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狸なおじさんと霊的な事情  作者: BANG☆
双頭の鮭と迷える狸編
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第106話 武神、修羅場る

【まっ、待ってくれ、我がいもよ。そっ、そなたは何か勘違いをしているぞ・・・】


 ボッコボコにされながらも無抵抗で許しを請うお諏訪様が、何とも憐れと言うか何と言うか。


【何が我が妹じゃ!このようなおなごにうつつを抜かすなど!】


 話の内容からすると・・・痴話喧嘩?オロチ様ってお諏訪様の彼女なの?


【せっ、先生!そこで見てないで我を助けてください!我が妹を鎮めてください!】


 えっ?僕に痴話喧嘩の仲裁をしろとか?


 無理無駄無茶はみっともないがモットーの僕にそんな難易度の高いクエストをぶつけるとか・・・絶対に嫌です。


 夫婦喧嘩は犬も食わないって知らないんですか?


【弁財天殿からも何か言ってはもらえませんか?】


 お諏訪様、ボッコボコのドロッドロで組み敷かれたままで余裕が無くなってますね。


 弁天様も温泉の中から高みの見物を決め込んでいますしね。


 葛葉嬢にカオルン少年、それに僕の(アンジェ)眷属(ピュア)(ディーテ)はいつでも攻撃をできるように準備をしているけど。


「ピュア、お諏訪様を殴ってる女の人はオロチ様なのかな?」


《おとーさん、ちがうよ。あの人、タケぼーさんとにおいがにてるけど?》


 ?オロチ様じゃない?


「ディーテは何か知らないかい?」


 ディーテは長年恵比寿様の側に仕えてきたんだからそれなりに知識はある筈だ。


《生憎ながら、それがし海にばかりおりまして知り合いと言えば、弁財天様の他と言えば宗像三姉妹の3柱ぐらいとしか・・・》


「仕方ないか、それじゃあ姫様は?」


【どうでもよいので我が妹をお止めください!!】


 あのよれよれになったお諏訪様を見て止めに入れとか・・・無理です!こういう時は人任せに限るよ。


「弁天様、お止めにならないんで?」


【アレはああなったら誰にも止める事などできんのう。昔から一本気で脇目も振らんと突っ込んでいく猪女じゃで】


 知り合いならどうにかしてくださいよ。


【それよりアレは放っておいてもよいのか?】


 弁天様が顎をしゃくって示した先にはフラフラと赤く光るほこらに向かって歩く化け狸の姿が。って言うか、いつから光ってるんだよあの祠!


 あぁもう、同時進行はややこしくなるから勘弁してくれ!


「アンジェ、あのバカを止めてくれ。ピュア、あの光ってるトコを見てくれるかい?ディーテ、取りあえずお諏訪様を救い出してくれ」


 眷属たちがさっと散っていくと葛葉嬢とカオルン少年が物言いたそうに僕を見ている。


「STAY!」


 そうそう動き回られても事態が悪化しちゃいそうで困るんですよ。


「弁天様、オロチ様にはこっちの様子は見えてるんでしょうかね?」


【あの恵比寿廟はそうする為の祠であろうな。

 ただ、ここでは八百万の神が騒いでおって妾のような仏神もおる。おまけにそなたの眷属たちじゃ。

 やれ大妖じゃ、精霊じゃ、神の使いじゃとぞろぞろおっては力がまぶし過ぎて何も見えはすまいよ。

 ついでに悪神になりかかりの九尾の狐までおるとなるとお天道様をじかに見る様なものであろうな】


 今、サラッと凄い事言いませんでした?


「僕は化け狸に僕たちが伝えたい情報だけオロチ様に送りつけたいと思ってます。

 祠に辿たどり着かなければ勝手に情報を抜かれるような事は無いと思ってますけどどうでしょうか」


【さすがはウーちゃんの元使徒じゃのう。その読みは当たっとるぞ】


 僕は弁天様に一礼してアンジェの元に向かう。


「どうだい?」


 アンジェは、渋い顔をしている。その足元には、壊れたおもちゃのように手足をごそごそと動かす化け狸がいる。


《どうやら遠隔操作されているみたいね》


 僕との約定よりオロチ様の契約の方が上位にあるって事か。さてどうしたものか。


「旦那さま、ソレ(化け狸)に名付けをなさってみては?」


 お諏訪様の騒動で後手に回っちまったけどまずはそれをやってオロチ様に対抗する筈だったんだけどいざこうなったら、オロチ様の契約いかんによっては僕まで引きずられる可能性だってあるんだからね?


 でも名付けによって支配度を上げないとオロチ様にずっとアドバンテージがある状態が続く訳だし。


 それにしてもネームセンス無いし、僕・・・


「タヌイチってのはどうかな・・・覚えやすいよな(ボソッ)」


 えっ?カオルン少年、いつもみたいにポチじゃないの?僕の次にネームセンスの無いカオルン少年からの意見・・・くやしいからボツ!


「旦那さま、それではポン太はいかがで御座いますか?」


 その次はTカードとかJCBとか言わないでよね。でもそのくらいの名前でいいか、丁稚だもん。


 時間が勿体ないし、いいや。


「おい、ポン太。お前の名前はポン太だ。気持ちをしっかり持て、オロチ様に負けたらそこでお前さんの一族は終わるんだからな」


 僕の言葉を聞いてポン太の眼に光が戻る、おぉ!僕の支配力がオロチ様との契約に勝てたか。


 これで最悪のパターンからは逃れられたかな?


 名前を採用されて得意げな葛葉嬢を尻目に、アンジェにポン太に出す命令を伝えてもう一つの現場に向かおう。


 ディーテに引き剥がされて髪を振り乱しまるで悪鬼のようなオーラを放つ天女の方に立ち向かう・・・とっても怖いんですけど・・・


「お諏訪様、ご無事で?」


【おかげさまでまだ無事ですよ。もっと早くお助け頂けるものと信じていましたのに裏切られた思いです】


 珍しく棘のあるお言葉を頂戴してしまいましたね。


「遅くてすいませんでしたね。お詫びと言っては何ですがディーテその方を解放【あああああ!我が間違っておりました!お助け頂き誠にありがとうございます!!】

 ・・・別に礼を強要したいとかそういう積りは無かったんですけどね」


 ウソを吐くな!と訴えるお諏訪様の眼をスルーして、尚もディーテの手から逃れてお諏訪様に襲い掛かろうとする天女に声を掛ける・・・僕がやらなきゃならない仕事ですかね?


「お初に・・・お目に・・掛かります。・・・もしかして・・お諏訪様の・・妹と・・・いう事は・・八坂刀売命やさかとめのみこと様・・・ですか?」


 万葉集なんかに出てくる言葉で妻を妹、夫を背って呼ぶ筈なんだけど・・・間違ってたらゴメンね。


 お諏訪様の総本社、諏訪大社と言えば諏訪湖を挟んで南にある上社には夫のお諏訪様こと建御名方命たけみなかたのみこと様、北にある下社には妻の八坂刀売命やさかとめのみこと様がいらっしゃるとか。


 そして冬の諏訪湖が氷結して亀裂が走る事を御神渡おみわたりと言って上社から下社へ湖を渡ってお諏訪様が奥さんのトコに通った証拠だって話だよな・・・ここ3日ほどの大雪でもしかして御神渡が発生したにも関わらずお諏訪様が奥さんのトコにもし行かなかったとしたら・・・浮気を疑われても仕方ないのか・・・


 小心者のお諏訪様にしては悪手でしたね、今回の出張は。

毎度のことながらこれはフィクションである事をご承知おき下さい

実際の神道では神社には複数の祭神が祀られており同系統の神社でも祀ってある神様が違っている場合があるのでウーちゃん=稲荷神とか結構無理やりにやっていますから本気にしないでくださいね

偶に書いておかないと通報されそうで怖いんです

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