第121話 狐の神様、花見する
ここはウーちゃんサラちゃんの大年増コンビの入浴回になっております
余り色気はありませんがそこはほれ『なろう』という事で笑って許してください
【あれからもう2年かいな。早い様な遅い様な・・・関わってもうてからこない振り回されるとは思わんやったわ】
桜の花も終わって下界が大人しゅうなった頃合で、ワテはタマちゃんが掘り当てよった山間の温泉へそこの主となってもうた弁天を訪ねて少々出遅れた花見の宴としゃれこんでたんや。
結局ここは、弁天とタケ坊の嫁のヤッちゃんが後見になって、タマちゃんの旦那さんが差配する場所になってもうたんや。それでコヤツが入り浸っとるっちゅう訳や。
【ウーちゃんは“狐の一党”の立ち上がりから付き合ってるおるではないか。そなた、あの頼りなさそうなそれでいて計算高そうな連中をどう思うておるのか?】
【サラちゃん、ワテは立ち上がりからやのうてタマちゃんと旦那さんが出会うた時からの付き合いやで。そこらへんのぽっと出とは深さが違うゆうんかな。タマちゃんに至っちゃ殷の頃からの付き合いやさかい何千年になるかのう。
そいから狐の一党やのうして狐塚葛葉とその一党もしくはチームシリウスやで】
【相変わらずどうでもいいような事には几帳面じゃの】
【いつもながら一言余計や。あの連中に付いちゃ旦那さんの辛抱次第でどないでも転ぶんやないかな?
あのおっさんの不安要素やったゴミどもはサラちゃんたちにも手伝うてもろうて神隠しにしたさかい暫くは安定する筈や。
これであのアホが肚括ってタマちゃんを迎えてくれてたら万事世の中平和になるんやけどな】
ここでアホのトコの丁稚の嫁ダヌキがお盆に乗せた徳利を運んでくる。ちゃんと気の付くええ嫁やないか。アホのトコに修業に来とるちびたちの評判がワテの眷属の中でええのはコイツに鍛えられとるせいやな。あのポンコツ亭主の代わりにコイツを丁稚に取り立てた方がええのんとちゃうか?
あかんあかん、他所の人事に首突っ込むんは御法度やで。
【それにしても狸の大将はなんで出雲にまかりこさんのかのう?】
【また珍妙な綽名をこさえよってもうアレには下界で3つも二つ名が付いとるんや、余計な事はせんといてんか?】
【二つ名が3つじゃと?面妖なモノじゃのう】
【ワテら神々を人前で平然とあしらいよるから“神ころがしの達人”(少しはワテらの権威やとかメンツとか考えて欲しいもんやわ)、あの癖のあるタマちゃん、若女将、おっぱいちびちゅう仲間たちはおろか杏莉、西洋鳥モドキ、海坊主なんぞとゆう一匹でも配下にできれば大物扱いして貰えるような大妖を手懐けとるゆうんで“猛獣使い”、そいからあの一党を一手に仕切っとるから“シリウスの番頭”。
どれを取ってもあの業界やのうても一目置かれる二つ名や。
尤もワテらの張った結界のおかげで本名は全然広まらへんけどな、クワックワックワッ!】
【クワクワクワではないであろうよ・・・そんな事よりその達人?は何で出雲に寄り付かぬのじゃ?】
【・・・しょっぱなにワテんトコの馬鹿どもが有り金全部毟り取っとるさかい、信用しとらんのやろうな・・・】
ワテんトコの眷属の仕業やのうたらどれだけ気が楽か分からへんで、ったく。
【まったく、何をやっているのかのう・・・それではあの件も伝えておらぬのか?】
【伝えると言うか与えると言うかそうしよう思うたら、それなりの場ちゅうか用意っちゅうかそないな準備っちゅうもんがあるやないか。
出雲に来てくれへんかったらワテらとしてはお手上げなんよ】
【見事なまでの自業自得じゃのう。それならば九尾の妖狐を上手い事丸め込んで出雲に搔っ攫わせて来ればよいだけの事では無いかの?】
部外者や思うてなんて無責任な事を言いくさるんや、ホンマ!
【アホな事ゆうたらあかんで。タマちゃんに自分の旦那を掻っ攫って出雲に来いとかゆうてみぃ、一発で悪神発動してまうやないの。
その場で上手い事ゆうたかて旦那さんに駄々捏ねられてジ・エンドや。嗾けたのは確かにワテの方やったけどタマちゃんの旦那さんに対する依存度ゆうたら病的なモンがあるんやど?
今度ああなったらこの星はもう終わりやで?あの頃と違うて今は人間どもの文明は進み過ぎてしもうた。
あっという間にタマちゃんの呪が世界中に広まって人っちゅうもんが綺麗さっぱりおらんようになるんが目に見えるようやで。
人間がおらんようになるっちゅう事は今あやつらが世界中でやらかしとる事を制御するモンがおらんようになるっちゅうこっちゃ。
制御するモンがおらんようになった原発やら石油プラントやらがいつまで正常に動く思うとるんや。やがて水が枯れ空焚きするようになって世界中のあちこちで放射能が垂れ流しになり材料の補給の無い工場からは火の手が上がり有毒ガスを撒き散らすんや。
そうなろうもんなら人間がおらんようになって天下が回ってきた生きモンたちはただ死ぬしかあらへん。
かくして死の星の出来上がりって訳や
それでのうても今、タマちゃんのせいで三大怨霊に祭り上げられてもうとる讃岐院がタマちゃんの気配に触発されたやないけど妙な動きをしとるんや、堪忍してぇな】
【そんなに早う呪が広まる物かのう?】
【何寝ぼけてけつかるんや!800年前と今とどれだけ移動速度に差があると思うとるんや!
あの頃は精々馬程度しか急ぐ方法は無かったんやで?それが今じゃどうや、飛行機と言わんでも自動車程度でも馬より遥かに速いんやど?
それに飛行機があれば容易う海を越えられんのやど?あっという間に呪が広がってまうのは判り切った事やないか!】
事の重大さに気ぃ付いてサラちゃんは口に運びかけた盃を盆に戻してもうた。
更に思いのたけを言い募ろう思うたけどワテにはできなんだ。
【なんやこの感覚は!】
まるで温泉が一瞬で凍り付いたかのような悪寒が全身に走り手に持つ盃が零れ落ちる。サラちゃんにしても顔面蒼白で何があったのか探ろうと血走った眼で周囲を見回しとる。
思い出したわ、この感覚。
またぞろ悪神が出て来よったんや。・・・またあのタヌキに頭を下げなあかんのかいな・・・
ランキングに顔を出すとかありえませんから好き勝手書いてますけど弁天様の頭に乗ってる奴ってウカっていう奴だそうで要はウーちゃんの化身みたいなモンが付いているとか調べてて驚きますよね
勝手にウーちゃんとサラちゃんが友達同士みたいな設定にしてたら実は付属品とか、弁財天を八百万の神に比定すると宗像三姉妹の長女になるとか色んなトコで差し障りが出てくるんでこの話の中の設定だという事を忘れずにお読みくださいね