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狸なおじさんと霊的な事情  作者: BANG☆
双頭の鮭と迷える狸編
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第100話 人魚、断られる

「これが最後通牒ファイナルアンサーだ」


 そう言われてもハイ解りましたとは行かないのが世の常で、案の定アンジェも化け狸もごねにごねている。


《ウチはこれでも猫又にして猫の王なのよね。

 いくらターさん♡からの命令でも、こんな汚らしくて自分勝手なくそ狸を手下にしようだとか考えるだけでも虫唾むしずが走るわ!絶対無理!》


《オラこんなのの眷属にされちゃ命がいくつあっても足りねぇだ。

 神様おっさんの眷属にしてけろ!》


 アンジェがこんなに逆らうのも初めてなら、あくまでも初志貫徹を突き通すバカ(化け狸)の身の程知らずさにも呆れさせられるよ。


「皆殺しになるお前さんの一族がどれくらいいるんだい?」


《十三匹もいるだ!》


 多分、3家族か4家族ってところか?正直100匹ぐらいいるのかと思ってたよ・・・


「アンジェが率いてるのは?」


《全国の野良たちの数なんてよくわかんないけど最低でも5万はいるわね》


 数の多少で判断しちゃいけないんだろうけど、この世間知らず(化け狸)の同胞意識はどこから来てるんだよ。


 仕方ない、情報は諦めよう。


「今度こそ交渉決裂か《我が君、しばしお待ち頂けはしませんか?》

 ディーテ、君のかばいたてももう限界だと思うんだけどね」


それがし姉様アンジェの仰ることはよくわかるのであります。

 某も船幽霊なる配下を持つ身、このほかにゾンビやらキョンシーやらを配下にせよなどと命令を頂いたとするなら途方に暮れるしかないのであります。

 ただ、某は海に起源を持つ妖怪(ゆえ)おかの上での仕事ではどうにも眷属としての役目を果たす事が無いのであります。

 よって陸の上での仕事の補佐せしめる為に、この者どもを某にお預け頂けないかと思う次第であります》


 この最後の恩情にこのボケ(化け狸)はどう返事をするのか。


《むずい事言われてもオラには解んねぇだ。オラの望みは神様の眷属になる事、それだけだで》


 ディーテの申し出を断りやがったよ、このバカ(化け狸)。虚仮の一念岩をも通すって訳ねぇだろ?


「旦那さま、いい加減に向こうに参りませんか?そのアライグマに関わっていても時間が足りないでは御座いませんか」


 とうとう圧壊の魔王(葛葉嬢)が発動してしまいました。これは急がねば昨日のクレーターが今日は発掘現場になってしまいます!


 後、狸はアライグマに似てますが別の生き物です。きっと貴女はあらいぐまラス〇ルの見過ぎです!


 それにしてもこりゃ、情報なしでオロチ様と戦わなならんという事か・・・今日の装備で果たして通用するのかどうか。


「アンジェ、ディーテ。そいつの相手をする必要はなくなったよ、タイムアップだ。

 もしかしたらそいつの任務には時間稼ぎってのも入ってたのかも知れないな。それなら作戦は大成功って訳だよ。

 そいつはあのほこらにでもぶち込んで先を急ごうじゃないか」


 アンジェが人化して嬉々として化け狸を摘まみ上げ、祠に向かって歩き出す。


《ちょっ、ちょっと待ってけろ!眷属の、眷属の話はどうなっただか?》


《眷属になりたがってるのはお前だけ、眷属にしたくないのはウチら全員。

 最低条件の情報を出せって話には眷属にしなけりゃ出さないの一点張り、ちゃんちゃら話にならないってのよ。

 せっかく出してくれたディーテの妥協案も蹴ったんだから交渉は決裂したに決まってるでしょ?》


《オラの、オラの一族がどうなってもいいって言うだか?》


《お前の一族とウチらの命を天秤に掛けりゃ、ウチらはウチらを優先するのが当たり前じゃない》


《オロチ様の事は何も解んねぇんだぞ!》


《そのような汚き取引に我が君を巻き込むのは心外でありますから、情報は諦めるのであります》


 言わば情報を人質にとって自分の言い分だけを通そうとした化け狸のやり方に、アンジェもディーテも相当頭に来てるんだと思う。僕もそうだけどね。


《だども、なんでオラをあの小屋に連れて行くだか?》


「最初に化かしてきた時にアソコに誘導したんじゃないかい?

 だったらアソコに仕掛けがあって、僕たちの戦力を削る罠があると考えるのが筋だろう。

 それがどんなもんか確かめるためにお前さんを放り込むのさ」


 アンジェに摘ままれたままの化け狸は慌てて逃げ出そうと暴れるが、元からの力の差でそれが叶う事は無い。


《アソコはやめてけれ!オラはいやだ!助けてけれ!》


「今まで散々助けてやろうとしたのにそれを拒否したのはお前さんの方じゃないか。

 大人しく死ぬんだな」


 僕にもこんな冷酷なセリフが言えるんだ。


《アレはこないだ滅んだ何とかいう神様の小屋だで呪いが掛かっているだ!

 オラ、あんな呪いで死にたくねぇだ!》


「ほほう、そんな呪いに僕たちを案内しようとしていたのか、お前さんは」


《・・・我が君、こないだ滅んだ神とは・・・もしや我が先主でありますか?》


 生真面目なのが妙な事に気がついたようだね。


 この騒動が始まったのもディーテを恵比寿様から解放した夏の終わりだ。関係が無いとは限らないとは思っていたが呪いときたか。


「ほう、人を化かす狸でも呪いは怖いのか。

 それじゃ、実際にどうなるかは知ってるって事なんだな?」


《中に入ったら生きたまま腐っていくだ》


 ・・・スプラッター映画の方がもっとグロいんだけどね。まぁ、臭いは直に来るだろうから凄いだろうけど。


「誰かそうなったのを見たのかい?」


《うんにゃ、オラはそったら恐ろしいもんは見たくねぇだ。

 オロチ様が神様たちを入れたらそうなるで言うてただ》


 ・・・伝聞かよ、それもオロチ様からのだと。胡散うさん臭いじゃねぇか。


「それじゃ、誰の呪いなんだい?」


《オラ知らね。落とされた神様の事なんてよ。

 オロチ様がだから近寄るなぁって言うてただ》


「旦那さま!もう日が暮れてしまうので御座います!ここで野宿でもなさるお積りで御座いますか?」


 ヤバい、葛葉嬢がもう待てないみたいだ。


「すいません、姫様。予想外に時間を取ってしまいましたから今日の所はひとまず宿へ戻りましょうか」


《えっ?オラを眷属にしないだか?

 それは困っぺ、オラは眷属になんなきゃならねぇのに》


 眷属の押し売りは、金輪際お断りさせて頂きます。


 僕たちはなおもごねる化け狸を放置して宿へと引き上げていく。化け狸の時間稼ぎは確かに有効だったな。

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