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036 3つの決まり

広い縦長の部屋、多分謁見の間ってヤツだろう。

ここの中央で、俺たち3人は膝をついて両手を握り床につけている。

クラウチングスタートみたいな格好だ。


顔は前を向かずに床の絨毯を見ている。

あっ、絨毯にシミ発見。


この格好、事前に教えられたんだ。

このポーズで王様を待つんだってさ。


他に教えられたのは3つ。

1.王様が許さない限り、前を向いちゃいけない。

2.王様が許さない限り、喋っちゃいけない。

3.王様が許さない限り、悪魔を召喚してはいけない。


3は当たり前だね。

例えるなら、偉い人の前で銃を抜くような行為だ。

殺されるわ。


1と2については意味が判らなかった。

なのでポーズと合わせて理由を聞いてみた。


「結局のところ、悪魔召喚と同じで暗殺対策だ。

 右足を立てているのは、すぐに立ち上がれないようにする為。

 前を見れないのは、王の位置を知られないようにする為。

 喋っちゃいけないのは、魔法の使用をさせない為。

 両手を床に付けているのは、暗器等を使用させない為。

 他にも意味はあるけど、暗殺対策ってのがデカい」


礼儀としてではなく、暗殺対策なのか。

それが固形化して礼儀にもなるんだろうな。


「説明等はグランがするから、リョーは許可が出るまでその格好のまま待ってれば良い」

「……了解したけど、自分の事をグランというのは止めた方が良いぞ。バカっぽい」

「そうか? じゃあどうしようか? ワシ? 己? 我?」

「何で突飛な方向に行くんだよ! 俺とか僕で良いじゃないか」

「え~、それだと個性が出なくないか?」

「王太子の時点で個性ありまくりだから、大丈夫だよ!」

「そうか~? じゃあ、“自分”にするかなぁ? でもイマイチじゃないか?」


……変な事まで思い出してしまった。

結局、王太子は“自分”ザックは“私”と、自分を呼ぶ一人称を決めたんだったな。


あ~、待つ時間が長いと変な事ばかり考えてしまうわ。

見える範囲の絨毯のシミの数は16か……。

あっちのシミは犬っぽく見えるなぁ。



時間を持て余していると、誰かが入ってくるような音が聞こえた。


「3人共、顔を上げるが良い」


誰が言ったのか判らないけど、許可が出た。

上げて良いのかな?

よく考えたら王様の声を知らないから、王様から許可が出たか判らないじゃないか!!


俺の左右に居る2人が動いたような気配がしたので、俺は恐る恐る顔を上げる。

部屋の一番奥にある一段高い所に置いてある椅子に、威厳のあるオッサンが座っていた。

オッサンって思ったら失礼だな。あれが多分王様なんだろう。

でもね、日本の政治家が目の前に居ても「偉そうなオッサンだな」くらいにしか思わないだろ?


「グランドア、手紙は読んだ。そこに居るのが“聖人様”か?」

「はい。その通りです」


グランドアって誰?って思ったけど、王太子の本名だったわ。

喋りながら立ち上がり、王様の方に進んでいく。

誰にも咎められないのは、やはり王太子だからなんだろう。


「なるほどな……。二人共立つ事を許可する」

「陛下!」

「問題無い」


王様の横に立っていたオッサンが、王様を止めるが流された。

どうやら宰相とか軍師とか言われるような立場の人っぽいな。


ちなみに周囲にはスーツっぽい服装の人が10人くらいと、武器持った兵士が20人くらい居る。

予想ではスーツが貴族じゃないかと。もしくは文官。


「リョウスケ殿、立ちましょう」


あっ、許可出たんだった。

アイザックさんに促され、俺も立ち上がる。


「“聖人様”は神のお力により、悪魔を使役出来ると聞いた。それは本当かね?」


王様が俺に問いかけてきた。

えっと……答えて良いのかな?

発言の許可は出てなかったと思うんだけど。

これで答えて「勝手に喋るな!」とか怒らないでくれよ?

もしそうなったら「詐欺だ!」って言っちゃうぞ。


「は、はい。神にそう言われました」


俺が答えると、周囲がざわざわし始めた。

聞こえてくる中には「そんな事があるのか?」「詐欺じゃないか?」って感じ。

否定的な意見が圧倒的に多い。


うん、俺でもそう思う。

こんなヤツが国会で答弁してたら、頭おかしいだろって思うのが当然だろ。


だが、王様と宰相(?)さんは違うようだ。

俺を凝視している。疑いの目ではなく、助かった的な目で。

王太子の手紙を読んだから信じてるのかな?

そして街を救った(?)俺を救世主と思ってる?


「静まれ」


王様の一言で、会場はあっという間に静かになる。

だが、この後の王様の言葉で、再びザワザワする事になった。


「では、この場で悪魔を召喚してみてくれ」

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