第117話 狸、怒られる
ウーちゃんの悪だくみにおっさんは巻き込まれるのでしょうか
「ご教授お願いいたします」
【いつもそないな謙虚な態度でワテに向こうて欲しいもんやなぁ♡】
見えてたら一発ぶん殴るトコですけど幸か不幸か神域でもない限り僕にウーちゃんの姿が見える事は無い。
【なんぞまた余計な事考えとんのやないやろうな】
「教えて貰う立場でそれも死活問題ですからそんな余裕ありませんよ」
勘だけはいいおばはんだぜ。
【ちっ!カマ掛けても尻尾も出さへんのか、このクソ狸め!
ほないくで。まず恵比寿の祟りについてや。
自分らは海坊主を開放する為にその主の恵比寿を追い落として闇落ちさせた、これに相違ないな?】
「そうしないとディーテを討伐しなければならない状況でしたのでやむを得ず、ですが」
【まぁ、可愛い人魚とクッソ生意気な無能なオッチャンを天秤に掛けたらそうなるわな。
それでや、追い落とされた恵比寿は自分らにどういう感情を持った思うねん】
「反省はしていないようでしたから僕たちを恨んで当たり前だと思いますね」
【せや、善行したゆうたかてやられた側が恨まんゆうんはまずあり得んこっちゃさかいな。
反省するようなタマやったら抑々討伐されるような事はしでさんからな。
そこで奴は何をする思うねん】
「仕返し、ですよね。そこでさっき言ってた祟りが出てくるんですね」
【話がサクサク進むから楽でええわ。祟ろう思うたらどないすると思う?】
「まず弱点を探してそこに付け込む・・・」
【気付いたようやな。“狐塚葛葉とその一党”にとっての弱点、それは自分や。
タマちゃんにはちょっかい出そう思うたかて海坊主もおらんようになった恵比寿にゃ何も出来ひん。実力差が半端ないさかいな。
若女将についちゃ近くに寄るにもなんもでけんほどの闘気をいつも撒き散らしとるさかいあの軟弱者は手ェ出せるもんやない。
おっぱいちびに至っちゃワテの加護が効きすぎてて闇落ちしたアイツじゃ側に寄っただけで消滅してまうかも知れへん危険人物や。これは新入りのボンクラも同じや。
それに比べたら自分の扱いゆうたら屁みたいなもんやないか。猫の王かて空の覇者にしたって側におらへん事がある、海坊主にしたって水が無けりゃ金魚と同じや。その上、タマちゃんの精神の拠り所になっとるさかい自分をやったらチームは崩壊するのは明白や。
かといって身辺警護は猫はうろついとるし鳥は飛びこうとる。中々近くに近寄れんかったけどワテらが張った結界にほころびがある事に気付いたんや】
「結界ですか?」
【タマちゃんが悪神になるパターンゆうんかな、そないなもんがいくつかあってやな。その中の一つに自分が廃人になるゆうんがあんねん。
要するに姉貴どもが押し寄せてきて自分が壊れるって奴や。今がそうやろ?
そうならんようにワテらが結界を張ってあいつらが認識せんように結界を張ったんや。ところが自分が使徒から外れたおかげでワテの力がガタ落ちして結界に穴が開いてもうた。
直に自分と係わったもんしか結界作りには参加してへんかったから恵比寿の力は入ってなかったんやけどあいつは結界の構造を知っとる。
そしてアイツは結界の穴を拡げて姉貴どもに自分を認識させる事に成功した。
大方力を使い果たしたアイツはその辺を漂いながら事の顛末を確かめてから消滅しようゆうんやろな、結界の穴を拡げるゆうんは真面な結界壊しに掛かるよか楽やけどそれでもワテでも調子がええ時にやって100年単位で寝込むくらい、力を削がれたアイツやったら存在の存続に係る消耗な筈やからな】
「それじゃもう僕は助からない訳ですか。狐塚さんに悪い事しちゃったな」
【あーもう、どこまで他人行儀なんやねん!タマちゃんはアンタの嫁や!嫁を幸せにするんは亭主の甲斐性や!なんでそこで諦めんねん、タマちゃんが絡まん奴やったらこの場で縊り殺すところやで!】
えっ?ガチでウーちゃんに怒られてる?それに葛葉嬢を嫁に取った事実はありませんけど、布団に潜り込まれても鉄の意志で触ってませんから、指の一つ髪の毛一本に至るまで自分から触りに行った事はありませんから!
【タマちゃんにしてもこいつにしても似たり寄ったりの頑固モンやで、ったく。
逸れた話を戻すで、難しい話やけど方法はある。
一度認識されたゆうんを白紙に戻すゆうんは不可能や。そうさせん為の結界やったさかいな】
霊能業界で僕の名前が一向に認知されないのは結界のせいだったって訳か、じゃあこれからは認知される?いや、その頃には僕は壊れているか・・・
【そやったらどないすればええんか。
そう言いたいトコやろ?
まず一つはあいつらだけで犯罪を犯させて服役させるように誘導する。これはあいつらの事やから自分らを巻き込むのは間違いないさかい却下や。
次はどうにかして海外に出す。これは下のカマキリに関しては有効や。亭主が海外赴任する予定になっとるからな】
「単身赴任してお互いに羽を伸ばすのが関の山ですよ」
【そこまで読んどったか・・・しゃあない次の手や!
チームシリウス丸ごと移住する、これでどうや!そこで音信を断てば二度と会わずに済むで!】
「下の姉のトコは転勤族でしたから土地勘が無いトコってそんなに無い筈ですよ」
【そないバッサリ話をぶった切らんでもええやないか。
後は二人ともぶっ殺して「神様がそんな事言っていいんですか?ここにはヤサカ様だっていらっしゃるんですよ?」ものの例えやないか、目くじらを立てんでもええやろ?
服役させるのもダメ、海外赴任もダメ、移住もダメ、殺すのもダメって後はどうするっちゅうねん】
だから無理無駄無茶はみっともないっていつも言ってるでしょ?誰も来ない所に一人で行ってこっそりと一生を終えるしか手は無いだろうな。
【自分なんぞよからん事考えとるやろ・・・自分にもしもの事があったらこの国が亡びるゆうんは解っとんのやろうな】
普段ポンコツな癖してホントこんな時の勘は鋭いんだから。
【まぁええ、とにかく帰りは自分らは汽車で帰ったらええ。少しでもあいつらと一緒にならん方が気が楽やろうからな】
「見てないと何をやらかされるか心配になるんですけど」
【その段階であいつらの術中にハマっとるゆうんや、ボケェ!
つまらんこと気にしとらんで家族孝行をして帰らんかい。出来たら出雲に寄ってくとよろしいがな】
「それじゃまっすぐ帰る事にします。助言ありがとうございました」
こうして波乱の帰省は終わる事になった。
除霊業界でおっさんの名がなぜ真面に広がらないのかがバレてしまいました
予想できた方は結構いらしたんじゃないでしょうか まあこれが筆者の頭脳の限界という事で長い目で見てやってくださいね