085 ヒント
ウァサゴに場所を聞いた領主さんは悪そうな笑みを浮かべていた。
どうやらそれらの場所に心当たりがあるらしい。
領主さん曰く「海賊の隠し場所」「商人の隠し財産」の可能性が大きいとの事。
「教会の神像の下の隠し通路」は多分、いざという時の避難路だと思うと言われた。
何にせよ、発見して利用して欲しい。
もう俺とは関係無いし。
部屋も弁償しないで良いと言われたし。助かった。
それよりもヒントの方が大事。
発見した紙は、書類というよりもメモって感じ。
走り書きみたいに見える。
内容はコレ。
『北に亀 南にカバ 西にヘビ 東にハリネズミ
三歩進んで二歩下がる』
全く意味不明である。
動物園の中かな?
ハリネズミって、最近映画化された、早く走る某ゲームの主人公だろ?
三歩進んで二歩下がるってのは、歌?
う~ん、考えても判らないな。
ま、そういう場所の近くに来たら閃くだろう。
無くさないように仕舞っておく。
「ウァサゴ、質問なんだけど。
このメモ仕舞ったんだけど、複製って出来る?」
「複製は出来ませんが、悪魔内で共有しておきます。
メモを出されなくとも、悪魔を呼んで頂ければ内容をお話しします」
そっちの方が確実だね。
王太子や姫様は書き留めたようだし。
用事は全て終わったので、これでやっと出発出来る。
「次はどこに行くの? 動物園?」
「? 動物園というのが判らないが」
「え~と、色々な動物を檻に入れて、それを見に行く場所?」
「コロシアムか?」
「違う違う! 一緒の檻に入れるんじゃなくて、種族ごとにバラバラに入れてるの!」
動物園を知らなきゃそういう発想になるのか。
……俺の説明も悪かったね。
「そんな場所があるのか? 俺は知らないが」
「あ、無いなら良いんだよ。で、どこに行くの?」
「次は……そうだな。ダンメイにでも向かうか」
「ダンメイ? そこは何があったの?」
「いや、何も起きてないぞ」
起きてないのかよ!
じゃあ何でそこに向かうのだろう?
「その街はな、王国内で一番技術が発展している街だ。
普通は王都が一番発展するんだがな。悪魔が関係しているなら、ありえなくもないだろ?」
「……なるほど」
確かに変だね。
日本で言えば、首都東京に人が多く集まっている。
そしてそこで色々な事が発展していく。
流通の整備が出来ていない異世界なら、それは顕著だ。
それなのに鳥取県が一番栄えていると言われれば、違和感があるだろ?
そういう事らしい。
それなら悪魔が関係していても不思議じゃないな。
知恵を授けるような能力持ちも居たはず。ありえない話じゃない。
ここから南下した場所にあるらしいダンメイ。
早速向かいますか!
意気込んで出発した翌日。
俺は失敗した事に気づいた。
何を失敗したかって?
道中の暇つぶしをする物を買い忘れた事だ。
馬車での移動は遅い。
現代の車と比較してはいけないけど、とっても遅い。
揺れも酷いから、本を読む事も出来ない。
もっと遅く進めば読めるが、到着が遅くなるし、最悪野宿になってしまう。
結果、出来る事と言えば会話くらいしかない。
相手はいつもと同じ、王太子と姫様だけ。
アイザックさんは御者してるし。
どこかの街でも村でも良い! 到着したら暇つぶし出来る物を買うぞ!!
それまでは諦めて、王族へ質問コーナーだ!!




