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狸なおじさんと霊的な事情  作者: BANG☆
謎の美女と希薄なる宇宙人編
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第81話 鼬、月の領有権を確認する

「取りあえず・・外に・出ましょうか」


 ()()()喫茶店から僕らの城『喫茶シリウス』までの道すがら社交性の低い僕と宇宙人(伊達)は、問わず語りの千里眼の波乱万丈な半生記を延々と聞かされる羽目になった。城が遠い・・・


 半島の貧しい農民の子として生を受け、成り上がるために必死で勉強に励んでいた事。大学を優秀な成績で出て博士号を取った後某大財閥に籍を置き、そこの御曹司に見初められるも周囲の人間の嫉妬が引き金となって身を引かざるを得なくなった事。傷心を抱えたまま流れて行った日本で後の教会会長キムと出会い二人三脚で教会を育て上げていた事。十字架に祈りをささげていた時に啓示を受けて『千里眼』を得た事。


 この千里眼と言う能力は、僕はそれまでの彼女の言動から単に『鑑定』に類するものだと思っていた。しかしよくよく聞いてみると肉眼はおろか望遠鏡や双眼鏡越しでも相手からの情報が得られるというとんでもない優れモノである事を知ってしまった。


 僕が聞き及んでいる鑑定とは、例えばガラス越しで見た時は()()()()()()()()()()()ものだ。例えば鏡越しなら鏡の材質、眼鏡越しならレンズに施してあるコーティングの材質といった具合だ。僕の霊力測定だって直に見えた範囲でしか測定できなかったからな。僕としては、霊力測定は復活してくれると商売がやりやすくなるんだけどウーちゃんの使徒だったから見えてたって事なんだろうからやっぱ望み薄かな。試しにやってみても生首が宙に浮かんだり首と体を結ぶ光る紐が見えたり・・・は、まだしないか。


 それにしても、流石にレーダー上の物体は無理だろうけどできるだけ遠い所から情報を得る事が出来ると言うのは物凄いアドバンテージだと言えるだろうな。だって接敵する前に対策をする事が可能になる訳なんだから生存率が上がる、それどころか成功率が上がるというもんだからな。


「それじゃ望遠鏡で月とか見たらどこの領土かなんてすぐにわかるんですかね」


 国立大学出ると脳みそを学校に置き忘れるのかね・たしか月には領有権は無かったはずだよ。


「・・・月は裸眼でも見えますから態々(わざわざ)望遠鏡などを使わなくても解っております。

 やはり私の祖国の物になっているに決まっているじゃありませんか」


 ・・・これはジョークととっていいもんだかウリジナルの一環だととらえていいのか・・・


「・・・せめて・・弾道ミサイルを・成功させて・・からじゃないと・届かないと・思います・・けどね・・・」


「我が国の物に勝手に触って欲しくは無いのですが、折角開発しても他国が盗み出すので中々進展しないだけです」


 ウリジナルの方だったか・・・となるとさっきの半生記はやっぱ眉唾物って事だな。まぁ後で八幡様かウーちゃんにでも確認してみっか。


《ターさん♡、この女(シリウス)に入れていいの?》


 脇を見えつ隠れつお供してくれてる猫姿のアンジェが問いかけてきた。


 ほぅ、アンジェは千里眼が何か企んでると思ってるのか?


《だって教会クビになったって言ってるのは本人だけでしょ?あのアオビョウタン(伊達)は何も触れてこないし、胡散臭い自慢話をしながら周りの様子をうかがってるし・・・ハッキリ言って偵察しに来てると思うわ》


 ウチ(シリウス)を偵察したってメンバーが凄いだけで建物は普通だけどな。なんせ16強が建てた奴なんだからすぐに調べは付くだろうし。


 もしかして能力が復活しているのか?そうなればみんなをチラ見するだけでシリウスの全貌が丸裸にできるって事か・・・でも今日は八幡様がバイトに来ている日だし封印を確かめて貰う事ぐらいはできるか。


「それにしても・・千里眼さん。・・・ウチに・来て・・大丈夫・なんですか?」


「大丈夫とはどういう意味で?」


「ウチには・・八百万の・神様が・・いつも・たむろ・・してるんですよ。・あの・・ヒュ~ドロドロの・稲荷神・・とか・貴女の・・能力を・封印した・・八幡神・・・とか」


 千里眼は、顔を引き攣らせながらも首を振る。


「いらっしゃっても私には見えはしないのですから気にしてもしょうがないじゃないですか。直にあって許しをえるチャンスだと思えばむしろお会いしたい位ですわ。

 是非とも私の真摯な宗教心から溢れる聖なる波動を見極めて頂きたいものですから」


 遠回しに帰れって言ってるのにムキになってきやがったな・・・何を企んでやがる。


「僕・個人の・・アナタに・・対する・・感情とか・・・どう・お思いに・・なりますか?」


「あれは単なる行き違いではないですか。

 元はと言えば、よこしまな仏教徒が仕掛けた罠に八幡神サマがお気付きにならなかっただけの不幸な過ちです。こんなところに押しやられた地方の忘れられた神ならではの失敗ですからここで悔い改めて正しい判断をして頂けることを疑っていませんから」


 八幡様、こいつ自分たちの失敗に対する反省を『間違えて判断した』()()()()()()()()()神への赦免にすり替えてますよ。


 ふと気づけば未舗装の道の脇にお地蔵さんのように並ぶ八幡様とお諏訪様・・・この分だとウーちゃんまでいるよな。気配がプンプンしてるから。使徒はずれた段階で一番離れた存在になってる筈なんだけど、いつの間にか気配が判るようになってきちゃったよ・・・


 (ウーちゃんが見えないから)二柱の神々は、まるで昭和のヤンキーを彷彿とさせるウン〇座りで下からねめる様に千里眼を見上げながら、


【あ゛あ゛?】


 と、威嚇してらっしゃる・・・反省が足らないどころか自分を正当化して反省する気が無いと判断されたようですね・・・


 どういう積りでシリウスに来る気だったのか判らないけど千里眼、アンタ、アウトだよ。


「アレが・・行き違い・・だったとか・言ってるようじゃ、ウチ(シリウス)に・・来る・資格は・・まだ・・・無いようですね・・千里眼さん・・お引き取りを」

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