080 主人公の戦い方として合ってるのだろうか?
「ほれ、かかってこい」
兵隊長が上段に構えたまま挑発してくる。
良いのかなぁ。
「本当に良いですか?」
「ああ。やれるものならな」
了解は得た。
では、早速。
俺はカード束の一番上のカードを使う。
次の瞬間、兵隊長の姿が消えた。
「それまでっ!」
すぐさまアイザックさんから静止の声が。
やった事は単純。
『落とし穴』のカードを使い、兵隊長を落としたのだ。
多数戦で使おうと思ってたけど、『一番最初に攻撃をしてくる敵を穴に落とす』とあるので、多数には意味が無いと思ったんだ。
ロープが穴の中に垂らされ、兵隊長は上がってきた。
うん、すげー怒ってるのが判る。
多分武器を使っての戦闘を考えてただろうからねぇ。
「お見事でした。では次は多数戦でお願いします」
「はい」
領主さんがやってきて、すぐに次と言う。
休むヒマは与えてくれないんですね。
まぁ、動いてないので、全く疲れてないけど。
「あの……あの穴は埋めてもらえませんか?」
「あ~、ちょっと判りません。多分、時間が経てば元に戻ると思いますけど……」
「そ、そうですか……」
元に戻すなんてカードは無いんですよ。
待てよ、これも検証になるんじゃないか?
いつ元に戻るのか。それを知っていれば、落とした後の対応も出来る。
2分で戻るなら、逃げる時間も稼げない使えないカードって事になるし。
どれくらいで戻ったか、後で聞いてみよう。
「では志願者は居るか?」
「私は何も出来ずに終わりました。
なので、わたしの部隊で参戦してもよろしいでしょうか?」
「ふむ、構わないが……お前は動けるのか?」
「は、はい。……落ちただけですので」
「判った。ではお前の部隊を使おう」
さっきの兵隊長の部隊が相手に決まった。
人数は……兵隊長合わせて10人か。
穴の近くは危ないので、少しズレ場所でやる事になった。
俺を中心に半径10mの円になっている。
そして、兵隊長をバカしされたと思っているのか、全員が殺気立っている。怖い。
アイザックさん、本当にいざって時は止めてくださいよ?!
「では、はじめっ!」
スタートの合図と共に俺はカードを掲げる。
周囲にはそれだけで緊張が走った。
誰もがさっき落とし穴に落とされているのを見ているからね。
実際はもう使えないんだけど、牽制にはなった。
俺が使うのは『魅了』のカード。
これを兵隊長に向かって使う。
すると兵隊長がこちらに向かって走ってきて、俺の背後に回った。
背後から攻撃をするのではない。
俺の背後を守るように、背中合わせになっている。
『相手を5分だけ味方にする事が出来る』というカードだけど、便利だな。
これには兵達も動揺している。
「へ、兵隊長……?」
「ど、どうする?」
「何が起きている?!」
思った通りだ。
トップが寝返れば、統率が取れなくなるだろうという作戦。上手くいった。
背中は兵隊長に任せたまま、次のカードを使う。
それは『封印』のカード。
『5分間だけ周囲5m内の魔法を無効化する』というカードだけど、使ったのには理由がある。
もし兵が魔法を使い兵隊長を正気に戻すのを阻止する意味が。
そんな魔法があるのか、使えるのか。それは不明だけど、やっておくべきだろう。
魔法で攻撃されてもイヤだしね。
最後に使うのは『神の鏡』のカード。
『敵の攻撃を他者に移す事が出来る。敵味方は関係無いが動物限定』という能力。
人間も動物だから使えるかな~と。
後、1人とか限定されてないから、複数相手でも使えるんじゃないかな?という期待も込めて。
もし『神の鏡』が使えないなら、ギリギリで『停止』を使う予定だ。
停止時間は5秒だけど、それだけあれば中心からは逃げる事は出来る。
さて、結果だけど、兵が動いてくれないので判らないまま……。
兵隊長を寝返らせた効果はデカかったみたいだ。
動いてくれないと5分経過してしまうので、やりたくないけど挑発しよう。
「おいおい、ビビった? 来ないなら終わりにしてもらうけど?」
「く、くそ! おい、やるぞ!」
「ど、どうすんだよ!」
「全員でかかれば良いだろ!」
「そ、そうだな!」
一斉に襲いかかってきた。
それは勿論兵隊長にも。
だが、誰も攻撃も当たらなかった。
全員が弾けたように飛んだのだ。
見える範囲で判った事は、俺の正面に来た兵は肩を叩かれたように転がっていった。今も肩を押さえている。
多分だけど、他の誰かが俺の肩を狙ったんじゃないかな?
それが『神の鏡』の能力によって、正面に居た兵士に転嫁された。
振り返ると、兵隊長は普通に立っている。
どうやら、このカードは味方にも効果があるようだ。
うん、検証出来て良かった。