005 鉄鍋
「読んだカ?」
「読んだ。イラっとしたけど。えっと、イポスは確か大公だっけ?」
「そうダ。クラスは大公、序列は22位、星座は天蠍宮ダ」
って事は、召喚可能時間は3時間、次回召喚まで48時間って事か。
3時間?! モフりで時間をロスしてしまった! だが後悔はしてない!
う~ん、俺の今後を考えないとな。
最終目標は神の欲しい物を発見する事だ。
だが、俺の安全を考えれば、ソロモンカードを集める事も必要。
とりあえずこの2つが主軸。
直近の問題としては……金が無い事だ!!
「イポス、金が無いんだが、どうすれば良いと思う?
後、身分証の登録は有料なのか?」
「身分証は国が発行する物とギルドが発行する物の2種類があル。
国が発行する物は1000ゴールドだが、この国に所属する事になル。
ギルドが発行する物は50000ゴールドだが、通行税が掛からなイ」
「もうちょっと詳しく」
「国に所属するという事は、もし戦争になればこの国の兵士として戦地に行く事が義務付けられル。
だが、国が後ろ盾になるので、身分証としての価値は高いとも言えル。
ギルド発行の物は、各国を旅するには必要な物ダ。
免税だけでなく、訪れた国や街で何かをするのに有利になル」
「って事は?」
「両方取得するのが最適だろウ」
「じゃあ51000ゴールド必要じゃないか」
「そうなるナ」
「だから金が無いんだってば! どうすりゃ良いんだよ!」
お金を稼ぐには仕事をするのが簡単な方法。
ギルド、冒険者ギルドなのかは判らないが、仕事を受けるには当然登録が必要だろう。
でも登録するにはお金が必要。
卵が先か、鶏が先か……。
「お金が必要なのカ?」
「当たり前だろ。人間、生きるにはお金が必要なんだよ」
「なら、一階のキッチンに行けば良イ。そこにある」
「えっ? マジで?!」
ヘソクリ的な何かだろうか?
すみませんねぇ、ありがたく使わせてもらいやすぜ、へっへっへ。
キッチンに来たけど、あるのは鉄?で出来た鍋が2つと、木で出来た皿が数枚。
やっぱり隠してあるんだろうな。床下か? それとも天井?
「どこにあるんだ?」
「それダ」
「……鍋? 中には何も入ってないぞ?」
「その鍋は鉄製、つまり金属ダ」
「そうだよ? 鍋をクズ鉄として売れって事? 何円になるの?」
「この世界のお金の単位はゴールドだゾ?
鍋を売っても意味がなイ。ザガンとベリトを召喚するのダ」
「ザガン? ベリト? 召喚? 何で?」
「カードの説明を読めば理解出来ル」
俺、持ってたかな? あまり記憶に無い。
え~と、ザガンザガン……おっ、あったあった。
ザガンは双子座だった。基本双子座は二人書いてあるから、覚えてないんだよな~。
あっ、別々に星座がある……。ウィネは双子座だけど、ザガンは射手座なのかよ! ややこしいな!
ウィネ&ザガンって書いてあるけど、どうやらどちらか片方しか呼べないみたいだ。
え~と、ザガンの説明は……。
姿: ウィネ→馬に乗ったライオン ザガン→翼を持った牛(人間にもなれる)
能力:ウィネ→先読み、塔建設、城壁破壊 ザガン→金属をその地域の硬貨に変える
き、金属をその地域の硬貨に変える?!
じゃあ鉄の鍋が言葉通りお金になるってか!
「ザガンに鉄鍋を硬貨にしてもらうんだな?!」
「鉄鍋を硬貨にしても鉄貨にしかならなイ。その金属に対応した硬貨にする能力なのダ」
「鉄貨っていくら?」
「1枚で1ゴールドだゾ」
「鍋2つで何枚出来る?」
「せいぜい50枚が限度だろウ」
50ゴールド? ダメじゃん。全然足りない。
「だからベリトも召喚するのダ」
「あ、あぁ、そうだったな。ベリトね」
「ちなみにベリトは公爵、バティンと同表記、星座は磨羯宮だゾ」
つまりベリト&バティンを探せば良いのね。
あったあった。えっと、何々?
姿: 双方とも馬に乗っている。
バティン→青白い馬に乗るマッチョ(男) ベリト→赤い馬に乗る赤い鎧を着た兵士(男)
能力:バティン→短距離瞬間移動 ベリト→あらゆる金属を金にする事が出来る
え~と、マッチョ(男)って必要事項かな? すごく呼びたくない。
あっ、マッチョはバティンの方か。極力呼ばない事にしよう。
で、ベリトさん。その能力、チートですか? チートですね。わかります。
錬金術ってやつですね。等価交換ですか? 命や体の部位は渡しませんよ?
「金属を金にするって何だよ!」
「そういう能力でス」
「じゃあこの鉄鍋、金の鍋になるのか?!」
「そうでス。金の鍋にした後、ザガンの能力で金貨に変えるのでス」
「……金貨1枚の価値は?」
「金貨1枚で100000ゴールドでス」
「……何枚出来そう?」
「30~40枚辺りカ?」
…………どうやら働かなくても良いみたいです。
悪魔ってチートだな!