丙・丁・戊・己・初に分けられていて成功報酬は最低ランクの初級で500万それから1ランク上がる毎に倍になるようになっている。妖怪は難易度の関係で霊障より1ランク上で処理されるから“怨調”が調査した段階では妖怪の初級、つまり霊障己級扱いの料金設定になっていた訳だけどその後の“北の大地”が死者を出す事態になった事でランクが・・・上がらなかったんだよね。最悪でも妖怪戊級つまり報酬4000万クラスになる筈が1000万のまま、北の大地が被害を受けた事も僕たちは現地に入るまで教えられなかったのはどこの指示だったのか聞きたいところなんですけど。


【己級の前金しかもらっていないだと?予は妖怪丁級(霊障だと丙級、報酬8000万クラス)で当たれと指示を出した筈であろう?】


【・・・もちろん、吾輩が手配して日霊連(神道系霊能業界統括団体)に連絡いたしました!】


 毘沙門様、全救連(仏教系霊能業界統括団体)じゃなくて日霊連に連絡?それに自分で妖怪初級でしたって言ってたよね?


【毘沙門天殿は仏教系の“怨調”でミソが付きキリスト教系の“北”がやらかしたさかい、神道陰陽師系っつうか自分ら(チームシリウス)にに丸投げしよ思うたんやろ】


 うちに回る前にかんだ“清浄社”は何もしないまま訴えられただけで手を引いてるし、最初からシリウス案件だと思ってた節もあるんだよな。


「己級のままですか?」


【それに付いちゃワテらも確認が甘かった思うとる。せやけどホンマに100万しかもろうとらへんのか?】


 黙ってちんちくりんが銀行取引の一覧を見せるとウーちゃんが唸り声をあげる。


【己級の満額どころかここ三月の間、頭金しか入っとらんやないけ!窓口は誰や!】


【我は玉藻の前様の父君でいらっしゃる日霊連の専務理事に一任しておりましたが】


 だからお諏訪様へりくだり過ぎだって。『玉藻の前(葛葉嬢)の父の日霊連の専務理事』?あの陰険野郎が絡んでるのかうちの財政破綻には。


【稲荷神!うぬら(お前たち)は自分たちの窓口も碌に指導できんのか!】


【それはオドレらが手順踏んで全救連から日霊連に話を付けさせなんだからゆうんもあるんやないんか?

 さり気のう自分らのした妖怪初級の依頼も誤魔化しよってからに。

 まぁええ、今から日霊連に踏み込んで不正をたださにゃならんのう。フッフッフッ】


 こうして葛葉嬢の父による実の娘に対する横領事件は明るみに出たのである・・・はいいとして、ちゃんと報酬貰えてない上に出陣ってのは無効にならないのかね?

狐塚父の裏金作りの絡繰りが見えた所でまた次回

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