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狸なおじさんと霊的な事情  作者: BANG☆
荒ぶる悪魔たちと嘆きの狸おやじ編

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第112話 狸、夫婦の契りをする

毎度お世話になっております

「薫くん、救急車を早く!旦那さまが倒れてしまうので御座います!」


 まさか、葛葉嬢に救われるとは!


 意外な展開に呆然とする姉たちをよそに、臨機応変の塊で突発事故を友とするチームシリウスと常連客達は救急車じゃ間に合わないと元暴走族の修理工場のシュウジ君が車を回してくれる。


 即席の担架に見立てた戸板と言うか扉の板に僕を乗せ運び出そうとすると、姉たちも便乗して付いてくる。中々の強心臓ぶりだけど身内の勘定には入ってないよアンタらはね。


 さりげなくアンジェとピュアが能力を使って二人を僕から引き剥がして外に放り出すと最寄りの病院へと向かう。僕に付いてるのは葛葉嬢とピュアのみ、残りは店で通常営業という段取りで。執念深い姉たちはタクシーを使って僕たちの後を追いかけてくる。バスも何も通らない店の辺りは原因不明の失神事件が相次いでいる事(汗)からタクシーなんて流しに来ないから乗ってきた車なんだろう。


「旦那さま、()()は一体何者なので御座いますか」


「僕をこんな人間に仕立て上げた元凶の生き残った方、姉達ですよ。それはそうと助けてくれてありがとう、おかげで病気が悪化しなくて済みそうですよ」


 僕だって礼の一つや二つ口にする位はできるんだよ?自分に精神性疾患がある事は自覚もしてるし、それでどれだけ周りに迷惑かけてるかも知っているからね。


 でもパッと明るくなる葛葉嬢を見て、長年の経験からヤバいとすぐに気が付いてしまった。


 喜びの威圧が来る!とてもじゃないが運転しているシュウジ君じゃ耐えられる筈が無い。


 恥も外聞もかなぐり捨てて咄嗟に葛葉嬢を抱きしめて感情の爆発を鎮圧しようとすると、葛葉嬢はプチパニックになってくれて威圧は発動しなかった。


 シュウジ君に車を止めて貰ってほっと一息をくと葛葉嬢はうわ言を言い始める。薬が効きすぎたか?


「旦那さまが抱きしめてくれた旦那さまが好きだよって言ってくれた旦那さまが――――」


 ヤバい、本格的に壊れてきてる。・・・こりゃあ一発来るぞ・・・


「ひぎぃっ!」


 運転席のシュウジ君が悲鳴を上げて飛び上がる、シートベルトを着けてても天井にぶち当たるとは・・・


 ついでと言っては何だけど、ようやく追いついてきた姉たちが乗ったタクシーが、いきなり制御不能になって小さな川に架かった橋を乗り越えダイブする。溺れる程水深がある訳じゃないから死ぬ事は無いだろう。


 特大の威圧は、姉たちの戦線離脱に依る僕の不戦勝をもたらしてくれた訳だが、実は姉たちが現れたのには理由が有った。


 僕が本物の弟だったらと言う前提でだが年明け早々の両親の13回忌の打ち合わせ、の名を借りた無心だ。要は人の金を当てにして豪遊しようという肚だったんだろう。


 最近世間を騒がせる除霊屋に名前がはっきりしないけど弟みたいな奴がいる。あれだけ世間に顔が売れる位だから自分たちが少々毟り取ったところで痛くも痒くもないに違いない。それに除霊屋たちは喫茶店も経営しているらしいから騒げばいくらかでも金を貰えるかも知れない。本当に弟じゃなくても構わない、ああいう手合いは騒動を起こされるのは嫌な筈だからいくらでも金は出すさ。どうせ金は天下の回り物なんだから定期的に貢がせて遊んでやろう。


 それくらいの事は考えていそうなんだよな、あの二人。ダメ元でシリウスまでやってきたら行方不明だったはずの(打ち出の小槌)が見つかったと思って狂喜乱舞してたと思うよ。


 今まではそんな二人に隷属していた訳だから銀河開発じゃみんなに影で笑われながら無心に来る二人に少なくも無い金額を渡してきたし今回もそうなりそうな気配があった。


 返す返すも葛葉嬢のファインプレイだった事は紛れもない事実だからな。


 ところで今回は、いつもと違って僕の方から抱き着きに行ってるんだし言い訳のしようもない。どう話をうまく纏めようか。


 妙に機嫌がいい葛葉嬢と居心地が悪い僕は、病院で一応経過観察という事でお役御免となり深夜にシリウスに帰ってきた。


 僕を追い回した鬼二人は川からそのまま帰ったらしい。どうせ車の修理代まで僕に吹っ掛けるつもりでいるんだろうけどね。それにもう居場所がバレちまったんだから毎日のように営業を邪魔しに来ることは間違いないだろうな。精神的に追い込まれて行く自分が目に見えるようだよ。


《おとーさん、ピーがそばにいるからね》


 慰めてくれる眠そうなピュア(0歳児)に思わず涙腺が緩むけど、明日からの事はどうにかしないと僕の居場所がと言うよりチームシリウスが無くなってしまうかも知れないな。


「旦那さま、夫の一人や二人この細腕でちゃんと養って見せますからあのような方とは縁をお切りなった方がよろしいのでは御座いませんか」


 葛葉嬢は僕をヒモにでもしたいんだろうか・・・気遣いは有り難いんだけどね?


《ターさん♡いっその事、あのババアたちをどっかの霊障に誘導して諸とも除霊しちゃった方が後腐れなくていいんじゃないの?生きてても自分以外全部不幸にしてるだけだもん。善行よ、きっと》


 だからアンジェよ、簡単に犯行に走ろうとするのは止めてくんないかな、僕の精神衛生の為にもさ。一応家族だっているんだよ?あれでもさ。嫁にいけない娘が一人だけどね。あっセクハラ案件になっちまう、クワバラクワバラ。


 それに簡単に霊障って言ってもピンポイントで狙うとするなら地縛霊だろ?


 でももし僕が罠に掛けられるんだったら地縛霊だったらこっちが避ければ実害はない、僕が倒すのを見届けてきた神たちも基本は動かなかったから対処法は一緒だった・・・まぁ、恵比寿様はメジャーだったしオロチ様は抜け道持ちだったから例外だけどね・・・自律型悪縁(二人の姉)にしたって自分に向く悪意には敏感だから上手くは行かないだろうな。逆にこっちが逃げても追ってくるし、もし逃げ遅れた仲間でもいたら多大な迷惑を掛けちまうのは確定的だ。


 もしかして悪霊よりたちが悪か無いか?


 僕が独り不良債権の処理(二人の姉)に手をこまねいているとちんちくりんが心配そうに声を掛けてくれる。そうだ、対人最強はこいつだったよな・・・僕と違って周りが良く見えてるよ、うらやましい。


「おじさま、あたしたちはチームです。一蓮托生と言っても構わないじゃないですか。

 いつも頼らせて頂いてるんです、偶にはあたしたちにも頼ってくださいよ。

 みんな心配してるんですから」


 ちんちくりんの関西風イントネーションでの声掛けに僕の眼から汗がほとばり出してしまった・・・涙じゃないぞ?悲しい訳じゃない嬉しいから涙じゃないんだ。


 いつの間にか僕は年甲斐もなくちんちくりんの胸で号泣していた。その周りでみんなも号泣を・・・何でしてんだよう・・・


 僕の為に泣いてくれるみんなに囲まれて、幸せのあまり尚更号泣する僕がいた。

ブルマァクじゃないベルマークでもないブックマークでも頂けると神様の代わりに拝んじゃいますけどいかがなもんで御座いましょうか

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