表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/187

088 ベラム馬車と知らない人

現在海沿いを北上している。

なので左手側が海、右手側が平野部。

街道は南から北へと伸びている。


なのにその馬車は、街道を走らずに平野部を走ってきた。

方向的には……王都から?

もしかして一直線に進んできた? まさかね?


怪しい雰囲気なので俺は警戒したけど、他の誰も警戒していない。

それどころか王太子なんかはため息を付いている。


「なぁ、あの馬車何?」

「王都からの使者だと思う。俺かファーに用事があるんだろうな」

「用事があると、一直線に来るのか?」

「よほど急ぎなんだろ。ベラムまで使って……面倒な……」


ベラムとはなんぞや?

そう思ってよく見てみれば、馬車だけど馬じゃなかった。

引っ張ってるのは……サイ? あれがベラムか?


まぁ、馬じゃあ平野部は走れないだろう。

いや走れるけど馬車を引けないと思う。

あ~、馬車も車輪じゃないわ。ソリみたいになってる。

回転じゃなく、滑らせてるのか。そりゃ引く力が必要だわ。



アイザックさんは、少し広い所に馬車を止めた。

そこに追ってきたベラム馬車が並行して止まる。

馬車の側面には王族の紋章。王家の持ち物なのか、これ。


ベラム馬車から出てきたのは、メガネをかけた神経質っぽい男の人。

手には本と筆記用具。学者さんかな?


「なんだ、俺達に用じゃなかったのか」

「王族に用事じゃない?」

「ああ、間違いなく、用があるのはお前だよ」


俺?! 俺に何の用事があるんだ?


「面倒だから、気をつけろよ?」

「何が?! ちょっと、詳しく教えてくれよ!」

「説明すると長くなるんだ。大丈夫、お前なら対応出来る。ガンバレ」

「うぉい! ファ、ファー! 何とか言ってくれ」

「……ガンバ!」

「それだけかよっ!」


何が起きるんだよ?!

まさか人体実験とかじゃないだろうな?


……護衛の為に悪魔を呼んでおくべきか?

こういう時に役に立ちそうなのは、誰だ?


悩んでいると、馬車の扉が開かれた。

普通、王族の乗っている馬車なのだからノックくらいあるはずなんだがなぁ。


「聖人と呼ばれている者が乗っているな?」


学者っぽい人の第一声がそれかよ。

王太子とか姫様とか乗ってるんだぞ? 不敬じゃないのかなぁ?


その人は馬車の中を見回し、そして俺と目があった。


「お前か」

「は、はぁ……そうですけど」

「カードを出せ」

「……はい?」

「悪魔を呼び出せるカードを渡せと言っているんだ!」

「はぁ? なんでですか?」


何でいきなり命令されてんの?

しかも俺の命綱であるカードを渡せ? 無理無理。


「お前は黙って私に従えば良いのだ」

「いやいや、何を言ってるのか、さっぱり判りません。

 従う訳ないでしょ。しかも見せろって言うならともかく、渡せ? 無理です。渡せません」

「……ふぅ。これだから無知な平民は。

 よろしい、特別に教えてやろう。

 私は王国筆頭学者ヒューロソンだ。お前の使っているカードは研究する必要があると判断した。

 なので徴収する。渡せ」


うん。何も理解出来ません。

理解出来ない俺がバカなのか? 違うだろ? こいつの言っている事がおかしいのだ。


「徴収とか、何言っているんですか? 渡しませんよ?」

「ここまで言っても分からんとは……。良いか、私は王国筆頭学者なのだぞ?

 逆らっても何も良い事は無い。しかも直々に言ってやっているのだ。感謝しつつ渡せ」

「渡しません」

「……逆らうとは良い度胸だ。どうなってもしらんぞ?」

「どうなると?」

「無理矢理にでも徴収する」

「どうやって?」

「王国の者は誰もが私の言う事を聞かなければならないのだ。

 今この馬車の御者をしている近衛騎士に命令しても良い」


アイザックさんに?

アイザックさんとカードを賭けて戦う事になるのか?!

次話投稿は5月7日(木)になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ