032 終息宣言本番!
街の人を集めての終息宣言。
何故かその場に居る俺。
きっと今、俺の目は死んでいるだろう。
こんな大勢の前に出るの、俺?!
アモン、助けて!
「マスター、帰還の時刻が近いようです」
「アモン?! 延長でお願いします!」
「マスターの願いなので叶えたい所ですが……さすがにそれは無理でございます」
「そこをなんとか!」
「マスター……。しからば、何とか頑張っ」
アモンが消えてしまった。
正確にはカードに戻っただけなのだが、心の支えが無くなってしまった……。
あっ、そうか。
他の悪魔を召喚すれば良いのだ。
なんだ、簡単な事じゃないか。
「では、聖人様、こちらへどうぞ」
「へ?」
「皆様がお待ちでございます」
「ちょ、ちょっと待って! あ、後、5分! いや、3分でも良いから」
「無理です。ささ、どうぞ」
貧弱な俺がアイザックさんに抵抗出来るはずもなく、公衆の面前に出されてしまった。
「「「聖人様ー!!」」」
うわ~、凄い人の数だ~。
皆が尊敬の目でこっちを見てるよ。
こんな場面になった事が無いので、どうしたら良いか判らない。
「聖人様、何か一言仰ってくださいませんか?」
「ヘルプ!」
「…………何か一言“民衆に”仰ってくださいませんか?」
目で俺に圧をかけるのは止めてください。
言う、言いますから!
「え~と……治まって良かったですね」
「……つまり聖人様は、
『悪魔は既に封印し、完全に私に服従した。またこのような事態が起きればすぐに駆けつける。皆様の協力に感謝する』
、と仰っておられるのだ!」
「「「聖人様ー!!!」」」
尊敬の目が痛いです。
そんな事は思っていませんでした。
どっちかと言えば、迷惑かけてすみませんと思ってます。
あ~もう! こうなればヤケだ! 好きにしてください。
俺は“聖人様”ってキャラになってれば良いんでしょ?
ゆるキャラの着ぐるみを着ていると思い込もう。うん、それが良い。
観衆に向けて手をふる。
その度に起こる歓声。……ちょっと気持ち良い。
アイドルとかこんな気分なのかな~。
歌って踊れはしないけど。
30分ほどで終息宣言は終了した。
今はここの領主の家の一室に居る。
手を振るマシーンと化していた俺を、皆が運んでくれたのだ。
「リョウスケ殿よ、後半は良かったがもう少し何か言ってくれても良かったのだが」
「いや、王太子様、無理ですって。一般人にはああいった場所の耐性がありませんから」
「これからは機会も増える。頑張って習得してもらうぞ」
「え~……」
「後、後半での手を振る行為は良いのだが、固まった笑顔で黙々と手を振っていたのは怖かったぞ」
「あれが精一杯です!」
「……しょうがない。道中で勉強してもらうか」
道中?
もう次に向かう場所に目星がついてる?
「どこに行くんですか?」
「ん? それは勿論王都だぞ」
「王都ですか。そこにカードがあるんですか?」
「いや? あるのは城だな」
「? まぁ王都だから城があるでしょうね。で?」
「だから、謁見だよ」
「…………エッケンってカードがあるんですか? 知らないなぁ」
「謁見だ、謁見。王に会うんだよ」
何でだよ!!