023 ギルドマスターとの会話
「この現象ねー、悪魔のせいだと思うのー」
「そうなのか?」
「うんー!」
「ちょっと待て! 悪魔の仕業って何で判るんだ?! っていうか悪魔?!
何でお前は冷静なんだよ?!」
ギルドマスターは混乱している!
そりゃそうだ。誰だって混乱するよな。
「俺が冷静なのは、悪魔について知ってるからですよ」
「知ってる?! 何を?! もしかしてお前が元凶なのか?!」
「いやいや、俺は元凶じゃないですよ?!
俺も巻き込まれてる方ですからね?」
「巻き込まれてる?!
……ちょっとここではマズいな。上に行って話そう」
そのままギルドマスターにドナドナされた。
場所は2階の一室。多分ギルドマスターの政務室かな?
「ここなら漏れないだろう。さあ、全部話せ」
「え~、話しても良いですけど、混乱しますよ?」
「大丈夫だ。伊達にギルドマスターをしていない」
「後、秘密の供有者になりますよ? というか、供有者にされます」
「おい、どういう意味だ?」
「簡単に言うと『誰にも話せない秘密を知ってしまい、悩むけども協力せずにいられない』状態になるって事です」
「はぁ?」
確かそれで合ってるはず。
アンドロマリウスが召喚出来ないのが痛いなぁ。
居れば話が早いのに。
「じゃあまずは簡単な秘密から。
実は俺、神様に頼まれて捜し物をしに来たんですよ」
「はぁ? じゃあお前は使徒とでも言うのか?」
「え~と、そう……なります……かね?」
「お前ディエナ教か?! ところで、何で疑問形なんだよ?」
「あの神様ってディエナって名前なのかなぁ? 疑問形なのは、無理矢理だったからですね」
「無理矢理……」
「ええ。異世界人なんですけどね? 神様に出会って、無理矢理探し物をする事に」
「…………」
反論が無い。
と言うか、ウソくさいって目で見られてる。
まぁ、俺も日本でそんな事言ってる外国人が居たら、そんな目で見るだろうけど。
「で、捜し物をするのに危険があるだろうって事で、悪魔を召喚出来るカードを渡されました」
「おいおい、神が悪魔を召喚するカードって……。もうちょっとマシなウソを言えよ」
「だって本当ですもん。それに今、目の前に悪魔が居ますよ?」
「どこにだよ」
「ここに」
そう言って俺はグラシアを指差す。
ギルドマスターは呆れた顔になった。
「おいおい、その犬が悪魔ってか? だったら俺は大悪魔になるのか?」
「まぁ信じないですよね? なので現実を見せますよ」
「ほ~、何をするんだ?」
「本当の姿になってもらいます。グラシア、本当の姿になって」
「はーい」
グラシアは羽の生えた姿に戻った。
ギルドマスターは驚愕している!
「こ、これが本性だってのか?! 本当に悪魔なのか?!」
「確かに見た目が可愛いので、悪魔っぽくないですけどね?」
「褒められたー!」
羽さえ無ければ、どこから見てもマルチーズ。
「それにずっと喋ってるでしょ? 喋る犬なんか居ます?」
「人語を理解する動物は居る。あぁ、異世界人だからそれも知らないって事か」
いや、もらった知識で知ってましたけどね。
ちょっとだけ、とぼけてみました。
それに、知識としては知ってても、実際に見た事無いし。
「……それが悪魔かどうかの判別は俺には出来ん。
召喚出来ると言うならば、もっと悪魔っぽいのをこの場に出してみろ。
当然だが、暴れさせるなよ?」
「了解です」
そろそろグラシアの召喚時間の限界が来るはずだ。
代わりの者を呼ぶつもりだったし、丁度良い。
でも悪魔悪魔してるの呼ぶと、連れて歩けないんだよなぁ。
どうしようか。
「アモンー」
「ん? アモンを呼べって事?」
「そうー」
アモン。確か侯爵だったっけ。
グラシアがそう言うならアモンにしようか。
侯爵なら12時間は持つしな。
アモンを召喚する。
現れたのは、蛇のしっぽを持つ狼。
しかもデカい。狼の詳しいサイズを知らないけど、こいつはポニーくらいのサイズ。
しっぽの蛇もデカいし。
ただ蛇はよく判らない。
何故かって言うと、アモンがブンブンとしっぽを振っていて、よく見えないんだ。
懐いてる犬みたいだ。呼ばれて嬉しいんだろうな。
でも、少し落ち着け。しっぽの蛇が振り回されてるぞ?
落ち着かせようとアモンをワシャワシャとしてやったら、もっとブンブン振り始めた。失敗だ。