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狸なおじさんと霊的な事情  作者: BANG☆
双頭の鮭と迷える狸編
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第110話 決闘!!狸軍団VS神連合

冷やし中華が苦手なのに冷やし中華ばかり作ってくれる嫁に一言

「愛してるから素麵にしてくれ、だったら自分で作れ?」

世の中、世知辛いようで、では本編どうぞ

「決着を着けましょう、葛葉、薫、アンジェ、ピュア、ディーテ。最後の一暴れに付き合ってくれるかい?」


「俺たちはおっちゃんの為なら命なんか惜しかねぇんだぜ?・・・ファーストキスぐらい経験したかったけどさ(ボソッ)」


 カオルン少年の軽口をきっかけに双方が動き出す。


 僕たちは僕と葛葉嬢を中心に両端に海坊主とアンジェを置いた左右に広がる鶴翼の陣、神々はお諏訪様の使い朧丸とヤサカ様の使い大蛇丸の番を前に置いた密集陣形魚鱗の陣。


 時々雪が舞うピリピリとした緊張に包まれた温泉場で対峙する、妖怪と人間の連合軍対神々とその眷属ども。


 僕たちが一歩前に出ると神々が下がる、僕たちが右に動けば神々は即座に左に逃げる。熱を孕んだ沈黙だけがその場を支配する。


 時折技が飛び交うも互いに迎撃をして戦力に変化はない。


 温泉から次第に遠のいて動きが悪くなる神々。朧丸、大蛇丸と大蛇を身に纏っただけの弁天様に寒さが響いてきたのか。なんせ蛇尽くしだから。陰陽になぞらえれば白は陽でオスとするなら朧丸はお諏訪様と同じオス、黒が陰であるなら大蛇丸はヤサカ様に合わせてメス。弁天様が纏う黄金色の蛇は風水で言う所の富。もしそうなら理屈に合っているじゃない。


 一方、僕たちにしても体力の無い幼いピュアに無理をさせているので隙あらば仕掛けて行きたいところだ。寒がりは九州生まれの僕も含めてピュアに海坊主とこっちも半分いるから長陣は正直言って避けたい。


 やがて雪雲の隙間から陽が斜めに差し、夕暮れが近くなった事を教えてくれる。



 じわじわと動いたせいで、僕たちは神々の肩越しに(旧恵比寿廟)が見えるようになる。


 いつの間にかもう光っていない祠からは大蛇が姿を現していた。海坊主と対戦していた鮭じゃなくてまむしみたいな三角頭だ。様子見で勝ってボロボロになった方を叩こうって肚だな。


 その大きさも海坊主と千日手になっていた時とは雲泥の差で、鎌首の高さだけでも10メートルは下らないだろう。余程この谷の恵比寿廟で妖気を搔き集めたんだろうな。間違いなくアイツは邪神のたぐいだ、今は蛇だから蛇神か?


「ピュア、あいつだけなのかい?」


《もうかたっぽとちっちゃいのはねてるよ》


 分離したとかって事がなけりゃ祠が抜け道になってるのか。そういやウーちゃんに祠から別の祠に飛ばして貰った事があったな。ここの恵比寿廟はアイツ(オロチ様)の支配下にあるって訳だ。


 僕の気がれたのを察知して毘沙門様が金剛杵を振り上げる。そこで投げたら僕は宇宙人(伊達)に謝らないといけない。僕が使い方知りませんでしたってね。


 金剛杵の先端から火柱が上がりまるで剣のように見える。アレで斬りかかるのか?とは言え、射程範囲とはとても思えない距離だけどね。


 もしかして火だけ飛んでくるとか言うんじゃないだろうな。とてもじゃないが悠長に待って攻撃を喰らってからじゃ僕たちには勝ち目がない。


「アンジェ」


 声を掛けられたアンジェが前脚で虚空を薙ぐ。かつて街路樹を薙ぎ倒したアレだ。


 驚く毘沙門様の手から金剛杵が弾き飛ばされ、なおも火を噴きながら宙に舞う。


「ピュア、蛇のトコまで飛ばしてくれるかい?」


 ピュアが嬉しそうにさえずると一つ羽搏はばたいて見せる。


 金剛杵は火を噴きながら風に運ばれオロチ様の目の前まで飛んで行く。アンジェが追加で脚を振り金剛杵はその力に押し込まれて大蛇の眉間に突き刺さる。


【アギャャャャャャーッ!】


 大蛇が奇声を発しながらのたうち回る。あっ、ポン太が弾き飛ばされた。


「姫様、とどめを」


 葛葉嬢は微笑みながら除霊符を取り出し例の呪文を唱えて()輝くまで効果を高めてから養成所仕込みの美しい姿勢で投じると、ピュアが羽搏いてオロチ様の元まで飛ばし、アンジェが遠隔で叩きつけた。オロチ様の実像が陽炎の様に揺らめくがまだ倒れるには至らない。除霊符では役不足だったか。


 カオルン少年が神々の横をすり抜け金剛符を貼り付けた拳を大蛇に叩き込む。


 大蛇は殴られた所から弾け、首が胴から千切れてしまう。取りあえずのミッションクリアだな。


 オロチ様が破裂した勢いで血煙が吹きあがり紫の毒々しい霧が辺りに立ち込める中、カオルン少年が返り血を浴び蒼褪めた表情で歩いて戻ってくる。


 毒にやられたか?


 ピュアに無理をさせるが癒しの唄をカオルン少年に掛けて貰おう。


 僕がピュアにお願いをしようとした時、弁天様が光りカオルン少年がもやに包まれる。しまった!

闘いの最中だったことを忘れてた!


【田貫殿、勝手な事をした事を赦してはくれんかのう。そんなに殺気立たんでもよろし、毒を癒しただけじゃ。

 毘沙門天、お主ちぃと田貫殿をなめとったであろ?あのようにやすやすと金剛杵を奪われよってからに。

 戦を司る身でこのような体たらくは反省せい】


【まさか、ワザと隙を作って我輩の攻撃を誘い、それを利用して邪神を滅すなど流石としか言いようが無いわ。

 怨霊上がりの神も生霊上がりの神も滅ぼし、恵比寿殿に引導を渡したのも実力だったという訳か・・・

 戦神に名を連ねる我輩さえも手玉に取るとは完敗だ。弁財天、この賭けはそなたの勝ちだな】


 賭け?何をふざけた事を言ってるんだよ!


「まだ終わってはいない筈ですが?この身が滅びようとも白黒は付けるつもりですが・・・

 おい、誰かオロチ様がどうやってここに来たのか説明できるかい?」


【先生、アレは恵比寿廟と我が身を呪で繋ぎ顕現したものです】


「別にお諏訪様に教えて貰う筋合いは無いんですけど、まぁいいや。

 こっち側で爆散したって事は湖ではどうなってるのかはわかりますか」


【蛇頭が潰れて魚頭だけになったのか、魚頭まで死んでしまったのかは定かではありませんが、こちらから流れた血が逆流して湖に拡がる事は免れないのではないかと】


「ピュア、もう一つの方はまだ生きてるかい?」


《ううん、いなくなったよ。いまあっちにいるのはちっちゃいのだけ》


 なんてこったい!カオルン少年を毒状態にしたアレが湖に流れるとか大事件じゃないか!下手すりゃ毒を撒いたって事で捕まるかも知れないじゃない!それどころかこの地区の飲み水を止めなきゃ!


【慌てずとも良いぞ?わたくしが水神の意地をお見せします。

 我が背を信じきれずに大恥をかいた穴埋めと思ってくれればよろし】


 ヤサカ様が大きく両手を天に向かって掲げ、祝詞を唱え始める。祝詞って神に捧げる為に唱えるんじゃないの?


 夕暮れ間近な茜色に染まる雪雲の一つが段々と紫に染まっていく。


【我が妹の力で邪神の血を雲に吸い上げている所です】


 いつでも解説をしてくれるお諏訪様には感謝だけど今、僕たち戦っているんですけど?


「吸い上げた後あの雲はどこに行くんですかね?」


【さぁ、風に流されてどこかに雪を降らすのでは?】


 毒はどうする。


「それじゃ、どこかの街に毒入りの雪が降るという訳ですね」


【【【【・・・・・・】】】】


 毒を処理するという選択肢は無いんかい!


【吾輩の知り合いの風神に指図して雪を降らす前に海へ流してしまうとしよう。

 皆々様それでよいかな?】


 見事な対処療法です事。世間一般ではそれを『臭い物に蓋をする』て言うんですけどね。


 まぁ僕にもアレがどんな毒かも判らないのに解毒しろとか偉そうな事は言えないんですけど海に流して御仕舞かい。トリチウムやらなんやらで困ってる海に毒を流して口を拭おうとか信じられますかってぇの!


「・・・毒を無力化するとかそういう方向にならないんですか?」


【そうは言うてものう・・・蛇の毒と言えば神経毒に出血毒、溶血毒、細胞毒等々種類があり過ぎて血清を作るのも色々と吟味せねばならんのじゃ。

 そう簡単には「うちの薫には便宜を図って頂いたようですが?」うっ、それはあれじゃ、傍に居ったから色々と重ね掛けをできたでのう】


 弁天様・・・言い訳が苦し過ぎません?


「人間に指図されるのが嫌だとかうっかり解毒を思いつかなかったとか理由はいろいろあるかも知れませんがね・・・アンタ方の飯の種(人間)が苦しまないようにするのが神なんじゃないんですか?

 それとも毒を撒いて苦しんだ人間が助けを求めて祈りに来るのを待とうって魂胆なんですか?それってマッチポンプでしょ?

 恥ずかしいと思うんだったらサッサと解毒してくださいよ。やるんだったらそこまでやらないと信者が減りますよ」




 半べその弁天様とヤサカ様、へこみまくる毘沙門様とみんなをなだめるお諏訪様たちが毒雲を中和する事に成功した頃、僕たちは温泉宿に戻り依頼主にミッションクリアを報告してささやかな祝杯を挙げていた。


 結局、決闘はうやむやのまま。神様たちがやっていた賭けの事も追及できずオロチ様の守っていたもう一人の妖怪には辿り着けず今回は終了するだろう。


 なんせ予算オーバーだからね。手弁当でここまでやればしばらくは妖怪も悪霊も大人しくしてくれるだろう。


 それに神に歯向かったって事で僕の出雲召喚も立ち消えになるだろうし・・・一件落着?

以上で寒いトコの話は終わりで御座います

閑話を挟んで新章で御座います

では

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