表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狸なおじさんと霊的な事情  作者: BANG☆
双頭の鮭と迷える狸編
122/278

第98話 黒猫、ブチ切れる

「旦那さま、ここは神の威厳を示してあげるべきで御座いますよ?」


 葛葉嬢、その信頼の源は何なのかね?僕には、到底理解できるもんじゃないんだけどね。


 まぁ期待されてる身としては、なんとか言い訳できるぐらいにまで勝率を上げて、その後は下手な芝居でも打って先方の慈悲にすがるしかない訳で・・・まずは情報が無いとね。


「おい、そこのお前さん。名前はなんて言うんだい?」


《オラたち野良の狸に名前なんてシャレたもんは付いてねぇだ。

 あっ、ありがてぇ!オラが初めてって事だでうれしいっですだ》


 急に何を先回りして喜んでるんだ?


《ターさん♡、コイツ化け狸の分際でウチらの地位を狙ってるって事じゃない?

 空気は読めない癖に抜け目ないって言うかさすがタヌキよねぇ》


 アンジェ、解説ありがとう・・・この野郎、さっきまで騙しにかかってた癖になんて言うか厚かましいで済まされない何かを感じちゃうよねぇ・・・


「ほう、名前は無いのか。それじゃあ仕方がない他を当たろうか」


《ええ!名前を下さるんじゃねぇんだか?そったらオラたちどうなるだ!》


「別にこっちから名前を付けさせてくれって頼んでる訳でなし、当てにもなりそうにないからいいよね?」


 葛葉嬢以下、全員の首が縦に振られる。それを見て慌てるのは当然なるかな化け狸の方である、よね?


《そったら事ある訳ねぇべさ!そったら事したら、オロチ様にオラたち喰われちまうでねぇか》


 ふふん、化かしてから配下に入るってのは“池の蛇”ことオロチ様の知恵なのかぁ。でも見破ってんだぜ?


 舐めたらあかん。


 この野郎、よーくわかった、目にもの見せてやる。


「お前たちだけだったら、熊なんかより全然喰い甲斐は無さそうだから池の蛇は承知しないだろうね。

 足りないからっておまけでこっちまで喰われたくはないから今日は宿に引き上げようか」


《ターさん♡、だったら帰ったら狸汁にしてもらいましょ?体があったまるって話だから明日の為になるだろうし、なんだったら材料は()()で揃うから宿の連中も手放しで協力してくれる筈よ》


 その包丁()ぎながら舌なめずりしてるような雰囲気はどうにかなりませんかねぇ。股間のナニがヒュンッてなっちゃいましたよ。


 ホントにアンジェを怒らせちゃダメだってつくづく思い知りました、マル。


 一瞬の間をおいて大人しかった化け狸が暴れ始める・・・アンジェが抑え込んでるから足をバタバタさせてるだけなんだけどね。


 間が空いたのは多分状況の把握が間に合ってなかったからだと思う。見捨てられる筈が無いってね。


《か、神様ぁ、すったら事ぁ眷属にやる仕打ちじゃねぇべさ!オラを助けてけろ!》


《はぁ?眷属だぁ?

 ちょいとくそ狸、アンタ、ウチらを舐めてんじゃないの?

 アンタみたいな能無しがウチらと同じ眷属とかってそれこそ臍で茶を沸かすってもんじゃない。

 ウチの手駒の野良猫たちだってまだなってないもんに、なんで蛇に脅されて化かしに来る程度のくそ狸が成れるとか思ってんの?非常識にも程があるわ!

 ターさん♡さえよければ、ウチはこの場で解体ショー始めたっていいんだからね》


 眷属ってのがアンジェのプライドを傷つけちゃたのね・・・稲荷狐はウーちゃんの眷属だけど海坊主は恵比寿様の手下扱いだったしその辺の組織図って結構アバウトなんだよね。


 ウーちゃんは眷属として稲荷狐がいて別に僕が使徒だったし、恵比寿様は眷属が鯛の赤カブトで実働部隊として一段下がって手下の海坊主そしてその手駒の船幽霊って形だし、八幡様んトコはあの鳩の大群が眷属で適宜(ふくろう)やら他の鳥が応援するスタイルだったし、お諏訪様だったら白蛇が使いだって聞いたけど今まで見た事ないよね。お諏訪様は言葉でやらかす神様だから眷属なり使徒ががちゃんといつも補佐してないとダメだと思うんだけどね。性格はいいんだけど・・・ね?


 まぁ大体僕は普通の人間だし、アンジェとディーテとピュアはテイムしているだけだからな。比べるまでも無いよね。みんな眷属だって言い張ってるけどさ。


《ピーはおとーさんのこととってもすきだからね》


それがしも助けて頂いたご恩は、生涯掛けてお返ししていく所存です》


《ウチは、()()()()からの眷属としてターさん♡と添い遂げるって決めてるから安心してね♡》


 えーと、世間一般で言う所の『憑りつかれてる』のとどう違うんだろうね。ある種、愛?が重すぎる・・・もっとドライでビジネスライクなテイムがあってもいいんじゃないかなぁ・・・


猫又アンジェ風の精霊(ピュア)人魚ディーテが僕がテイムしている眷属たちだけどお前さんたちに勝ち目はあるのかい?」


 僕の眷属になって信頼されたところで裏切り“池の蛇”のオロチの覚えが良くなる方がいいか、僕んトコの強力ラインナップに恐れをなしてオロチから滅ぼされた方がいいか・・・悩め悩め、悩み過ぎて禿げてしまえ!


 言っておくけどさ、もし僕から信頼を寄せられるようになろうとか思ったら100年は無料奉仕しなきゃ無理だからね。


《なんで今日はこんなにいるだよぉ(泣)。こんなんじゃオロチ様に言い訳する前に皆殺しにされちまうだよぉ》


 独り言が聞こえてるよ化け狸。お前さんが凹むのより僕の精神力がすり減る方が遥かに速いと思うんですけ怒!


 それからアンジェ、どうか頼むからその『くそ狸』とか『バカ狸』とかって言わないでくれ。僕に言われてるみたいで僕の心にガンガン突き刺さるんだよぉ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ