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026 王太子

礼のとり方を知らないので、とりあえず片膝をついて頭を下げておく。

確かアニメでこんな格好をしてたと思う。


「立ってくれ、時間が惜しい」

「わ、判りました」

「それでギルドマスター。朗報だという事だが」

「はい。この者が今回の奇病の原因が判り、対処し鎮める事が出来ると言うのです」

「ほう?」


どうして良いか判らずにボ~っと立っている俺に視線が集まる。

この場は、ギルドマスターと王太子、それに王太子の連れてきた医師っぽい人と兵隊さん3人。

むちゃくちゃ居心地が悪いです。

襲いませんよアピールの為にアモンの前に立っているけど、本当はアモンの後ろに隠れたい。


「どういう事だ? 事情を話せ」

「は、はい」



ギルドマスターに話したような内容を王太子達にも話した。

全員が思案顔になっている。


「……リョウスケと言ったな」

「は、はい」

「正直に言わせてもらう。俺にはマッチポンプにしか思えない」

「えっ? どういう事ですか?」

「お前がこっそりとそのカードをこの街に置き、騒ぎになってから『解決しますよ』と言って現れる。

 見事解決すれば、英雄扱いだ。名誉も金も手に入るだろう。狙った所に就職も出来るかもな」

「そそそ、そんな事は考えていません!」

「それはお前にしか判らない事だ。だが状況はその通りだろ?」


確かに言われてみればそんな感じがする。

悔しいけど、俺もそっちの立場ならそう考えるかもしれない。

だが、ここで疑念を晴らしておかないと、俺は犯罪者扱いにされても不思議じゃない。


「この街、いえ、この世界には始めて来たんですよ?!」

「そもそも、そこも信じてないぞ。

 違う世界から来て、会話が出来る。国が違うだけでも言語が少しづつでも変化するのに? そんな事があり得るのか?」

「それも神様の力なんですよ!」

「怪しい宗教家と同じレベルの会話になってるぞ」


だってしょうがないじゃないか。事実なんだから。

確かに言ってる事は宗教の勧誘みたいだけど。


「じゃ、じゃあ、悪魔を召喚出来るっていうこの能力はどうです?!」

「召喚は確かに珍しい。だが、召喚士という者がいない訳じゃない。

 そこに居る尾が蛇な大きな狼も悪魔とは断定出来ん。俺達の知らない生物の可能性もある。

 それを捕まえてきて悪魔だと言えば、知らない者なら納得するかもしれんがな」

「で、では、悪魔の定義って何ですか?」

「そこだよ。宗教の教えで、悪魔は登場する。物語の中にも出てくる。

 だが、はっきり言ってしまえば、創作の中の話だ。神の存在を証明出来なければ、悪魔も証明出来ないだろうな」


この世界には神様は降臨していないのか。

地球と同じじゃないか。もしそうなら、神を証明するなんて無理!


あれっ? 貰った知識で『神が降臨して生物を助けた』ってのがあるんだけど。

貰った知識だから間違いは無いと思うんだが。


「神が降臨した事実は無いんですか?」

「あ~、あるぞ。ただし何百年も昔の話だ。知っている者は既に居ないし、証明のしようがないけどな。

 確か『大災害の時に神が降臨し、新しい大地を作り出し、そこに木々や生物を移住させた』という話だったな。

 で『生物には生き抜く術として魔法を授けた。植物には魔力を授けた』だったか?」


へ~。そんな話があるんだね。

……って、そっちの方がマッチポンプっぽくないか?

大災害も神様なら起こせるだろ。それから助けるなんて変だ。

もっと言えば、大災害を鎮める事だって出来ると思うんだが。


「さて、ここまで話してきたが。どうするよ、リョウスケとやら」

「……じゃあこうしましょう。

 俺はとにかくカードを探します。冒険者や王太子様の力は借りません。自力でこっそりと探します。

 勿論、監視として誰かを付けていただいても構いません。

 そして発見したら回収します。その後、奇病が収まれば、すぐにこの街を離れます。

 どこにも士官を求めませんし、報酬も必要ありません。

 それでも疑わしいと言われるのであれば、そちらの決めた方角からこの国を退去します。

 退去までの間、ずっと監視をして貰っても構いません。

 どうでしょうか?」


これが俺が思いつく精一杯。

これで信用されないなら、もう説得する方法が無い。


「それじゃあ話にならないな…………って言うと思ったろ?

 逆だ。合格。信用しよう」

「ふぇ?!」

「お前の言う事を信じると言ったんだ」

「え? え?? えええーっ?! 何で?! 何で急に?!」


話が180度転換したんだけど?!


「今までの会話で、常にお前を監視していた。

 ウソをついているのか。ゲスな考えをしているのか。得をしようと企んでいるのか。

 どこかの国のスパイではないのか。それとも工作員ではないのか。

 どれにも該当しなかったって事だ」

「どうして判るんですか?」

「お前、考えている事が顔に出過ぎだ。これでスパイや工作員では無いというのが判る。

 英雄目的や金儲け目的ではないのは、最後の言葉で判る。

 もしそういうのを考えてるようなヤツの行動とは違う」

「そういうのはどんな行動を?」

「色々あるが、一番多いのは怒ったフリをしながら、

 『じゃあもういいですよ! カード回収はしませんよ! このまま出ていきますよ!』と言う。

 つまりは『俺が出てけば奇病は収まりませんよ? 良いんですか?』っていう脅しだな。

 後は、そこに居る悪魔?を使って脅してきたりするだろうな」

「アモンで脅す?」

「人語を理解してしかも喋れるんだろ? ならそのアモン?が怒るフリをするんだ。

 そうだな、『主がウソを言っているというのか! 侮辱するとは許せん!』って感じか?

 それをお前が鎮める。これで無理矢理信じさせるって作戦の出来上がりだ。

 要は『疑えば悪魔を使って攻撃しますよ。怪我しても俺は悪くないですからね?』という脅しだ」


は~、なるほど。

王太子にもなると賢いんだなぁ。


しかし、アモンもグラシアも大人しくしてくれてて助かった~。

そういう感じで言い出しそうだもん。

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