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狸なおじさんと霊的な事情  作者: BANG☆
荒ぶる悪魔たちと嘆きの狸おやじ編

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第114話 悪魔、逃げる

神は転がせても姉は転がせない 苦手と言う物は骨の髄からダメなもので

「父さんたちの13回忌の事で来たのかと思っていたけど違ったのかな?」


 もしその件で来るのなら店の営業時間を外して来るのが礼儀だと思うけどね。そんな事を言った所で欲の皮が突っ張らかって迷惑を掛けて困らせて金を引き出そうとかしか頭に無いんだからどうしようもない。


 そのおかげで、昔はこれで女性と言うもの全てに畏怖や恐怖を感じて逃げ回らざるを得なかったんだよね。


「あら、少しは常識ってもんをわきまえるようになったのね、アンタも。

 あたしたちもこれで少しは人様に後ろ指を指されるような事は無くなりそうだわね」


 人聞きが悪い言い方をされているが仮通夜も通夜も本葬も初七日四十九日に至るまで、それどころか一周忌三回忌七回忌に至るまで僕が一人で仕切ってきたんだけどね。両親ともに人付き合いがいい方ではなかったから碌々親戚たちも友人たちも集まってはくれなかったが出席してくれた人からはよくやったとしか言われた事は無いんだ。そしていつもその後にこう付け加えられてたもんさ『あの二人が邪魔しなきゃお前も楽だったろうに』と。


 法事の時に1円も払わなかったのはまだしも客の名を間違えて僕のせいにして笑いものにするとか、おときの膳で内容に散々大声でケチをつけた挙句に他人の膳にまで手を出そうとしたりとか、包んできた額が少ないといちゃもんを付けたりとか、その挙句にその香典を全部抜いて二人で使い込んだりと暴れ回ってくれたからどんどんと元々少なかった参加者が更に減って七回忌の時点で参加者は僕たち姉弟と姉たちの夫そしてその子たちだけになってしまった。その後にゴリラ女(上の姉)の亭主は失踪したんだよな。


 当てにできる他人の金が無くなった時点でゴリラ女(上の姉)は怒り狂って寺で暴れ出し多額の賠償金を払った上で破門にされるというこの上ない恥辱を味あわされているのに『これで少しは人様に後ろ指を指されるような事は無くなりそうだ』だ?アンタの脳みそには記憶回路は付いていないのか?


 アンタが聖人君子ならこの世に犯罪者なんて出てくる筈無いだろう!アンタよりひどい奴がこの世に存在するとは思えない。


【兄貴ぃ、親御さんの13回忌やるんだったら我が八幡神社が総力を挙げてやらせて頂きやすっス】


「八幡様、お気持ちは有り難いですけど、うちは仏式で法事はやりますんでお構いなく」


 即答で僕に断られて八幡様はがっくりと膝を着き頭を抱えて天を仰ぐ・・・だからオーバーアクションが臭いんだって。


「どこのガキか知んないけどさ邪魔なのよね。さっさとどっかに行ってくんない?あたしが怒り出す前にさ!」


 ・・・少なくとも来年一年の幸運はゴリラとその家族の上には来ない事が確定したな。僕?弟ですけど家族じゃありません、戸籍はしっかり分かれてますんで。逃げた旦那もきっとダイジョブじゃないのかな?ただ、さち薄い姪っ子が気の毒なだけだよね。


「そんな事よりここは営業中の店なんだけどね。他のお客の邪魔だから・・・そうだな、大上さん奥の個室を借りても構わないかな?」


 忘年会シーズンとは言え喫茶店で忘年会をするご近所さんがいる訳でも無く奥に10人ほど入れる個室が開店時からあるものの使われた事など片手で数えられるほどの回数しか無い筈だ。いつでも使えるようにきちんと掃除はしているが店の事を考えて潰してしまおうかとカオルン少年とも話していた言わばデッドスペースだ。


「使うのは構わないけどおっちゃんでもきっちり料金は取るからな・・・あのババアたち信用できねぇから黒いの(アンジェ)とかピーひょろ(ピュア)とか誰か見張りに着いてくんないかな(ボソッ)」


 まぁどう考えても備品ちょろまかしても悪いとも思った事の無い面の皮の厚さが売りの二人ですからカオルン少年の心配も当然だよね。


「なんだ、個室まであるのこの店。荒れ野の一軒家の分際で生意気じゃない。いいわ、入ってあげるから準備をしなさい」


 お前は何様かと問い詰めたくなるのをこらえて個室の準備に向かうと僕が店頭にいない間にドアベルが鳴って新しい客が来たらしい。


 何やら不穏な物音がしていたかと思うと不意に笑い声が溢れ賑やかになった。僕がいない間に誰が来たって言うのさ。


 テーブル席ではあれほど僕たちを毛嫌いしていた元の町内会長とここに入り浸ってるシュウジ君が肩を組まんばかりに話し合っているし、立っている女性は僕に微笑みながら頭を下げてくれる。あれはいつも巡回に来てくれる警察署の掃きだめの鶴子さんこと烏丸さんじゃないか。


 僕は烏丸さんに頭を下げつつカオルン少年に事情を尋ねる。


「一体何があったの?」


「さっきオレ、口から出まかせで白バイ野郎(シラオ)が警官呼んでくるって言ったじゃないすか。まぁアイツらも信じてなかったけどさ。

 そしたら巡回で雪っちが来たもんだからホントに警察呼びやがったって慌てて逃げてったってトコだよ・・・おっちゃんの姉貴かなんかかも知らねぇけどいい気味だぜ(ボソッ)」


 カオルン少年の眉間の縦皺が無くなっていい笑顔になってるな。ホントウチの悪魔(姉たち)が迷惑掛けちまってすまん。


 ところで諭吉?雪っち?誰それ?気にはなるけど礼ぐらいは言っとかないとね。


「それにしても今日くらい定期巡回が有り難かった事はありませんでしたよ、烏丸さん」


 恵比寿様の零落はともかくとして“シリウスの落ち武者”“クトゥルフの猫”そして“双頭のオロチ”と次々と湧いて出てくる悪神を討伐している(正確にはその場にいるだけだと僕は思ってるけど)チームシリウスの存在が対外的にも有名になり、現職の総理や有力議員の地元の悪霊を調伏(もちろん稲荷神社や八幡神社諏訪神社から回ってくる“シリウス案件”を偶々消化した結果だったけど)した事や警視総監を救出する結果になった除霊騒動などを経てここは警備上の重要ポイントと認定され、尚且つ謎の交通事故多発地帯の中にあるという事から朝昼夕の3回の警察による定期巡回が回ってくるようになって半年、初めて役に立った瞬間だった訳だ。


 ちなみにシラオは案の定通報とか一切やっていなかった。


 それにしても元町内会長とシュウジ君はどういう組み合わせなんだ?

掃き溜めの鶴子さん登場!新たなヒロイン登場か!

という訳でおっさんの地獄編はまだまだ続きます

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