035 テッテレー
「これから一緒に旅をするのだ。呼び名を変えようではないか!」
「えっ? そんな事ですか?」
「大事だぞ? 後、敬語も無しだ。慣れてないのか所々変になってるしな」
あれっ? 敬語使えてなかった?
ツッコミとかの時はおかしくなってたかもしれないな。
「さ、リョウスケ殿。考えてくれたまえ」
「俺が?!
ん~、じゃ、じゃあ、王太子は……名前なんでしたっけ?」
「正式には名乗ってなかったかな?
私の名前はグランドア・ライツ・ストロングベリーだ」
「私はアイザック・ラベンダリーです」
なんかどっちも果物っぽい名字だな。
後、名字をリーって伸ばすのがこの国の特徴なのか?
「じゃあ王太子は『グラン』でどうです?
アイザックさんは『アイ』では女性みたいなので、『ザック』でどうでしょう?」
「安易だが、それで良いか。ではリョウスケ殿は何と呼べば?」
「自分のも自分で考えるんですか?!
じゃ、じゃあ、俺は『リョー』で良いです」
昔から友人にはリョーと呼ばれてたからね。
「では、これから敬語も無しで。
……大丈夫だよな? 悪魔に怒られたりしないよな?」
「多分大丈夫です。その時は注意しますんで」
「まだ敬語になってるぞ」
「あっと、そうか。じゃあ……大丈夫だと思うよ。その場合は俺が悪魔に注意するから」
「良し! いや~、楽になるわ~」
「グラン、砕けすぎです」
「ザック、お前も敬語になってるぞ~。やめやめ」
「敬語を止めるなら、二人共一人称を『私』って言うのも止めた方が良いと思うぞ?」
「そうか? じゃあ私は自分の事を『グランは~』って言うわ」
「……それはバカっぽいんでやめとけ」
王太子がバカっぽくなった。どこのギャルだよ。
今までが演技で、こっちが本性か?
「私は私と言うのがもう癖になってまして……」
「お前も『ザックは~』って言えよ」
「それだけは絶対にイヤです」
「ザックさん、敬語になってるぞ?」
「これももう癖になってまして……何とか直しますんでちょっと待ってください。
後、さん付けじゃなくても良いですよ。仲間なんですから」
「仲間?」
「グラン様、いえ、グランにイジられる仲間です」
その仲間は脱退させてください。
「よ~し。打ち解けあった所で、今後の方針決めだな!」
「王都に行くんだろ?」
「それは決定事項。その後だよ。どっちに向かう? 東? 西? 南? 北?」
「う~ん……それは誰か悪魔を呼んで聞いてみないと判らないなぁ」
「リョーには感知出来ないのか?」
「捜し物の方は判るらしいんだけどね。悪魔のカードについては判らないなぁ」
「ギルドに依頼として出してはいかがでしょう?」
「それな!」
「カード拾ったら連絡ください、みたいな?」
「それもあるが、異常があるか教えてもらうってのも、だ。
今回みたいにカードが原因で何かが起きてるかもしれないだろ?」
問題は何が起きるか、だよなぁ。
持ってないカードの能力は判らないんだから。
昔のカードゲームだから少ししか覚えてないし、能力も改変されてるし。
「じゃあ、決めるのはそんな所か。おっとそうそう、今回の馬車は多分使えないから、移動方法の入手も必要か」
「ん? 移動方法?」
「おう。国は広いからな。さすがに徒歩って訳にはいかないだろ?」
「えっ?! ずっと一緒に来る気なのか?!」
「当たり前だろ~? そう言ったじゃないか」
言ってたっけ? 覚えてない。
グランとザックが仲間になった! テッテレー
こんなイベント無かったと思うけど。
まぁ、いいか。
年も近いし、今の感じだと固苦しい事も無さそうだ。
なによりも、悪魔を出してなくても危険が少ないだろうし、色々と便宜図ってもらえそう。
仲を深めつつ、馬車での移動が続き、とうとう王都に到着した。
道中では襲撃も無く、カードや捜し物を発見する事も無かった。
謁見か……。無礼者!って牢屋に入れられないよな?
一応謁見の礼儀とかは習ったけど、不安しかない。
日本の総理大臣に会う方が全然気楽だと思う。だって無礼な事しても殺されないだろうしさ。
あ~、帰りたい。